まさかこんなことになるなんて誰が想像できますか?(考えよう、探してみよう、作ってみよう⑥)
シロップの核が一度硬化してしまえば、何日水に漬けようが火に焼べようがそれこそ重たい物で衝撃を与えようがこの核は壊れないのだとムペは話す。
「シロップの木が枯れなくなり一定数の共有が出来るようになった反面、ロスを作らなければいいんですけど恥ずかしい話し手作業な上ここの村も昔に比べると村の人口、特に良く働く若い男、若い女も極端に少ない。年々このように硬化した核を増やしてしまっているのが現状です。廃棄には魔人の領域にある火山が有効で十数年に一度ハディアに依頼して廃棄を依頼しています。ですが、如何せん一度の依頼料が正直高いので何とか対策を考えて研究しているんですが・・・。」
何?!お金とな!
ここでティリエスはぴくりと耳が動く。
今の家は金銭面で余裕はないという事もあるが、前世の幼少期節約やらもったいない精神の施設で育っているためどうしてもお金のことに関してはついつい強く反応してしまう。
特に利益もならないことに使うお金のことを聞くと尚更だ。
うん?ゲームで課金していた?・・・やだな、それはほら仕事で疲れた時の癒し?あとは稼ぐぞと言う謂わば精神安定剤や活力源といったものだから。これは私の中では利益につながるのでいいのだ!うん!
兎に角話しを戻すか。
「では壊れないのであれは例えばですが何か橋や建物を作るのはダメなのですか?どれも一定な大きさで組み立てるような物に適しているような形ですが。」
ティリエスの質問にムペはゆっくりと首を横に振った。
「それこそ親父がそういうのにもう試みていたんですが、残念ながら建築用のレンガや石に比べ軽いので個々の核は壊れませんが橋といったものでは重さに不安が残ります。後、これは昔父が言っていたんですが、製作途中で実は核が破裂したことがあるんです。」
「破裂?」
「その時の核全てではないんですが、組み立ての際核を合わせ水泥で一つにしていた時に中にあった核の何個かが粉々に破裂したんだそうです。泥の中に破壊できる何かか含まれていたのかと思ったんですが、同じ物使ってもどうも破裂したりしなかったりと結果は不規則だったので結局破裂の原因は核の方に何かがあるという結論になったようなんですがね。でもそれで資材としても不向きとなってしまったのでこうして保管するしかないんですけど。」
そうなのか、いい案だと思ったんだけどなぁ。
ティリエスは心の中でがっかりしつつ、けれどそう事が上手く運ばないとも思っていたのでそんなに落ち込むことはなくじっと山になっているシロップの核を見つめる。
けど過去にそんな出来事があったというなら、もしかしたら何かすればこれは粉砕出来て依頼しなくてもここで破棄処理できるという可能性もあるって事だよね?・・・調べてみるか。
「ムペさん、もしよければこのシロップの核を少し譲ってもらえませんか?」
「それは構いませんが、でも何に使われるんですか?」
今までの流れからしたらそう思うよね。そうだなー・・・あ。
「えっと音が綺麗だったので気に入った音のする核を持って帰りたくて・・・いいでしょうか?」
「ああ、そういう事ですね!いいですよ!何個でも・・・そうだ、まだ公爵夫人が戻るまで時間がありますから気に入った音を見つけましょうか!」
私のとってつけた理由を疑うことなくムペは明るくそう言って新しいトンカチを持ち直したのだった。
それから時間の許す限り気に入った音と称してシロップの核を選別した結果、白い核26個黒い核20個と結構思った以上の数を譲ってもらう事となった。
正直にいうと10個前後で良いと持っていたのだが、思いのほかムペさんが叩いて綺麗な音や変わった音などを探してはあれもこれもと袋に詰めたが原因だ。
彼曰く
「公爵様のお屋敷からここまで中々の距離ですから、少ないより多く持っていた方が音も沢山楽しめますから。」
確かにこの村に今度いつ行けるか分からないし材料は多くあっても困る事はない。彼の言い通りだとも思ったのでそのままありがたく頂戴したのだった。
ムペさんは小屋に残した父を迎えに行くと言って先に私達は自分達の馬車のある村長宅へ足を進めた。
馬車へ向かえば御者が馬の世話をしながら休んでいるのが見える。
と、私達に気が付いた御者の1人が慌てて姿勢を正し私達を迎えてくれた。
「お帰りなさいませお嬢様。」
「只今戻りました。お母様はまだなようですね。」
「へぇ、けれどもうそろそろ時間ですから戻って来るとは思いますが・・・。」
「お嬢様、如何なさいますか?」
「そうですね・・・とりあえず先ほど頂いた荷を・・・っ?!」
ふとここから見える森の生い茂っている方を見やる。
うっそうと生い茂る先を目を凝らして見えるがそこは只々草や木々が生い茂っているだけであり急に動きを止めた私を見て不思議そうにシェリーやバンら大人達もそこをみる。
「何かありましたか?ティリエス様。」
「・・・いいえシェリー、私の気のせいでした。」
本当気のせいでよかったー!
私はふいっと視線を外して彼女に答えながら平静を装いつつ内心動揺していた。
いや、なーんか人が立っていたように思えたんだよなー。なんていうかこっちをじっと見ているような感じがして思わずそっち見ちゃったんだよねー・・・。ゆ、幽霊じゃなくて良かった。
でも夜でもないのにね?なぁんでさっき悪寒が走ったんだろう・・・?もしかして風邪か?ん?
「あ、お嬢様。リリス様が戻られましたよ!」
「本当ですね!シェリー!お母様の元へ行きましょう!」
シェリーの声に森の入り口を見れば母達の姿が見えたので、先ほどまでの違和感を忘れ怪我無く戻ってきた母の姿にほっとしてティリエスは満開の笑顔で母の元へ駆け寄ったのだった。
その光景を村人達、彼女らの仕える者らが微笑ましく見つめる中―――――。
「・・・・・・・・・・。」
彼女が見た森の奥、遠くの場所から何の感情も浮かべない瞳で誰かが彼女を見つめていたのだった。
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