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その鍵を預けて  作者: ターチャン


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16/16

IF:犬小屋

今日は金曜日。


ようやく月曜日からのハードな1日が終わった。


月光商社の仕事は厳しい。


ほぼ深夜までの残業になる。


救いは、土日には仕事が入らないことだ。


ため息をつきながら、管理人室のドアをノックする。


「はーい」


美しい甘美な声が聞こえる。


「今日も遅かったのね。朝人君。ご苦労様」


ドアを開けながら、あきら様がほほえむ。


「土日はいつも通りゆっくり休んでね」


「仕事のことは何も考えなくていいからね」


「はい。ありがとうございます。あきら様」


易しい言葉にいやされながら。


来ているものをあきら様にぬがしてもらう。


「はい。いいわ」


「いつもの場所にいきなさい」


あきら様にいわれて、管理人室の隅におかれた自分の居場所のクッションにうずくまる。


「じゃ、つけてあげるね」


あきら様が易しく、もうながく愛用している首輪をつけて、つないでくれる。


部屋の隅に置かれた小屋に。


小屋は、僕のためにあきら様が購入してくれたものだ。


購入するときは、自分もあきら様と一緒にホームセンターにお出かけした。


デートみたいだと思って幸せを感じていたものだ。


ホームセンターで犬小屋を見た時は無邪気に尋ねた。


「犬でも飼うんですか?」


あきら様は微笑みながら。


「そうね。可愛いペットのためにね。購入するの」


「朝人君はどれがいいと思う?」


「大型犬ですか?」


「そうね。普通の犬よりちょっと大きいかな?」


「じゃあこれがいいと思います。でも、あきら様の気に入ったのにしてください」


「そう。じゃあこれにしようかな」


「あと、犬用のクッションなんかも買わないとね」


「クッションがないと体が痛くなるかもしれないから」


やはりあきら様は優しい。


のんきにそう思っていた。


よく考えるとわかるはずなのに。


ホームセンターで犬小屋とクッションを注文し、帰宅後、


あきら様は今度はオンラインで買い物を始めた。


「あきら様、今度はオンラインで何を買うんです?」


「あなたのためのものよ」


また僕に何かを買ってくれるんだ。


なんだろう。


「何を買ってくださるんですか?」


「さっきまでも色々朝人君のために買い物したでしょう?」


「そこで過ごすための拘束具や、首輪を買わなきゃね」


「ここから選んでいいわよ」


感の悪い僕はここでようやく気付いた。


今日の買い物も僕のためのものだったんだ。


「小屋はこの部屋の隅に置こうね」


あきら様が易しく微笑みながらいう。


戸惑いながらも、僕は答える。


「はい。あきら様。ありがとうございます。」

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