だから、ロザリア……
長文になりました。
「……わ、分かった」
……もう無いよな、自衛の為の手段は。
改めてアルードさん側を見ると、あまりの展開に自失呆然としていた。
俺は、何気にマリーベル嬢に手を差し伸べたら「ビクッ!」となり、恐怖に顔が歪んでいた。
……嫌われたか。
俺は直ぐに手を引き、廻れ右をして同じ様に自失呆然としていたロザリアの手を引いた。
……そして、俺が廻れ右をした後に、マリーベル嬢がどんな顔をしていたかは俺は知らない。
屋敷に戻ると、借りている部屋に入り、対応はロザリアに任せた。
その日の夜、ロザリアとリンが寝たのを確認すると、俺は気配を殺し、屋敷を出て王城を目指した。
そして、王宮まで忍び込み探した。
すると……
「あの者を殺せ」
「それは止めた方が良い」
「何故だ! あの者は、国王である余を脅したのだぞ!」
「それでもだ! あの者はSランク冒険者と同等の実力を持っている。敵対するべきではない!」
……んな事だろうと思ったよ。
結局は、探すのに時間は掛かったが、夜明け前には、主要な王族に置き土産を贈る事が出来た。
流石に、13歳ぐらいの王女にも置き土産をした罪悪感が有るが、脅しという意味では効果抜群だろう。
俺は屋敷の人達にバレない様に屋敷の部屋に戻ったが、2人の美少女が起きて待ち構えていた。
「お帰り、ゼン。何処に行っていたの?」
「野暮用」
「……まあ良いわ。1つだけ答えて」
「良いよ」
「血は流していないわね?」
「ああ、流していない」
「それなら良いわ」
「ゼン様」
「何、リン」
「次は、私も連れて行ってください。
決して、足手まといにはなりませんから」
「分かった」
運良く、トイレも部屋の中に有る為、アルードさん達に会わずに済んだ。
そして、王城で「王家の短剣」の授与式が3日後に決まったらしい。
……3日後まで部屋に居たが、マリーベル嬢は一度も部屋に来る事は無かった。
完全に嫌われたか、もしくはアルードさん達に止められているのだろう。
……授与式当日は、俺とアルードさんだけで、王城に向かった。
「……悪いな、アルードさん」
「それは何に対してだ?」
「……まあ、色々」
「子供がそんな心配するな。
これでも、伝統ある侯爵家だ」
「……ありがとう」
「ゼンよ」
「何、アルードさん」
「帰りはどうするのだ?」
「アルードさんの決定に従うよ」
「……分かった」
そんな会話をしながら王城に向かった。
俺達が王城に到着すると、直ぐに謁見の間の控室に通された。
因みに、着ている服は、アルードさんが用意してくれた。
……1時間後、遂に呼ばれた。
謁見の間に入り、アルードさんの2m後ろを付いて行き、アルードさんが止まったから、その位置から斜め後ろ2歩分下がる。
そして、礼儀的な理由で膝を突く。
3分後に「国王陛下の入場」って声が、謁見の間に響いた。
この後、儀礼的な言上を述べ、許可が下りて顔を上げると、顔が醜く歪んだ国王が居た。
……腹芸も出来ない薄い国王だな。
表面上は、問題無く授与式は終わった。
これで国内に於いては、俺に逆らえるのは国王だけとなった。
さて、アルードさん達も領地に戻る事になった。
しかし……
「ゼン達3人は護衛の依頼を解除する」
「分かった」
「待ってくれ、キールベル侯爵」
「そうだ! 何故です?」
「悪いが、決まった事だ」
「……分かりました」
「……分かったわ」
「キールベル侯爵、お世話になりました」
「うむ、達者でな。それと……」
執事のガリバルさんが小袋を俺に渡した。
「少ないが持っていけ」
「分かった」
「ゼン君」
次はリリーベル夫人か。
「色々とありがとう。私では出来る事は少ないけど、出来る事はしたいと思っています。
ですから、何か困った事があれば来なさいね。
実家にも手紙を送っておくから」
そう言って、リリーベル夫人は一通の手紙を俺に渡した。
「これを実家の者に渡せば良いからね」
「分かりました。ありがとうございます」
次はメイナさんだった。
「ゼン様、ロザリアさん。ありがとうございます。
このご恩は絶対に忘れません!」
「メイナさんが幸せになれば、それで良いよ」
「……はい!」
「私もよ」
「ありがとう、ロザリアさん」
……結局、マリーベル嬢は別れの挨拶に来なかったな。
蒼天の翼や疾風の銀剣とも別れの挨拶を済ませ、俺達は西の隣国を目指した。
アルードさん達と別れて3日目の街「アルスブテン」の泊まった街1番の高級宿屋で朝食を食べていると、とある人物の訃報を聞いた。
「アルファーザス国王が亡くなられたぞ!」
「何でも、不慮の事故らしいぞ」
「即死らしいぞ」
あの愚王は死んだか……ざまぁ!
しかし、この手の情報はどういう流れで、こうやって広がるんだろうなぁ。
愚王の訃報を聞いた夜、ロザリアに誘われて街の中央にある噴水場に来た。
「ねえ、ゼン」
「何、ロザリア」
「私はゼンを愛しています」
「……ロザリア?」
「確かにケビンは幼馴染で婚約者で好きだったわ」
「……だった?」
「そうよ、ゼン。貴方と過ごしている間にゼンの優しさに触れ、ケビンとの想いが思い出になってしまったわ。
……だから、私はゼンを愛しています」
「俺も、ロザリアと過ごしていく中で、ロザリアの優しさや頑張り屋さんな所や、可愛い所を知り好きになった。
だから、ロザリア……」
「はい」
「俺もロザリアを愛している」
「「……」」
俺は、愛情を込めてロザリアとキスをした。
「……ゼン」
「……ロザリア」
翌日、朝食を頂いた後に、宿屋をチェックアウトして、西の隣国「ベータグシム」に向かって出発した。
今、御者をしているのはロザリアだ。
先程まで、俺も隣に居たのだが、ロザリアが恥ずかしがって追い出されてしまった。
因みに、噴水場から戻った俺達を見て察したリンは言った「おめでとう、2人共」と。
……めっちゃ恥ずかしかった!
噴水場から戻った俺は、ロザリアから色々と話してくれた。
故郷の事や家族の事を。
ロザリアは奴隷になった事で諦めていたが、このまま西に向かって進めば、ロザリアの故郷の町「ガーブリエル」があるみたいだ。
ロザリアの家族に挨拶をするのも良いかもな。
まあ、出会いは多少の創作を必要だが、家族になる人達に配慮は必要だろう。
そんな未来を考えていると、御者席にいるロザリアから「うっ」という声が聞こえた。
「ロザリア、どうした? 大丈夫か?」
返事が無い……って、馬車が止まっている!?
俺は嫌な予感がしてロザリアの所に行くと、ロザリアの右脇腹に矢が刺さっていた。
俺は、直ぐに刺さっている矢を抜き唱える。
「完全治癒」
これで……意識が戻らないだと!?
「完全治癒! 完全治癒! 完全治癒! 完全治癒! 完全治癒! 完全治癒!」
……何故だ!
右脇腹の矢傷が治っていないし、紫色に変色している!
「毒か! 全状態異常回復!」
これで……意識が……戻らない……だと!
「ロザリアーーー!」
どれ程経ったのか、リンが近付いて来た。
「……ゼン様」
「どうした、リン」
「襲撃者を全て捕らえ吐かせました。
黒幕は……あの愚王です」
リンから聞いた瞬間に我を忘れる程の怒りに囚われたが、直ぐにロザリアの事を思い出して怒りを抑えた。
そして、ロザリアの服が土で汚れていたから洗浄で綺麗にしたのだが、ロザリアの首の奴隷紋が消えていた。
「……そうか。奴隷が死ぬと奴隷紋は消えるのか」
俺は「倉庫」から、王都で買った最上級のシルクで身を包むと「倉庫」に仕舞う。
そして、俺は「倉庫」にロザリアが仕舞えた事で、ロザリアが死んだ事を再認識させられ、心に激痛と絶望が残った。
「ゼン様、どうされますか?」
「復讐は後だ。何よりも、俺自身が責任を取る必要がある」
「……はい」
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