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題名はまだない。何せこの物語はまだ途中なんで!  作者: ちゃらまる
第2章~誕生編~
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まさかこんなことになるなんて誰が想像できますか?(大好きな皆に恩返ししよう、そうしよう。㉗)



「姉様?」

こてんっと首を傾げてこちらを親し気にその青年は柔和な声で私にもう一度言うとじっと見つめてきた。


青年なのに可愛えぇ・・・じゃない!


思わず青年の可愛い顔に絆されそうになるのを私は首をぷるぷると横に振る。

勿論私はこの青年に心当たりがない。っというか、私をお姉さまと言うのは間違っていないだろうか。

寧ろ私がお兄様と言う側ではないだろうか。


「・・・もしかして、ぼっ僕を忘れてしまったんですか?」

「?」


私の戸惑っているのを理解したのか、それとも何も言わない私に不安になったのか、嬉しい表情から一転して今度はひどく悲しそうな顔をした。


最早泣きそうなその顔をみて、私は別に悪い事をしてないのに居たたまれなくなる。

ふわりとベッドへと下され、そのまま青年は私の前でしゃがむと私の手をそっと両手で握られた。


「僕達、やっと・・・やっと姉様に会える、触れられるこの日を待ちわびていたのに、記憶がないなんて皆にどう説明すればっ・・・うっ。」


とうとうぽろぽろと泣かれ俯いてしまった青年に、いつの間にか恐怖心はなくなり青年のそんな姿を見せられ私はおろおろとその青年を見つめるしかなかった。


可愛い顔のお兄ちゃん泣かせちゃった、どーしよー・・・私が悪いのか?・・・ん?


と、ふと彼の左手に火傷のような痣が見えた。

気を紛らわせたかったのでそのイルカの形にも見えるそれをただ何気なしに見ていた・・・その時だった。



・・・・・・?今、何か。


頭の中で何かが掠める。この手の痕を私は何処かで見たことがある、しかも1度だけじゃないそれこそ何度も見たことがある。


些細で当たり前のようにそれを見ていた感覚、どこで?

私は思わず彼の手を取りその手を取ると彼は涙を流しながら私が手に取ったことが不思議だったのか私と私を両手を交互に見る。


「・・・・・・・。」




イルカ・・・イルカ・・・。




『――――どうか、―――――名を・・・。』



・・・・・・まさか。


『では・・・――――様、でよろしい―――か?』


・・・・・・・・・そんな、まさか。




「・・・シナウス?」


ぽつりとその名を零した。

前世でよく一緒に色々した、私より年下の男の子。

けれど、私よりもなんでもよく知っていた頼れる少年。


私がその名を口にした途端、目の前の青年が目を零し落ちそうになりそうなほど大きく目を見開いた途端、今以上にぼろりと大粒の涙を零した。


「おぼえっ!覚えているじゃないですかぁぁ!!」


彼、シナウスは私をぎゅっと抱き締めて泣き続けた。

私はこの状況に驚きと困惑していたが、前世の知り合いに出会えたことに私もまた嬉しさでぽろりと一つ涙を流し自分の記憶よりもずっと大きく逞しくなった背に手をまわしたのだった。






「すみません・・・嬉しさでつい。」


暫くして涙も気持ちも落ち着いてきた頃、私の隣へとベッドに座りシナウスは恥ずかしそうに俯きながら随分前に冷めてしまったシチューを口に運ぶ。

聞けばここへ来る前から緊張して昨日からあまり食事が喉を通らなかったそうで、泣いて安心したら彼のお腹から『キュルキュル』と可愛らしい音が鳴り、よければとあのシチューと硬いパンを差し出した。

彼からすれば味など全体から見て劣るだろうが彼は喜んで食べてくれた。


「全然。それより最後に会ってからシナウス、大きくなったね。」

「はい、あれから6年経ち年も20になりましたから・・・。」

「6年?!」

驚いて私は大声をあげ、瞬時にヤバイと思い咄嗟に手で口を覆うそんな私を見てシナウスは微笑みながら口を開いた。


「あ、心配ありません姉様。僕がここに入った時点で防音魔法は施してますから、声は外に漏れることはありません。」

「・・・流石です。」

ニコニコと笑うシナウスはシチューの最期の一口を口に運び、食べ終わると食器を側に会った机へ置いて私へ向き直す。


「・・・聞いても良い?シナウス。」

「はい。僕が答えられることなら。」

「こうしてまた逢えて私も嬉しい・・・嬉しいんだけど、私の妄想とかじゃない?例えば自分が見ている幻・・・とか。」


戸惑った声で私は彼にそう質問すると、彼は笑って小さく首を横に振り口を開く。


「いいえ、姉様。僕たちはこうして生きています。現にシチューを食べていたじゃないですか。」

「そっか。」

「そうです。でも姉様にとってはやっぱり信じられない?」


その問いかけに彼のほんの少しの意地悪さが混じる。私は苦笑して彼と同じように首を横に振る。


「ううん。だけど教えてほしい。どうして【聖戦】に居る君がこうしてここに来れたのか。」

「・・・懐かしいですね、その言葉。今はもう誰も嫌がってその言葉を言いませんよ。」



【聖戦】。

彼はそう呼ばれる場所に居た。

そこで私は何年も彼らとともに戦ったのだ、そう毎日小さな機械・・・私の携帯を通じて。



「どうしてこうして姉様の前にやって来れるようになったのか。少し、長くなりますが聞いて頂けますか?」


【聖戦】という名のソーシャルゲームの登場人物であるシナウスはゆっくりと今までの経緯を話し始めた。




いつも読んで頂きありがとうございます。

裏設定:シナウスの名前の由来ですが、ピンク色のイルカが実在していてシナウスイロイルカ又はアマゾンカワイルカという名前です。後者から名前をとるのは・・・うーんとある有名会社が見えたので前者のシナウスイロイルカからとりました。ピンクのイルカなので彼の眼と髪はピンク色と決めておりました。因みにピンクイルカがは幸運を呼ぶ生き物としていわれています。

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