第28話 壊す手、揺れる心
アランが叫ぶ。
「テュセは、みんなを守れ。」
「…でも!」
「エルフたちも居るけど、帝国軍の方が多いの…王都に使いを出したらしいけど、間に合わないわ…」
「――っ!…わかった。行こう!みんな!」
テュセの家の周りの人たちは、一緒に村から脱出して行く。
が、次の瞬間――
馬の地面を蹴る音が、地響きと共に近づいて来る。
「っ!」
「きゃー!」
「早く!こっちへ!」
帝国軍が、村に押し寄せる。
「火を放て!」
次々と家に火が放たれていく。
まだ逃げきれてない人たちもいる。
レイチェルとアラン、エルフたちが応戦する。
「っ!なんでこんなこと!」
「うぐっ。」
必死で剣を振るうレイチェル。
「ぐあ!」
「アイスウォール!」
氷の壁を作り、村人の避難を助ける。
が、数では到底勝てない…。
(私が!)
パニルが光の粒を集結させる。
「ダメだ!パニル!」
アランが強く抱き締める。
「ぷきゅ?」(アラン?)
その刹那――パニルの瞳には、村人が焼かれる姿が写る。
(………辞めて!)
パニルの体はアランから離れ、宙に浮く。
そう、これはあの時の龍へ変わる過程。
女神の意志。
パニルの体は大きく、爪も牙鋭く揃う。
「ギギギギ!」
目を開いただけで、目の前は炎に包まれる。
「うわー!」
「危ない!逃げろ!」
帝国軍は逃げ惑う。
「…研究所より、すごい…。」
「なんだありゃ!?」
後ろから聞き慣れた声がして、振り返る。
「え!?おじ様!?」
「よお!レイチェル!
それよりなんだあれは!?」
「なんで?おじ様が…心配してたのに!」
レイチェルが涙を流すのを見て、コーウェンは左程気にしないで続けた。
「ははは。詳しい事は後にしよう。
今はこいつを――!」
「待ってください!」
アランが前に入る。
「あいつは仲間なんです。元に戻ります、から…」
パニルの放った光は、村と森を抜け、ガリシアとの間の河まで到達した。
「あれが?無理だろ?」
パニルは一歩進むと、光線を放ち…破壊していった。
「…前は、こんな凄くはなくて……」
「ギギゃーーー!」
空へ光線を放つ。
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――目の前は真っ白だった。
果てしなく続く白の中に、パニルと二人だけ…。
「やっと完璧な貴方が出来た…」
光とも闇ともつかない存在。
ただ圧倒的な“意志”だけが、そこにある。
「あなたは…女神様…」
「龍の事ですか?…私、こんな事したくない!」
「いいえ。貴方はこの為に、この世界に召喚したの。」
「異世界から…」
「ええ。この世界は、もう歪みきっている
――争い、憎しみ、奪い合い。
何度繰り返しても、同じ結末に辿り着く。」
声は穏やかだった。
まるで、当たり前のことを語るように。
「でも壊すのは、私には出来ない。創造の女神だから。」
「だから、私?」
「そう、違う世界から召喚して、破壊する龍を創る。でもそれも上手くいかない。」
「諦めれば良いじゃない!」
「そうはいかない。私は創造しなければ、完璧な世界を…」
「前の龍だって、嫌だったんだ!」
「うるさい…」
「だから無くなってない!前もその前も…ずっと!」
「うるさい!」
女神の声には怒りと混じる。
何かを否定しているような…でも受け入れたい。
そんな自分にも苛立っているようだった。
つづく。




