まさかこんなことになるなんて誰が想像できますか?(考えよう、探してみよう、作ってみよう③)
すみません、今日は短めです。
今回初めて向かう東の森は屋敷から大人の足で4時間ほど歩いた場所にあり、その森の近くには我が領地最果ての村ルル村という村があり我が領土では少し珍しい村になる。
何が珍しいのかというと、自分の領土の大きな特徴は村の至る所で温泉が湧いていることなのだが、今から向かうルル村だけ温泉源はない。ルル村を境に至る所で温泉の蒸気が噴出していた景色はぱったりと見られなくなり、代わりに温泉ではなく湧水が至る所に湧いているのだとか。それはルル村から向こうにある東の森も同様で、森の奥にある湧水の泉はルル村以上に澄んだ美味しい湧水があったりあとは少し変わった湧水もあるのだとか。
それで母が赴きたい東の森を数日前湧水を汲みに行った村の1人が足を滑らせいつもの道から外れ転げ落ちてしまった先にその今回発見されたという解毒剤になる薬草が生えていたのだそう。
怪我で運ばれたその村人から薬草の特徴を聞いた村医者の先生がそのまま母に教えて今に至る、というわけだ。
「ティリー。お母様は今から森へ行きますが警護の皆さんの言いつけをよく聞いて、この村で待っててくださいね。危険はないと思いますがくれぐれも遠くへ行ってはダメですよ?」
整備が悪い道を馬車に揺られて約1時間、ルル村について早々、一息つく間もなく母たちは森へ向かう為準備を始め、ぽやっと突っ立っていた私にそう声をかける。
いつもならほんわかと基本ゆっくりな動作の母とは違う、初めて好きなものの為に機敏な動きを見せる母に内心驚きつつ私はこっくりと頷いた。
勿論、私は何も言わずただただ微笑むだけである。
今回も護衛3人と母の助手としてよく屋敷に顔を出し母から医術を教わっている村のメルナさんが同行し、母たちは私達に手を振りながら森の中へ入っていった。
「行ってしまいましたね・・・。」
誰に言うわけでもなく1人呟く。
さってどうしよっかな~?
直ぐに気持ちを切り替えた私はふむ・・・と限られた時間をどう活用するか考える。
滅多に行けない場所だから出来れば可能な限り行けるとこまで行って自分の満足のいく時間にしたい。
出来れば、今回でお目当ての物が見つかればいいんだけどなぁ・・・。
「お嬢様、移動したばかりですし先ほど挨拶した村長の家で休憩されませんか?それに散策するなら時間も限られますし村長からおすすめの場所を聞くのが良いでしょう。」
いつも散策の際ついて来てくれる護衛女性騎士のシェリーと無口でコクコクといつも頷く護衛男性騎士のバンが私に提案する。
お外のお供であるこの2人は年齢で言えば2人とも結構な年でとうに現役を退いた身ではあるが時折現役騎士達と混じって訓練しにくるのだが未だに模擬戦で若い騎士に負けたことはないという。
因みにバンさんが無口なのは寡黙なのではなく、昔喉に大きな傷を受けそれ以降声が出なくなってしまったせいであり、よく身ぶり手ぶりで話してくれるおちゃめな人である。
うーん、確かに2人の言う事も一理ある。地理に疎い人間が闇雲に行けば、ただウロウロしただけで終わってしまう。
「そうですね、一度村長さんのお家にお邪魔させていただきましょうか。」
「それで、お嬢さんまは何処に行こうと思ったんだんねぇ?」
「・・・えっと、私ではわかりませんので何処かおすすめな場所はありませんか、出来ればこの村の近くがいいのですが。」
「そうんだんねぇ・・・東の森にある泉は良い場所でんし、あぁでも村から出んれないんだったねぇ・・・村なら小川も綺麗で野原なら西の丘がいいんだぁ・・・ああでも、今なら麦畑も黄金色で綺麗でんねぇ・・・はて?それで、お嬢さんまは何処に行こうと思ったんだんねぇ?」
繰り返すこと早7度目の会話に私はループ地獄に陥っていた。
思わず体裁を崩して頭を抱えたくなるがなんとか平静を装っているが後ろに控えている2人の方がげんなりしているようだ。私の前にいるお爺さん・・・もとい村長さんは朗らかで仕草が可愛い人柄なのだが、如何せんこちらから話しを聞くとどうやら忘れてしまうようで先ほどから同じ質問と答えを繰り返している。
どうしようかな・・・このままだとお母様が帰って来てしまうし・・・でも、こんな危なげ・・・ごほん、ニコニコして楽し気に話しているお爺ちゃんほっとけないし。
実際初めにお茶を勧められた際、普段から見慣れたお茶ではなくカップ一杯に茶葉を盛って出された時はどうしようかと思わず困ってしまった。見かねたシェリーがお茶を入れようとしたが人様の台所を勝手に使うのも忍びないので「お茶も嬉しいですが、お水を一杯貰えますか?」とお願いしたところ茶碗でお水が出てきたが、何も言わず礼を述べありがたくそれを頂いた。
取り敢えず気持ちを落ち着かせようとお水を一口、口に含み喉を潤した後初めて飲んだ水に私は驚いた。
「・・・とても美味しい水ですね。これは湧水ですか?」
「そうですんだぁ。この近くに湧水が湧いとりまして倅に毎朝水をくんできてもらうんでんす。」
「倅さんは何をされているんですか?」
「今は倅は・・・村の・・・ほれ、あそこ・・・あぁあそこにおるんでん。えぇっと・・・。」
うんうん唸りだした村長に私は思わず口を開いた。
「村長さん、よければその倅さんの所に連れてってもらえませんか?」
「っお嬢様、よろしいのですか?」
私の提案にシェリーが思わず小声で声を掛けてきたので私はこくりと頷く。
「でもこのままというのも・・・シェリーはこのままここに居たい?」
「・・・いえ、行きましょう。村長殿、私達が一緒に行きますから息子さんの所に行きましょうか。」
表情には出さなくともこの状態に辟易していたシェリーの様子にバンは声なくくつくつ笑ったのだった。
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