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題名はまだない。何せこの物語はまだ途中なんで!  作者: ちゃらまる
第2章~誕生編~
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まさかこんなことになるなんて誰が想像できますか?(大好きな皆に恩返ししよう、そうしよう。㉔)




「けれど、3歳児がこんなに提案できるなんて天才としか言えません。」

「確かに。俺らが3歳の頃なにしてたっけ?剣を振り回すことしかなかったよね?」

口々にヴォルとグリップが言うのを聞いてラディンは小さくため息を吐いてもう一度真剣な表情でアドルフを見る。傍から見れば睨みつけているような表情だ。


思わずそんな表情で見ている幼馴染にギョッとして2人は思わず彼が何かしでかすのではないかと体を前のめりになりいつでも行動できるように態勢を変えた。


「アドルフ卿、それでも俺はまだ慎重に行動すべきだと判断します。いくら大人が護ったとしても背後に彼女の存在が分かれば彼女が危険になる。今はまだ料理の調味料アイデアといった些細なものだ。だが彼女が言った古の文字(アンティクアリィ)が解読できるということが本当でそのような技量(スキル)が彼女にあるなら、彼女の知識は料理に限らず、魔法、錬金術、それこそ禁術まで習得してしまう可能性を持つ。もしそんなことになれば、王族が黙っていません。」


「ラディン卿、貴方が言うのも確かだ。その可能性は私も何度も思ったししかも私と娘は王族の血を受け継いでいるからな。変に目立てば厄介事も増える。」


「ならばっ!「だが、そうやって長い間保守的に家を護ってきた私達一族の結果を知っているだろう?」・・・。」


ラディンはアドルフの言葉に思わず何も言えなくなる。


ルーザッファ家は代々国の中立を保ち王族に忠誠を捧げ、国の決定に従ってきた。

だがいくら忠誠を誓っていようが国に従おうが殿公爵家というだけで様々な悪意にも晒されてきたのだ。


一番記憶に新しいのが彼の父ルドルフの騎士養成施設を作る計画を潰された話しだ。


元々この養成施設を作ろうとしたのが未だに王都から遠い地方ではまだまだ治安が良いとは言えない地方も多く存在していた、訓練で鍛えた後各地方の領主と連携できる警ら隊というシステムを地方に組み込むことで地方治安向上を図るためだった。


この案は国王にも進言し、秘密裏に行う事となった。


それからルドルフ卿は真意は隠し貴族含め一般市民でも入れる学校を建てその警ら隊から上を目指すものは騎士、近衛兵と幅広く志願者を集いそのための施設とシステムを作ろうとしたのである。

一から頭角を現す若者を見つけ出し直に訓練し鍛えてきた彼らを講師として後の発展のためにルドルフ卿がどれだけ心血を注いでいたのか息子である彼は間近で見ていた。


補助金制度を数年待ってもらえばそれは事業として成り立ち、ゆくゆくは補助金制度を返上できるはずだった。けれど、そんな努力もたった1つの悪意ある言葉で壊されてしまった。



結果として計画は流れることとなったが、ルドルフの身内の者が近衛兵王都騎士団の上に立つことになりある意味、敵である相手の牽制が出来るよう上手く転んだ。だが、領民の生活の為、王家との対立を望んでもいないし忠誠を誓う為だったとはいえ、敵に背を向けるという行動をとらざるを得なかったこの時ほど悔しく屈辱に思ったことはないだろう。


そんな経験を味わっている事を当然知っている彼らは、アドルフの言葉はとても重いものだと理解していた。理解してしまっているから何も言えなくなってしまったのだ。


「保守的に動いたことでこうして存続できている部分も勿論ある。だが、それだけでは難しい所まで来ている。恐らくまた宰相ども第2夫人側が何か企んでくるだろう。あっちも前回の件で大きな痛手を負ったがそろそろ動き出す頃だ。」


「【紅き魔女事件】でも結局は大元までは息の根を止められなかったですからね。いくらこちらが目を光らせていてもこぼれ落ちてしまう。少しこちらでも調べてみます。」

「頼む。その際西側を調べてくれ。」

「西側?・・・あそこは子爵の領地でしたね。あそこがどうかされたんですか?」


ルーザッファ家領地の隣の領地の事を思い出す。

子爵も代替わりされ、その後いざこざも聞かず別段こちらの諜報にも何も耳にはしてない。


「あそこ付近の村でちょっと不幸を耳にしてな・・・少し気になったのだ。それにアイル君の言葉も気になる。どうやらここから見た西の空が淀んで暗く見えるそうだ。」

「・・・妻と同じ能力ですね。」


技量ではない女神から授かったとされるその片鱗の力を総称として能力と呼ばれる。一代で赤ん坊の時に突然授かることもあれば、一族代々というものもある。妻たちは後者の能力持ちである。


アイルが見た景色はきっと以前妻に教えてもらった一族代々伝わる予知の能力で視た景色なのだろうと推察する。


その能力を受け継いだ証として彼女達の場合瞳の色はオーロラのような輝きを放っているのが特徴だ。今では受け継ぐ一族は義母と妻、そして息子のアイルだけとなっている。


その能力があった故に危険も回避できたが同時に危険もついて回ってくる。それ故他人から身を護るように隠れて彼女達は生きてきた。

実際、彼女とその故郷で知り合い恋仲となり自分と婚約したすぐ後、故郷である国の国王から存在が知られ狙われ追われることとなり自分達は命からがら彼女の故郷から逃げてきたのだ。


兵士に取り囲まれた時に義理の父であるハーティス達が自分達を探し見つけて助けてくれなければ自分も妻も義母も最悪な運命をたどっていたかもしれない。


結果として自分の国の貴族の娘となり所帯を持った今その国王はおいそれと手が出せなくなったがいつまた暴挙に出るか分からない。

様々な危惧から妻には護衛騎士の誰かといるようにしてもらい、護身用の魔法アイテムを身につけて貰い、息子には今のうちに剣や知識を身につけて貰うようにしている。


それだけ彼女達の能力は危険なのだ。



「妻は性別によって巫女の力は左右されると言ってましたが、アイルの能力をみる限り、性別といったものはどうやら関係ないようです。・・・息子が変なことに巻き込まれないようにしたいのですが。」


「あの子も賢いからほいほいとどこかへ突っ込んでいったりはしないだろうが、正義感が強いお前の子供だから断言は出来ないな。」

「・・・・良い子に育っているんですがね。」

「尊敬されているのは嬉しいが、厄介でもあるな。」

「それは、貴方にも当てはまるのでは?」

「そうなら良いな。なれば、私達親は護り尊敬してもらえるよう常に努力しないとな。」


そう言うと2人は小さく笑ってグラスを傾けた。


そんな2人を見ていたグリップとヴォルは何処かどんよりとした眼で2人を見つめる。

何かを調べるという事は自分達も駆り出されると理解したのとただ単に妻子持ちの2人が羨ましいからである。


「いいなぁ・・・俺も奥さん欲しいなぁ。」

「そうだな・・・お前の場合、女性を褒めるような言葉を覚えることから始めないとな。」

「あ、それ無理。だって化粧濃くて臭い奴俺嫌だもん。」


だったら言うなよな。


ヴォルはそう言おうと思ったが、自分も結局こいつと同じ独り身には変わらないので心の内に留め、持っていたワイングラスの中にあるワインを飲み干したのだった。




いつも読んでいただきありがとうございます。

裏設定:アドルフがアイルの予知能力の内容をいつ聞いたのかというと、彼女が厨房にいて騎士たちが休んでいる時です。その時アイルと彼女のパパンがしていたこと、それは彼女が危険に晒される可能性を伝えたアイルとパパンの心配事と一致したことから半日かけて屋敷のトラップ配置の確認 補強内容 とある処置場所の決定と議論を重ねつつ話し合っていました。中々えげつない内容だったので他の人には聞かせられないな、と互いに思っていた様子。(おっかない人ランキングをつけるならこのふたりは必ず上位ランクインしますが、彼らは身内に頼られる凄い人です。)

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