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レイヴン戦記  作者: 一弧
第一章 急転
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壮行会改め祝勝会

『壮行会を祝勝会へシフトする』その発案を最初に聞いた時は、若者ゆへの気負い、焦りなどからの暴走気味なのではないだろうか?と疑ったものだが、初代であるジギスムントから仕えるカイが落ち着いてサポートする様子から一応なんとかなるだろうとは予想していたが、ここまでの戦果を出すとは予想していなかった、しかも王までもが来賓としてやって来る、費用をけちらなくて本当によかったと、胸をなでおろす伯爵であったが、この後の爆弾はまったくの予想外であった。



 テオはテオで祝勝会をかなり後悔していた『身内でドンチャン騒ぎできればそれでいい』くらいに考えていたのだが、来賓が次から次にやって来て、伯爵が適当に捌いてくれなかったら、逃げ出していたかもしれない、別室で飲み食いしているルヨ達のことが心底うらやましく感じられた。

 祝勝会も中盤にさしかかると、国王、王姉、侯爵が到着した、テオとしては、この三人と適当に会話した後で、負傷した傷が痛むとか理由をつけて退出でもしようかと、考えていた矢先だったので、最後ここを乗り切ればくらいの気分で彼らを待ち受けていた。

 三人を伯爵と共に出迎え会場へと案内すると、一同も主賓の来訪に場はざわめきを残しつつも、その動向、発言に注目が集まった、その注目を察して、侯爵はよく通る声で武勲を称え先代レギンナントに匹敵する才と称えた、その発言の最後には父親には中央で軍の指揮・運営に携わって欲しかったと言っていたが、あれは明らかに余計な仕事を押し付けようとしているとしか思えない目をしていた。


「この度の疫病により領地では、父を始め多数の犠牲者がでました、まず国許に帰り領地運営をしっかり固めて行きたいと考えています」


 テオとしては『とっとと帰りたい、中央になんて誰が残るか!』と言う感想を最大限穏当な表現に変えて言ったつもりであった、ただ、それに対しての「それは、大変だな、頑張りたまえ」という割と素っ気ない返答がテオを不安にさせた『まだ何か隠し玉でもあるのか?』その時点では確証はまったく得られなかったが、かなり不安なものを感じてはいた。

 続いて、国王フェルデナントが声をかけてくる、


「騎士団のヴェルナーより詳細な報告は受けている、見事な武勲に褒美をとらそうと思うが希望はあるか?」


 『金!』と思ったが、さすがにシャレにならなそうだが、むしろ下賤さを強調する意味でいいのか?とも考えたが思いとどまり、「お気持ちだけで」と答えておいた。伯爵とも事前に相談していたが、この回答でも後で依頼に対しての報奨金はしっかり払われるはずだとの事なので、ベストであろう回答をしたはずであった、だが国王からの返答は予期しないものであった、


「そういえば卿は独り身であったかな?」


「ええ、まあ・・・」


 この瞬間傍で聞いていた伯爵は血の気の引く思いであった、国王にそんな機転をこの場で働かせることなどできるはずもなく、絶対に裏で糸を引いている奴がいる、侯爵の縁者を褒美という名目で娶せ自派閥への取り込みを図る、そこまでのシナリオがハッキリと見えたからである。伯爵の推理はかなり惜しいところまで行っていた、事実その場に居合わせた多くは伯爵とほぼ同じ考えに至っていた。

 ただ、次に国王より発せられた言葉でその場は完全に凍り付いた、


「では、私の姉上などいかがでしょうか?卿のような武勇、才覚に秀でた人物なら安心して姉上を任せられます、姉上もそれでいかかですか?」


 国王の姉への問いかけに、シナリオ通りと言わんばかりにユリアーヌスも答える、


「ええ、喜んで」


 そこからは場内は一気にザワつき始めた状況がまったく呑み込めず、とりあえずどうなっているのか話さずにはいられないといった感じで周りの知り合いとヒソヒソと話しが始まっていた。

 例外がいるとしたら、唖然呆然としている、テオドール、オルトヴィーン。ニヤニヤとその状況を眺めているヴァレンティン。ニコニコと笑顔を崩さない、フェルナンド、ユリアーヌス、その五人だけがひどく異質な感じであった。




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