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レイヴン戦記  作者: 一弧
第三章 新世代
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村への帰還

 叙勲や論功行賞が終わると、村へ帰る事となった、本来であれば一か月ほどで、帰り着いている予定であったのに、すでに二か月半が経過していた。皆さすがに帰りたくなっていただけに、帰りの道中は足取りも軽やかだった。

 馬車の中でも特に何もすることがない事もあって、さっそくゲルトラウデがヒルデガルドに絡まれていた。


「許可はしたけど、翌日に押し倒すってどういうことよ?」


「兵法書に書いてありました、『其疾如風』と」


「いや、悪くないけど昼間っから引っ張り込んでやる事じゃないでしょ」


「夜は奥様に悪いですから、あ、村に帰ってからも書庫でこっそりやりますからだいじょうぶです」


 天然なのだろうか?分かっていて言っているのだろうか?判断の非常に難しいところであった。


「それ本気なのか?」


 思わず聞くイゾルデの言葉はヒルデガルドも聞きたかったことであった。


「なにかまずかったですか?」


 その表情にとぼけた様子はなく、二人は天然である事を確信した。ヒルデガルドは軽くため息を吐くと、


「時々夜尋ねて行かせるから、ゆっくり可愛がってもらいなさい、あわただしくやってもしょうがないでしょう」


 「はぁ」ゲルトラウデは言っている意味がよくは分からず、生返事でかえした。理由はあった彼女にとって性交渉は男が勝手にのしかかり腰をふり、満足すると離れて行く、それだけのものであり、テオドールと強引にでも関係を持ったのは、自分がテオドールのものであるという証が欲しかったという側面が強かった。ヒルデガルドは彼女の発言から薄々そういった事情を感じ取り若干哀れささえ感じてしまった。

 『帰ったらアルマとも相談だけど、とりあえずこの子にもゆっくりと相手させてあげないとさすがに不憫ね、まぁとりあえずは相当ご無沙汰になってるアルマかしらね』そんな事を考えながら馬車に揺られていた。


 


 村へ到着すると盛大な出迎えが待っていた、事あるごとに報せは届いていたが、それでも無事に出発メンバーが一人も欠ける事無く、むしろ一人増えて帰ってきたことに喜びを隠しきれない様子だった。

 喜んではいても微妙に複雑な感情を隠し切れないでいるのはラルスの両親であった。やはり旅芸人というのがネックになり微妙にひっかかりがないでもなかった、事情を手紙で知っていたエレーナはマルティンにそれとなく村でのフォローするように言っておいたが感情的な問題だけに難しい問題であった。

 マルティンとしても町でロマンスを見つけて来いと焚きつけた側面はあったが、伯爵家の侍女や、出入りの商人の娘などが望ましいというのが本音であった。しかし、初めて見るが複雑に血が混じっているせいかエキゾチックな顔立ちはこの地方にはないものであり、若い男がのぼせ上がるのも理解できると思ってしまうような魅力にあふれていた。

 

 カップルが成立していたこともあり、幾組かの結婚式が合同で行われることとなったが、その予定は次々と変更されるは事となった、理由は帰還組の者達が何人も村への帰還と合わせるように村の娘との結婚を決定させたからだった。理由は様々だった、戦場に出た事によって家庭を持ちたいという気持ちが強くなった者、報奨金として大金を貰い気が大きくなった者、王都で女を知って結婚願望に歯止めがかからなくなった者、理由は様々であったが、まずは喜ばしいと思っていた。




 本当に久々という感覚であった、子供が産まれてからはグリュックに掛かり切りで、さらにユリアーヌスまで追加されたものだから二人の時間などまったく持つことが出来なかった。深夜の授乳、夜泣きはする、急な発熱、そんな毎日であり、とてもじゃないが二人の時間を持つことなどできずにいた。


「ついにゲルトラウデに手を出したんですってね」


 暗闇でまるで表情は読み取れなかったが、そこまで咎め立てするようなきつさは感じられなかった。


「怒ってるわけじゃないわよ、時間の問題だと思っていたからね」


 なんと返していいのか分からなかった、手を出したというより、正に押し倒されたといった方が正確な表現なのだが、たぶん誰も信じてくれないだろう。

 適当に生返事を繰り返しながら彼女の右頬にある傷跡をなんの気なしに撫でて行く、頬にできた傷も消毒の意味で焼け火鉢で固められたため、火傷痕となり、その部分だけははっきりと指で撫でる感覚が変わっていた、彼女はそこをゆっくりと撫でられるとなんとなく落ち着く気がして好きであった。普段はコンプレックスもあり、前髪で隠している右頬だが、暗闇の中では特に意識する必要性を感じない。だからこそ、意識することなく傷跡をさらす事が出来、そこをゆっくりと撫でて貰える暗闇が好きなのだった。

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