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本好き勇者のお店屋さん〜クソ雑魚勇者の辺境店舗  作者: 夏飼 今日輸
序章 本選び 本好き勇者と魔物達
10/39

9,5ページめ

 人が立ち入るのは、ほぼ不可能な程にダンジョンの奥深くにある魔王城。そこで、固有種族【マジックデーモン】の彼は、憂いていた。


「もう、魔法の深淵を覗く事は、かなわない。魔王なら、覗かせてくれるかもしれない。そう思ったのに。期待外れだ。ああ、期待外れだ」


 周囲にいる者たちは、いつもの発作だと通り過ぎる。しかし、そんな彼に近づく者がいた。


「魔王様がお呼びだぜ?」


 固有種族【ブラックオーガ】だ。気分が悪いマジックデーモンは、それに腹立たしげに答える。


「あなたがいれば大体の問題は片付きます。何故私が行かなければいけないのですか?」


「しょうがないだろう、名指しの指名だ」


 チッと舌打ちをして、マジックデーモンは魔王の元ヘ向かった。





 魔王城、玉座の間。

マジックデーモンはため息をついて、その扉を開く。目に飛び込んで来るのは、圧倒的な魔力の塊。魔王だ。普通なら恐怖を覚える魔力量だが、彼は頭を抱えたくなるだけだ。


(これで、魔法の深淵を覗かせてくれる方だったら良かった)


 はっきり言うと、魔王は弱い。そう言うと誤解が生じるかもしれないが、事実だ。ステータス的には最強なのだが、スキルが弱い。マジックデーモンや、ブラックオーガ、その他の幹部は、魔王に比べてステータスが低いが、(人間からすれば圧倒的に高い)スキルのレベルが高く、時に魔王以上の力を発揮する。

 魔力量に釣られて幹部になることを了承してしまった自分を、マジックデーモンは悔やんでいた。


「マジックデーモンか」


 魔王がマジックデーモンに声をかける。


「そうです。わざわざきくとは、呆けましたか。良かったです」


 心底、魔王を嫌っているマジックデーモンは、そんな言葉を返す。しかし、魔王はそんな嫌味を無視して命令を下した。この程度でいちいち反応していたら胃に穴が開く。


「私に従わぬ者達を見つけた。殺しに行け」


 そう言うと同時に、マジックデーモンに座標が示される。この場からとてつもなく遠い。


「解りました。この座標に軍を送り込みます。」


 そう言うやいなや、マジックデーモンは空間に穴を開けて玉座の間から退出した。



 マジックデーモンが向かったのは、あるダンジョンだった。おまけにブラックオーガがついて来ている。


「なんで、【獣道】なんだ?」


「ああ、居たんですか、ブラックオーガ」


「ああ。さっきからいた」


「質問の答えですが、相手が最大でランク3までしかいないからですよ」


「でもよ。勇者がいるらしいぞ?」


「失敗したら、私が幹部をクビになるだけですよ。そうしたら、嬉しいですね。人化して………王国にでも行きましょうかね」


「……………そうか」


 そんな事を話している間と、マジックデーモン達の周りにウルフが集まり始めた。普通なら、自分より格上の相手からは逃げるウルフが、だ。


「相変わらず、すげぇな」


 これは、マジックデーモンのスキル【思念伝達】の効果だ。理性が消えている魔物にこれを使うと、魔物達はそれを本能の命令として、送った思念の通り動く。それを利用して、マジックデーモンは空間に開けた穴にウルフを送っていく。そうして、アーク達を悲劇が襲った。




 マジックデーモン達は魔王にウルフを送った事を報告した。そして、アーク達がウルフを退けた後。マジックデーモン達は、結果を確認するためにアーク達の元ヘ向かった。


「あれ?ウルフしか死んで無くね?」


 それを聞いたマジックデーモンは嬉しそうな声を出す。 


「これで、クビになれますね」


 空間に穴を開けて、マジックデーモンは魔王に結果を報告するために帰ろうとする。


「ちょっと待て、マジックデーモン。俺がクビになる」


「いいと思います」


 マジックデーモンは、空間の穴に足を踏み込む。


「殴り合うか?」


 その言葉を聞いたマジックデーモンは、チッと舌打ちして足を魔王城から地面に戻す。そして、ファイアボールとフレイムランスを展開した。それを洞窟に向かって乱射する。しばらくすると、少年が出てきた。


(あれが、勇者か?しかし、見るからにレベルが低い。これならば、戦闘狂のブラックオーガを送り込んだ方が楽だったな)


 ブラックオーガがそう後悔していると、少年が何かを叫んだ。そして、こちらに向かって走って来る。マジックデーモンは、少年を狙って魔法を放つが一つも当たらない。まるで、どこに来るのかが解っているかのように。

 少年は、10メートル程の距離に来ると、ファイアボールを多数展開した。そして、それらを一つの巨大なファイアボールにまとめる。


(なんだ。あんな、魔法の使い方、見た事が無い。もしや、彼は、私の探していた……………)


 巨大なファイアボールが圧縮され、青白く変色する。そして、周りに水が生成された。


(青白い、エクスプロージョン?)


 隣で、ブラックオーガが嬉々として少年を殴ろうとしている。一方、マジックデーモンは、自分の勘に従って、エクスプロージョンと少年を結界で包み込んだ。


 ボッ。


 そんな音と共に、結界内を高温の水蒸気が吹き荒れた。抑えきれない。そう判断したマジックデーモンは、ブラックオーガの方に向かって結界に穴を開けた。開いた穴からより強力になった爆風が吹き出す。その爆風でブラックオーガが吹き飛ぶ。


(やっと、見つけた)


 その光景を見て、マジックデーモンはそんな事を思った。

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