まさかこんなことになるなんて誰が想像できますか?(大好きな皆に恩返ししよう、そうしよう。㉕)
「え?お父様良いのですか?」
しんしんと毎日雪が降り積もり過ぎてとうとう外出が出来なくなった本日の朝、何時ものように朝食をとっていた私は父であるアドルフの言葉に驚いて思わず聞き返していた。
「ああ、この前の料理はとても美味しかった。このように外出もままならないし、もし、また思いついた料理があればギリアと一緒にまた作ってほしいなと思ってね。」
朝から爽やかなイケメンでお父様が微笑んだ、・・・・やべ、朝から眼福。
でも、この前の美味しいジビエ料理作ろうという計画で自分が思った以上に大人を振り回してしまったと自覚していたのでてっきり両親には注意されると思っていたんだけどなぁと、自分の予想していたものと大幅に予想外の話しの流れになったことに戸惑いながら私は食後のミルクが入ったコップを傾ける。
今後控えるように言われると思ったのには勿論理由がある。
というのは、騎士様が帰る際お父様が毎回気を利かせて、アイルお兄様の領地まで帰るのに少なくとも1日は野営をすることになるので飯の足しにと食料を渡している、この事が発端だ。
今回渡した食材はワインや他に野菜、それとおもてなしの際味付けして漬け込んだ肉や今回作ったマヨネーズとバターを渡した。
そこまではなんら昨年と変わらない普通に行われるやり取りだった。だが渡した食料があの日料理に使われたものだと途端分かると、その日の野営はとんでもない争奪戦になったと無事に領地へ帰ったお兄様から少し茶目っ気のある表現で綴られていた手紙が私の元へ届いたのだ。
両親と一緒に読んだこの内容でちらりと私は何気なく両親の顔をを見て「あ、いけね。」と直感した。
別段ちょっとしたお騒がせ話の内容の手紙のはずなのに理由は分からないが両親にとってあまり良くない内容だったのだろう。何故か両親2人ともの表情が曇っていたのだ。
あれだけ顔を曇らせる表情の両親は初めてだったので、もしかしたらもう作っちゃ駄目って言われるかもしれない。両親にバレる前にさっと視線を外した私の心臓は別段悪いことはしてないがドキドキと嫌な音を立て冷や汗をかくこととなった。
もし注意されたらどうしようか・・・。
とりあえず両親に何か言われたら勿論子供なので甘んじてそれを受けよう。
けれどほとぼりが冷めたらバレずにギリアを巻き込んでこっそりやろうと心に決めていたので、逆にもっと開発を勧められるとは露ほども思ってはいなかった。
なのでこうして驚いて聞き返してしまったわけなのである。
「今度来た時により美味しいものを食べてもらいたいからね。アイル君も楽しみにしていただろう?」
父が穏やかな声でそう言われて、確かに丁度一週間前に帰っていったアイルお兄様と今後も美味しいものを一緒に食べようと去り際にそう約束したことを思い出す。
「ティリーの考えた料理お母様もまた食べたいわ。」
母もまた笑っておっとりとそう私に言う。
こうして2人が応援してくれるなら・・・まぁいっか。
「・・・はい。私ももっともっといろんなもの作っていきたい、ギリアと一緒に考えてみます。」
私の返事に2人は満足したように微笑む、と、父が思い出したような顔をして口を開いた。
「そうそう、ティリーも来年で4歳になるからそろそろ専用の従者を1人つけようと思う。そのつもりでいて欲しい。」
へ?
そう言い残して、私と母に1つ頬にキスを落として父は部屋から出て行ってしまった。恐らく書斎へ行ってしまったのだろうが、それより私は父の最後の言葉に未だよく理解が出来ず父が出ていった扉をぽかんと見つめていた。
「・・・私専用の従者?」
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「旦那様がお嬢様に従者をつけるとおっしゃったのですか?」
朝食を済ませた私はとうとう恒例と化した調理場へやってきて、もう定位置になる小さな椅子に座る。
通り過ぎる人達から挨拶をされつつ返しつつ過ごしていると、外へ続く扉からギリアが入ってきたので私はギリアへ駆け寄った。
ギリアは様々な野菜の入った籠を他の人へ何か言付けて彼にそのまま渡すと、軽くお辞儀をする。
今日は昨日話していた温泉卵を作ってみようという事で今回はどうやって作るか道具はどうするかなど彼と昨日より詳細な話し合いをしていたのだが、私がぼんやりとして何時もとどこか違う事に気が付いたギリアに心配されたので、つい今朝の事を話したのだ。
彼に従者の事を話すときょとんとした表情でそう質問され、私はこくりと頷く。
「まぁ、確かに早い方で専属従者は3歳から4歳の間につけるという貴族の方はおられますから特におかしいとは思いませんが・・・何か気になることでも?」
「私、従者とはアンの事だと思っていたの。でも、お父様は専用の従者をつけるって言ってましたので・・・アンじゃない人はちょっと緊張するなぁって。」
今は雪が多く、外出もままならないので騎士様が戻る際供にアンを含めた数人のメイド達と執事達は御祖父様のいる別邸へと派遣され今この屋敷のメイドや執事達は少ない。
今は交代制で他の住み込みメイド達が起こしに来てくれる。人見知りではないのでどうという事はない、ないのだがしかし、ほんの少しの事だがアンじゃない人はやはり緊張してしまう。
「そうですね・・・けれどメイド長も随分年を召しておられ、ここの冬は寒さが堪えます。その為メイド長はこうして別邸へ毎年この時期は行かれますから、お嬢様のそばにずっと居られるのは難しいでしょうね。」
そうだよねぇ、だからお父様わざわざ言ったんだろうし。
ギリアの最もな言葉に小さくため息をする。
「なら、私の知っている人がいいなぁ。」
「それはどうでしょうね・・・新しく雇うかもしれないですよ?」
「う~ん、あ、ギリアは・・・どうです?従者のお仕事。」
ちらりと見てギリアを勧誘するとギリアは人の好いにっこりとした笑みを浮かべた。
「料理がありますから駄目ですね。」
ですよねぇ~、分かっておりました!
潔いお断りの返事に私は笑う。
従者となったギリアなどギリアではないだろうし。
「さてと、ではこのお嬢様が言われる温泉卵を作りにこの後温泉が湧いているところへ行きましょう。道具に紐を通しておきますので。」
「そうですね・・・あ、そうだ、ギリアにひとつお願いがあるんですが。」
「従者はできませんよ?」
「それはもう解ってます。あのね夜食を1つ作ってほしいんです。」
「夜食、ですか?」
「はい、夜食です。」
少し戸惑っているギリアに私はにっこりと笑った。
いつも読んで頂きありがとうございます。
裏設定;手紙を見て両親が表情を曇らせた理由→(確かに野営のためにと渡したものあるがハーティス叔父達にも食してもらうように言ったはずだが?)(アン達大丈夫かしら、野営なんてそうそう経験ないのに、その上ご飯の争奪戦なんて・・・疲れてなければいいけれど。)
決して彼女の作ったもので困ったわけではなく、その周りの大人に困惑していた2人。因みにちゃんと死守したのでハーティス達も口にしています。(彼はあまりのおいしさに吠えまくりました。)




