まさかこんなことになるなんて誰が想像できますか?(考えよう、探してみよう、作ってみよう㊵)
「いやいやいや、待って待ってティキちゃん!そんな思いつめた・・・いや死刑宣告されたような顔をしないで!」
グリップはワタワタと慌てて彼女に取り繕うが、彼女の顔色は良くならない。
彼女は彼の先ほどの言葉が脳内で木霊する。
彼女は知っていた・・・・、最初から・・・なら。
「なら・・・どうしてすぐに私を牢屋に入れなかったんですかっ。」
グリップを睨みつけるように見つめる。
「貴族の人に害を・・・それこそ殺そうとすると知っていたなら、私はすぐにその場で殺されていても・・・可笑しくなかった・・・なのに何故っ!!つぅ・・・。」
「あぁ、ほら興奮するから!」
蹲りそうな彼女を身体を支え、グリップは痛がる彼女をヒョイっとそのまま怪我に気をつけて抱き上げると彼はアドルフの方を見る。
何を言おうと分かったのかアドルフは頷くと、グリップは彼女をソファへ運び座らせる。
彼女は項垂れた姿勢でグリップを見ると、グリップは少し申し訳ないように小さく笑った。
「順番に話すよ、だけど最初に言っておくと誰も君に非を求めていないからさ。ちょっと落ち着こう?
?ね?」
そういうグリップに彼女は小さく頷くと、彼ではなく今度はアドルフが口を開く。
「ならその説明と同時に今までの報告を頼む。」
「はいアドルフ卿、あの日―――。」
あの日、それは彼ら、怪我人達がここへ運び込まれて2日目のことだ。
ティキちゃん、この際だから誤魔化さずに言うけどあの時の攻撃魔法、実は失敗してなかったんだよ。
彼女の護りの魔法で、君の魔法は相殺されたんだ。
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『良いのティリエスちゃん?!あの子このまま放っておいて!』
ティキが居なくなり去っていったのを確認してから、あれだけ黙って傍観を務めていた彼グリップは驚いて目の前にいる自分より幾分も幼い少女にまるで問い詰めるように問いかける。
そんな彼に彼女は涼しい顔をして少し温くなってしまったお茶を飲んでいた。
こくりと一口飲んで息をついた後、彼女は自分をじっと見た。
『グリップ卿が怖がらせて委縮してしまいましたし、問題ありませんわ。』
『そう言って~とぼけても駄目だよ。ティリエスちゃん、あの子はね君を殺そうとしてたのかもしれないんだよ!ティリエスちゃんだって部屋の護りの反応を解ってたよね?なのにどうして捕まえなかったの?』
グリップはあの扉の隙間からの殺気にいち早く反応し護衛対象から護るように臨時体制に入れば、そこには騎士の殺気にあてられ怯える少女だけがそこにいた。
グリップはこの少女に語りかけながら彼女の右手の魔力の残滓に火の魔力を感じ取る。
火の魔法は殆どが攻撃魔法だ、なら彼女は自分の意思でティリエスを狙ったということになる。
幸い、彼女の屋敷は古来からの魔法が施されており彼女の部屋に放つ前に魔法は無力化した。
実害がなくとも『はい、そうですか。』という風に軽く流していいわけではないのだ。
『グリップ卿の言い分は至極当然なんですが・・・。』
彼女は一度言葉を区切り、彼女は少し考え込む。
次に何を言うか言葉を考えているようだ。彼女はその場その場の無邪気な突拍子のない言葉を言わない、こういう時は彼女の父アドルフ卿を見ているように感じてしまう。
彼女は自分の顔を見ることはないから知らないだろうが、このように考えている時の彼女の表情は大人の顔だ。
「彼女は、自分の意思でしたように思わないんです。」
「それは・・・・まぁ、そこは俺も同感だけど、でもさぁ・・・それでもティリエスちゃん危険だよ。」
「解ってます。でも少し時間をかけてティキさんを見極めたい。だからお願い、今以上に行動を制限されても我儘は言いません。だから、だからグリップ卿。私を守ったまま私のお願いを聞いて頂けませんか?」
彼女はそう言って、俺達を説得させたんだよ。
そうして、彼女と君は一緒に過ごすことになり、過ごしていく内に君は警戒を徐々に緩めていった。
そして君と共に過ごして、彼女は【君は敵ではない。誰かに利用されている。】という判断をした。
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「ティキちゃんがね、父親・・・いや、あのラビというクズが行動し始めてからまた表情が強張ったのをみて、今度は俺達が網を仕掛けた。それをするには、ティリエスちゃんの協力が必要になるから大分渋ったけど、彼女はその案に乗ってくれた。クズが君を使ってまた事を起こすことは解っていたからねぇ。」
まさか、リリス夫人の目を盗んで眠り薬入り煙玉を作ってお茶会のテーブルに何かを仕込んだことは少し想定外だったけどねと付け加えて、彼は淡々とティキに話した。
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