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かみがみ〜最も弱き反逆者〜  作者: 真上犬太
かみがみ~最終章~
226/256

26、双頭の狼が往く

 白い五つの閃光が、戦場を染めた。

 それは太陽の欠片ねつかくへいきでこそなかったが、炸裂し、大地も肉も区別なく引き裂く力だった。

 その爆発に巻き込まれた者は生物としての意味を消失し、堅牢であったはずの塹壕を紙の如く粉砕していく。

 屹立していたミサイルはなぎ倒され、はるか彼方で爆発した。

 くろがねの戦争兵器、戦車の軍団も、その威力から逃れることはできない。

 屈強な岩人の体など、抵抗することさえできずに四散。

 鎧騎士たちは愛馬と共に、銃を振るうゴブリンの兵士たちも、平等に引き裂けていく。

 広大な平原を、洗い流すように吹き荒れた破壊の嵐が収まった時。

 その場に立っている者は、いなかった。



 暴威の吹き荒れた戦場で、最初に取り戻されたのは、電子の目だった。

 城自体にも多大な影響を与えた破壊。その衝撃から"秘書官"が意識を取り戻す。


「……ほ、報告、報告しろ。なにが、どうなった!」


 曖昧過ぎるが、これでも精一杯だ。その声に目覚めた誰かが、手元の端末でカメラ機能を回復させる。


「ち、地上の映像、出します……歩兵大隊、戦車中隊、共に応答なし」

「防空部隊より報告。一部飛行魔が暴走したため、殺処分した模様。それ以外は軽傷者のみとのこと」

「敵、塹壕線、後方のミサイル、確認できず。砲台周囲に残骸らしきものを目視。観測班を向かわせます」


 それまでの状況を一切無視した、"魔王"の行動。城を傾けて、レールガンの射角を合わせるなど、とんでもない無茶だ。


「城と、レールガンの、被害状況は」

「一号、二号、四号、五号、大破。六号機、砲身が裂壊。交換修理は可能です」

「城基底部分、レールガンの射撃により破損、外殻の二十パーセントを喪失。飛行システムにもダメージが出ています。浮遊は問題ありませんが、移動や先ほどのようなマニューバは、難しいかと」


 本来、砲台という者は台座に据え付けるか、砲撃時の反発力を逃がせるような機構が必要だ。なにより、下に向けて撃つ・・・・・・・、ことなど、想定されていない。

 撃った時の反動、そして砲弾の威力に巻き込まれるほどの至近、それらの無茶が重なった結果、魔王城は機能不全に陥っていた。

 そして、"魔王"その人もだ。


『――そんな顔を、するな』


 己の魔力を城全体に回し、無茶な機動を可能にしたものの、体への負担は想像以上に大きかったらしい。

 呼吸器を宛がわれ、先ほどから注射や魔法の重ね掛けを続けているが、顔色は真っ青を通り越して透き通ってさえ見えた。


『連中の計画を、潰すためだ。仕方ない』

「まさか、あのミサイルが?」

『あれを通せば、残されたのは確実な敗北だった』


 その判断をあの一瞬で行い、ためらいなく敵も味方も殺す実行力。"魔王"はそれでも、自嘲の笑みを浮かべて尋ねた。


『地上軍は、どうなっている』

「先ほど、第四歩兵中隊から連絡が。負傷者多数、戦闘続行は難しいとのこと」

「戦車隊、現在稼働可能なものが十一、ただし、砲戦可能なものは五台です」


 なけなしの地上軍、そのほとんどが潰れてしまっていた。おそらく歩兵は四百名行けばいい方で、戦車はすでに戦力にならない。


「観測班より入電。敵ミサイル三基と発射機構の破壊を確認。スタッフらしき死傷者を多数発見しています」

「敵騎馬隊、その一部が南方面に撤退を開始、旗印から赤のプフリアと思われます」

「敵塹壕線、観測班の情報と合わせ、機能の六十パーセントを喪失と評価」


 両軍ともに兵士の損耗は激しい。だが、こちらの本丸は、まだ健在だ。


『ち、地上軍に』

「地上軍に通達。魔王城後部に集結し、指示を待て。途中、生存者を発見した場合、速やかに回収。戦車隊は負傷者を優先収容しろ」


 起き上がろうとする"魔王"を座席に戻し、"秘書官"は傍に立っていた"参謀"に告げる。


「防空指揮所にて『レッドマジェスティ』への警戒をお願いします。もし、勇者が先ほどの砲撃で死んでいた場合、可能性は低いと思いますが」

「了解した。"魔王"様を頼む」

 

 モニターが完全に回復し、撤退を始めた友軍を認めると、"秘書官"はさらに命令を重ねた。


「観測班に通達、勇者軍の残存兵力を確認せよ。特に、勇者、岩倉悠里と軍師の仔竜、そして、コボルトのシェートを」

「か、観測班から入電!」


 焦りが伝わる声に、"秘書官"は胸騒ぎを覚えた。

 この戦いは、まるで近距離で銃口を向け合うような感覚がしていた。互いが、互いを一撃で殺し得るような隠し玉を、躊躇なくぶつけ合っている。

 そして、その不安は、的中した。

 崩れかけた塹壕、その一部に合った不自然な盛り上がりが、吹き飛ぶ。

 その下から現れたのは、青い稲妻を纏った、仔竜だった。



 無我夢中だった。

 砲撃が突き進んでくるイメージが、頭の中一杯に広がる。そして理解する。

 これは絶対に避けられない。今から動いても間に合わない。

 死ぬ。ここで、自分は死ぬんだと、理解した。

 それは灼熱と轟音の混載、死の怒涛だ。

 白飛びする視界の中で、■■■■■■は、思い出していた。

 魔王城の中で感じた、世界の■を。


「――――っぐ!? ぐええええええええええっ!」


 強烈な頭痛と吐き気が、自分の中味をかき回す。胃液がぶちまけられ、胸と足もとを濡らす。立っているのか、倒れているのかさえもも分からない。

 ただ両手をかざし、あの時ソールとグラウムが見せた■を、使った、だけだ。


『無茶するんじゃねえよ! 助かったからいいもんの、そんな無茶な■の使い方したら、ホントに死ぬかんな、バカぁっ!』

『しかし、無事で、良かった。本当に』


 似合わないほどにうろたえた二人に、片手を上げて無事を知らせる。

 深呼吸すると、■■は、呆然と後ろを振り返った。


「あ……ああ……っ」


 そこには、半分以上土で埋もれた塹壕と、砕けたミサイルの残骸があるだけだった。

 人の気配は感じない。いや、誰かが動いている。


「な、なんじゃい、チビ助。魔王の奴、撃ってきよったじゃないか。竜洞の見識も、当てにならんなぁ」


 土の中をはい進むように、サンジャージが近づいてくる。瓦礫で右足を傷つけたのか、ズボンを血でびっしょりと濡らしている。


「じ、じいさん、足が」

「構うな。ヘマしただけだ。しかしお前さん、さっきの■、あれはお前か」

「う、あ、その、ごめん、よく、分からない。頭、痛くて」


 何かがおかしい。何気なくスマホを取り上げ、自分のステータスを確認する。

 そこにあったのは、異変だった。


「な、なんだ、これ」

 

『ステータスチェッカー』に表示された自分の名前が、文字化けしていた。

 それどころか、表示されている身体能力やスキル、■■■まで、意味の分からない表示の塊になっていた。


『メーレ! すぐ来てくれ、■■■が!』


 めまいと頭痛がひどくなる。聞こえてくる会話が音飛びして、肝心なところが聞き取れない。


『z――z、t、k、仔竜、はっけん、sまsた』


 それどころか、妙な音さえ聞こえてきて。


『敵陣地に仔竜の生存を確認! 繰り返す! 仔竜の生存を確認!』


 まるで耳元で怒鳴られたような、バカでかい音声。それでも、その声は■■を覚醒させるのに十分だった。


「サンジャージのおっさん! 今すぐ逃げろ!」

「な、なにをいきなり」

「魔王が、俺を見つけた! 追手が来る、早く逃げるんだよ!」


 見上げた空に、何かが飛んでいる。

 あれは敵、敵の姿。あの空で見たのと同じ、敵の飛行部隊だ。


「お前さんも一緒に!」

「俺は! 俺は――俺の、勤めを、果たす」


 頭が痛い、苦しい、辛い。

 でも、自分がするべきことをしないのは、もっと辛い。周囲に広がる焼野原を見ればわかる。俺の策で、みんな死んだ。

 でも、作戦はまだ、終わってない。


「儂もこの足じゃ。逃げるのは無理じゃろな」

「俺が、囮になるさ。その間に」

「その死にそうな面でか。儂の方がまだ囮になれるだろうよ」


 まったく、とんでもない頑固爺さんだ。でも、ちょっとありがたい。

 こんな不安しかない状況に、誰かがいてくれるだけでも。

 魔王の城からやってくる黒い影は、ちょっと多すぎる。俺を殺すにしては、大げさじゃないか。


『■■■、お前、まさか死ぬ気じゃねえよな』

「五号機の、発射を進めてくれ。プランBだ。あとは、こっちで何とかするよ」

『飛行魔の接近を確認。あと三十秒ほどで会敵します。準備は、いいですね?』


 結局、あいつを頼みにするしかなくなった。

 この罪深い命令を口にするのは、本当に嫌だ。それでも。

 仔竜は目を閉じ、つぶやくように告げた。


「【オルトロス00】、出撃」



 長かった。

 待つという、狩人の最も重要な仕事が、これほどまでに苦痛だったことは、無かった。

 それでも、号令は来た。

 この狩りの『ガナリ』が呼びかける声を、シェートは確かに聞いた。

 たとえそれが、自分ではない誰かを呼ぶような、よそよそしい綽名であっても。


「行くぞ、グート」


 力を貸してくれる友人の背に乗り、前を睨み据える。

 土ぼこりを上げて、城の真下に帰ってくる黒い戦車たち。そして、兵士のゴブリンの姿が見えた。

 その一切を無視して上を見れば、黒い穴がぽかりと開いた城の底がある。

 あそこまで行く。


「サリア」


 左手に神器をとりだし、前かがみになると、コボルトは告げた。


「行ってくる」

『武運を』


 そして、走り出した。

 狼の両足が力強く大地を蹴り、吹き付ける風と共に視界が狭まっていく。

 鼻面の先、疲労し、うなだれた顔のゴブリンたち。その一匹が、何気なくこちらに視線を上げた。


「て、てきしゅぶっ!?」


 金の光がそいつの顔を吹き飛ばし、驚いた連中がこちらに目を向けた瞬間。


「"透解"っ!」


 自分たちの姿が風に消え、すり抜けざまに放った光がゴブリンたちの命を刈り取る。

 それでも振り返らない。まっすぐ前に、ひたすら前に。


「て、敵襲! 司令部! 例のコボルトだ! 我『神狩』と交戦す! 繰り返す、我『神狩』と交戦す!」


 わめき騒ぐ連中を置き去りに、どこまでも進む。重要なのはあの城の下に行くこと。

 だが、神器の透明化が切れ、全員の視線がこちらに集まる。


「姿が見えたぞ! 各員自由射撃! 撃て!」


 咳き込むような音と一緒に、銃の威力が叩きつけられる。その一切が、身に着けたマントとそこに通した加護の力で弾き飛ばされた。


『お前のマントに、飛行以外の細工をしておいた。例の加護とやらをマントに通すことでちょっとばかり、敵の弾を喰らいにくくなるぞ』


 力が通った途端、細かに振動し始めたマント。その動きが弾を逸らし、威力を弱めるのだという。

 それでもグートを守り切るまでには至らないし、移動をやめればたちまち貫かれる程度の防御でしかない。


「ここで殺せ! 命に代えてもだ!」


 自分の目の前に立ちふさがるように、片膝を突いて銃口を向ける兵士。シェートはちらりと上を見て、それから相棒に囁いた。


「ありがとな。うまく逃げろ」


 そして、その背中からふわりと、飛び降りた。

 脇へ走り去るグートを横目で見て、連中の視線がどちらを討つべきか迷う、その瞬間。


「ハティ――雷喰らいはみっ!」


 雷が暴れ狂い、銃を持つ連中が吹き飛ぶ。その囲いが切れた瞬間。

 シェートは空を見上げて、叫んだ。


「飛べっ!」


 ざらり、という音が背中で鳴り、マントの形状が変わる。それはあたかも、ドラゴンの翼のような形になった。

 一瞬ためらい、それでも意志の力を空に向けると、体がふわりと空に舞う。


「飛行ユニットか! 撃て、撃ち落せ!」


 周囲を弾ける焼け付く金属の塊。この状況になったら心がける事。


『"海鳥"だ! 風に乗れ! 逆らうな!』


 サリアの絶叫に従い、シェートは大きく体を滑らす。そのまま蛇行を繰り返しながら、周囲に満ちた敵の射線を縫うように飛んだ。


『ぐ、軍師、さんから、貰ってきました。飛行の、マニュアル、です』


 サンジャージとの飛行実験の合間、イフに読んでもらった飛行の手引書。それは絵も交えて書かれた、分かりやすい物だった。

 ところどころ、森の動物や鳥たちになぞらえて、自分が、理解できるようにと苦心した跡があった。


『そういえば、巡回の間、お前の能力はなるべく使うなと、軍師に言付かってきた。特に炎と雷は、できる限り秘匿しろと』


 それが何を意味するかは分からない。それでも、自分はカーヤやモーニックたちと共に過ごすきっかけを得て、居心地の良さを味わうことができた。


『敵の鍋底に砲塔を確認! 上にあった物が下にないわけがないか! 気を付けてくれ、当たれば、木っ端みじんだぞ!』


 ヴィトの言葉に、物思いが覚める。

 鍋底から生えてきたそれは、戦車よりも長い鼻を持つ、鉄の攻撃兵器。最前までシェートが飛んでいた空間を、熱の塊が引き裂いていく。


『回避マニューバ―を心掛けて! 絶対に止まらず、射線を縫うように!』


 白い小竜の声に従い、上下左右に体を振りながら飛ぶ。急激に頭を揺さぶる感覚は、飛行訓練の時にも味わってきた。

 それでも、加速がきつく、意識がもうろうとしてくる。


『目を閉じるな! もう少しで鍋の底だ!』


 無数の熱の塊が、すさまじい衝撃と共に背中と腹をすり抜ける。守りの力など微々たる効果、衝撃で手にした弓を取り落しそうになる。

 それでも上へ、そう願ったシェートの前で、分厚い壁が底を覆い隠そうとしていた。


「サリア! 鍋底、ふさがるぞ!」

『何とかして上へ!』

『予想以上に隔壁が閉じるのが早い! こんな時――がいれば!』


 悔し気な小竜の声に、視線が一瞬、地上にそれる。その遥か彼方、焼け落ちた大地は命の痕跡さえ見えない。

 あそこには、あいつが。


『シェート! 回避!』


 判断が遅れた。それはこの空で、決してやってはならないこと。

 砲塔の弾幕をすり抜けた先に、四角い箱を抱えたグリフォンたちが、立ちはだかった。

 回避は間に合わない、ならば。


「雷喰っ、火奔ぃっ!」


 解き放たれた炎と雷、敵が撃ち放つ金属の塊。

 その二つが両者の間でぶつかり、はじける。

 ついで爆圧が、小さなコボルトの体を、虚空へと吹き飛ばした。


『シェートおおおっ!』


 衝撃が、体をでたらめに振り回し、空を転がる。

 歯を食いしばる。意識を手放すわけにはいかない。

 死なない、絶対に生きて、その先へ行く。


『あんまり長い事、使うなよ』


 撃ち出す力だけではダメだ。あの鍋底は砕けないだろう。

 なら、今自分が出せる最大の力を、ここで使う。


『俺がいなくなっても、お前が生きられるように』


 きっと、その願いは本物なのだと、思えた。

 なぜなら、今ここにある力は、どれ一つとして・・・・・・・、自分を裏切っていない。

 だから。


「翼、雷、なれ!」


 その命令を、高らかに叫ぶ。

 背中の翼が青白く光り、シェートを前へ押し出す。

 それは逃げる時に、広がった空でだけ使えと書かれた、超加速の方法。

 

『双剣、火奔っ!』


 突き出した剣に炎が宿る。

 炎は赤く燃え、黄色に変わり、白く輝き、そして蒼に染まっていく。

 それは空の色。今は見失った、大切なものの色。

 

「うわあああああああああああああああああああっ!」


 彼方の景色がかすみ、立ちふさがる壁が視界いっぱいに広がる。

 願いは無い、祈りは無い。

 ただ、そうあれと心を奮い、シェートは城の底を、貫いた。



 空に浮かんでいるはずの城に、地響きが広がった。

 同時に、天井に下がった警告灯が赤く輝き、異常を知らせてくる。


「緊急連絡! 魔王城底部、隔壁が、破壊されました!」

「最大瞬間熱量――六千度!? こんな熱量もの、どうやって!」

「底部施設、熱により一部融解! 誘爆の危険性あり、各ブロックを隔壁で閉鎖!」

「魔王城飛行ユニットに障害発生! これ以上のダメージは墜落の恐れが!」


 部下たちのうろたえ振りを見ながら、魔王は笑った。

 彼らがおかしいのではない、自分がおかしいのだ。 

 この決戦の間に、自分はいくつも間違いを犯した。

 冷静に相手を責め殺す、そんな"魔王"としての立場を忘れた。ゆえに、こんな無様に、自分も自分の軍も、ボロボロなのだ。


『……それがどうした』


 呼吸器を取り除け、立ち上がる。

 驚く周囲を制し、もういちど『操縦席』に座った。


「お前たちの、一撃を、何ができるのかを、見ないなど、ありえない」


 覇業より、理想より、契約よりもなお、自分が愛して求めたもの。

 何もかもが計画され、自分の死も生も、誰かのために搾取されることが決まっていた、無意味な世界を、ぶち壊してくれた者たちだ。


「これは余禄だ。余技だ」


 計画など、とうの昔に完了している。ただ、ここから先を描かない時、少しばかり座りが悪くなるだけの話だ。

 

「"魔王"様、後は我々が」

「いや、これは俺がやらねばならん。そして、これを乗り越えてこそ。奴らと、一個の存在として向き合える」


 こちらを気遣う"秘書官"が、複雑な表情を浮かべた。

 それはそうだろう。先ほどの俺の言葉が、何を意味しているのか察せられる、数少ない領袖なのだから。

 俺の行動を止めるべきか、それとも黙認するか。苦悶するゴブリンの肩を叩く。


「"秘書官"」

「……はい」

「もうルビコンは越えたのだ。先ほどの砲撃で」


 陸戦部隊は消え。再構築する時間もない。

 魔王軍は壊滅した。それが事実。

 言葉を詰まらせて、ゴブリンは決まり悪そうに視線を逸らし、頷いた。


「後はお任せください」

「シェートは、丁重にもてなしておけ。俺の仕事が片付くまでな」

「はい」


 必要な指示を与えると、座席に身を預けて、"魔王"は画面に向き直った。

 

「――これより、勇者迎撃戦、最後の指令を伝える」

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― 新着の感想 ―
[気になる点] うわぁ、魔王、何をやらかした。ウォッチメンのラスボスみたいに自分の真の計画は手遅れになってから話すタイプだろうから手遅れなんだろうなあ
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