10ページめ
『ノーゲームノーライフ』のタイトルを使わせていただきました。
『―――――――。―――――――』
何かが聞こえる。
『―――――。―――、――――――――――――』
アークと、知らない人の声だ。
『―――は、―――――――った』
僕は、死ななかったのか?
『――。カイト―めを―――――タ』
フシバさんの声も聞こえる。
「み、な…………い…………てる?」
ゆっくりと目を開く。喉がカラカラで、声が出なかった。始めに目に入ったのは、僕の顔を覗きこむフシバさんだった。
『良かった。…………本当に、良かった。お前は、何も………心配するな』
そして、今にも泣き出しそうなアーク、
『感謝してください。私の結界が無かったら、死んでましたよ』
そう言ってアークを叩く、怖い魔力を感じる美少年。叩かれたアークは、苦虫を噛み潰したような顔にる。怖い。
美少年が、僕に向き直って、挨拶をしてきた。
『はじめまして。私はマジックデーモン、カイト様に師事したく、魔王軍幹部を抜けさせて頂いた者です』
……………え?
魔王軍。
幹部。
マジックデーモン。
師事。
単語と単語の意味が繋がらない。脳が、理解することを拒絶している。
『ほらな。無理だったろ。理解、される訳がない』
アークがなにやら敵意全開でそんな事を言う。
『いいえ。まだ、こちらの事情を話していません。追い出すのは、話してからでも遅くないです』
しかし、少年はそう言って、僕に話しかけてきた。
彼の話は、何故魔王軍を抜けたのかが解り、何故僕なんかに師事したいのかも解る内容だった。そう簡単には思い付かないような内容だ。きっと、本当の事なのだろう。彼の目も、嘘を吐いているようには見えない。
でも。
しかし。
「みんなを傷付けた。百回死んでも、許したくない」
少し間違えば、みんなが死んでいた。それが、何よりも、許せない。
『解りました。では、百一回死にます』
え、と言うまも無く、彼は首を切った。HPがなくなるのが、ステータスを見ないでも解る。みんなが、青ざめたのが、解る。
突然、床に魔法陣が現れた。
「え?」
今度こそ本当に、え、だ。死んだはずの人が蘇ったのだから。
『ふむ。成功しましたか。これで、一回ですね』
もしかして、死霊魔法で遅延魔法をしたって言うのか。そんな、高度な魔法を、高度な技術で。それを、百一回死ぬためだけに。
また、紅い華が咲いた。びちゃりと頬に血がかかる。
「…………れ」
魔法陣と共に、マジックデーモンさんが復活する。それと同時に辺りの血も消えた。
「もうやめてくれ」
僕の目の前で誰も死んでほしくない。嫌だ見たくない嫌だ死なないで嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。
「許すから!もう誰も死なないで!!なんでもするから!!なんでも受け入れるから!!」
気づけば、そう叫んでいた。きつくめを閉じて、耳を塞ぎ、しゃがみ込んだ。もう、何も見たくない。聞きたくない。人が死ぬのは、嫌だよ…………。
ポンと、優しく僕の肩に手が置かれた。恐る恐る顔を上げると、アークが僕の目の前を指差していた。その方向を見ると、マジックデーモンさんが僕にひざまずいている。何故、ひざまずかれているのかが解らない。僕は、ひざまずかられるような事をしていない。なのに、何故。
僕の疑問を察したのか、マジックデーモンさんが答える。
『私は、御主人の事を考えませんでした。ただ、自分のためだけに御主人に負担をかかけてしまいました。誠に、申し訳ありませんでした。なんなりと罰をお申し付け下さい。信用できないのなら、契約をして下さい』
ふっ、と、目の前に羊皮紙が現れる。契約書だ。それには、悪魔の文字で隷属契約の内容が書かれていた。なんで。その気持ちのせいか、少し残っている冷静な部分で無意識に偽装されていないか確認していた。本物だ。
彼と、契約すれば、すべて、丸く、収まる。
気がつけば、契約書にサインしていた。契約書の内容に従い、解約できない主従契約が結ばれる。
「は。はは。ははは」
思わず、口から乾いた笑いが漏れた。心が、壊れそうだ。なんで、こんなことに………。
ピコン。
情報輸入に設定していた通知が鳴る。条件反射で通知を開くと、『ノーゲームノーライフ』の11巻が出たらしい。出版日は………。
「通知遅れてんじゃねえか!!しっかりしてくれよ情報輸入せんせー!!」
一瞬でいつも以上に高いテンションになる。アーク達が白けた目で見てくるが、そんなものは一切気にならない。ひゃっほう読書だ新刊だーーーっ。取り寄せて、全力で読み始める。
あとから、こんなイカれた立ち直り方をした事を思い返して身悶えするのだが、それはべつの話。




