09再び東京へ、そしてブログ更新
先輩と別れ、高速バスに乗る。
高速も久しぶりだな。学生の頃は結構お世話になってたけど。
自分の座席に座り、おやすみなさい!
・・ん?この臭い・・薬品?
俺は目を開け臭いの元を探す。
ひとつ前の座席・・後ろからこっそり覗くと試験管と・・大きいカッターが見えた。
確か硫酸をぶっかける事件があったっけ。
・・いや、硫酸は基本無臭だったはず。なら・・塩酸かな?
幸いにも塩酸カッターさんの隣は誰もいない。
隣に座って説得するか?いや危険か?
不意打ちで取り押さえる?あのカッターなら銃刀法違反で検挙できるが・・何もしていない人を捕まえるのは・・
だけど、被害が出てからじゃ遅い。
悩んだ末・・すぐ後ろで監視することにした。
立ち上がったり不審な行動をとったらすぐ動こう。
トイレに行くわけには行かないから飲み物は飲めない。
寝るなんて論外。
・・むしろ、怪しい行動とってくれないかなぁ・・なんて思ってしまった。
とっとと捕まえて終わりにしたい。いやごめん。
・・
・・・・
バスが東京についた。
結局何も起こらなかった。
普通にこいつ携帯いじったりしてただけだよ。
寝ときゃよかった!!!結果論だけどさ。
塩酸カッターさんがバスを降りた。
俺も2メートルくらい後ろを歩いてバスを降りる。
どうする?声をかけるか?
応援を頼む?でもその場合は確実に逮捕の流れだ・・
いや・・高速バスの中で通報しなかった時点で俺の腹は決まっていた。
後輩「おはよう。」
塩酸カッター「え!?」
後輩「安心していい、俺は仲間だ。」
後輩「事情はわからないけど、カバンの中を見た。」
後輩「飯食おうぜ。おごるぞ。」
塩酸カッター「・・あ、うん・・」
歳は俺より下か?
20代前半・・大学生くらい?
ミッション確認
1.意思の確認(凶行なら諦めさせる)
2.カッターと液体を回収する
・・
・・・・
朝早いからやってるお店も少ない。
俺たちは牛丼屋に入りテーブル席に着く。
後輩「間違ってたらごめんな。」
後輩「最近俺たちみたいなやつの犯罪がちらほら目立ってる。」
後輩「あなたも・・やろうと思っていたんじゃないか?」
塩酸カッター「・・」
すぐには話してもらえないか。
・・先輩すみません!設定借ります!
後輩「実は俺さ、25過ぎてようやく生まれて初めて彼女ができたんだ。」
後輩「でも彼女の親に交際を反対されて・・」
後輩「しかも会社の社長と彼女の親が知り合いでさ、俺を干すって言ってる。」
後輩「難癖つけて経費の申請却下されたり面倒な仕事押し付けられたり。」
後輩「今日だって、わざわざ新幹線使えない時間に合わせて急な出張を入れられてさ・・」
後輩「会社の連中は見て見ぬふりだ。みんな自分に危害が及ぶのを恐れて何もしない。」
後輩「彼女も・・親の意向には逆らえないって・・・・ふられたよ。」
後輩「それでも会社の嫌がらせは終わらない。俺の人生は終わったよ・・」
塩酸カッター「・・」
これでもダメなのか?
うーんうーん。
後輩「実はさぁ、テレビやネットで色んな事件やってるだろ?」
後輩「なら俺もいずれ・・ってな。」
後輩「人にはそれぞれの事情があると思う。」
後輩「比較、されちゃうよな。他の人の方がもっと辛いとかよく言われる。」
後輩「正直今の話も言って大丈夫かなーって心配だったんだぜ。」
塩酸カッター「・・」
何か言ってよー。
勘違いならそれでいいからさー。笑ってくれてもいいからー。
後輩「つか結局さ・・童貞のままで終わったし・・」
後輩「自分の苦しみは結局自分しかわからないよな。」
塩酸カッター「・・ああ、他人には絶対わからない・・オレの苦しみは誰もわからない。」
塩酸カッター「だからわからせてやるしかないんだ・・不幸な人は、他人を殺す・・」
!?
この人、不幸な人は他人を殺すブログを見た人・・
塩酸カッター「殺せば救われる・・でも・・怖くなって・・」
後輩「じゃあ試験管に入っているのは?」
塩酸カッター「塩酸・・硫酸は手に入らなくて・・」
塩酸だって危険だ。
昔、歌手が塩酸をかけられた事件もあった。
まぁ作者も生まれる前の話だけど。
後輩「塩酸じゃ人は殺せないぞ。」
塩酸カッター「塩酸ぶっかけてひるんだところを斬りつけようかと・・」
塩酸カッター「高速バスって、みんな大体寝てるし警察も来づらいかなって・・」
は、犯行の手口が多彩になっていく・・
塩酸カッター「まあ・・寝てるんなら塩酸なんか使わなくても刺せそうだけど。」
塩酸カッター「でもよかった。下手したら仲間を殺してたかもしれなかった・・」
後輩「・・」
塩酸カッター「あーオレさ、バカやって高校停学くらったんだ。」
塩酸カッター「なんかやけになってそのまま高校やめちゃって・・」
塩酸カッター「たまにバイトとかしてたんだけど、続かなくて・・」
塩酸カッター「そのまま20歳を超えて・・親に将来のこと考えろって・・」
塩酸カッター「バイトすら続かないオレに将来なんてどうしろと。」
塩酸カッター「みんなさ、オレが自分で選んだ道だろって・・」
塩酸カッター「・・・・違う・・こんなのを望んだわけじゃない・・・・」
塩酸カッター「誰だって不幸なんか望んでいない。」
塩酸カッター「だから不幸な人は自分で選んだわけじゃないんだ。」
塩酸カッター「社会に・・選ばされたんだ・・」
塩酸カッター「不幸な人は他人を殺す・・でも、殺したくない・・」
・・悩んでいるんだ。
救えば復讐心は薄れていくって先輩は言ってたけど・・
救う前はどうすればいいんだ・・?
どんなことがあろうと殺人はいけないよ、なんてこと言っても何も解決しない・・
逮捕してもさらに恨みを抱くだけ・・
塩酸カッター「結局オレは、他人すら殺せない無能ってことなんだな・・」
塩酸カッター「バイトすら続かないのも・・生きる価値もない・・」
後輩「・・俺には見える。あなたの価値が。」
塩酸カッター「は?」
後輩「いずれ革命が起こる。社会に変革が起こる。」
後輩「その時あなたの言葉が必要になる。」
塩酸カッター「オレの?でもオレの言葉なんて言われても・・」
後輩「不幸な人がどれだけ苦しんで来たか。」
後輩「それをどうやって乗り越えて来たか。」
後輩「あなたならそれが言える。だから生きるんだ。」
後輩「あなたの言葉は人々に勇気を与える。」
後輩「武器を持って戦うだけじゃ破壊と殺戮で終わってしまう。」
後輩「必要なのは希望だ。あなたの役割は人々に希望を与えること。」
後輩「あなたが他人を殺せないのは役割が違うから・・」
塩酸カッター「つまり、パラメータが偏っていただけだった・・?」
ゲームかな?
後輩「今はまだ目覚めの時じゃない。」
後輩「ドラゴンは機が訪れていないと判断すれば、誰にも知られずひっそりと身を隠している。」
後輩「しかし機が熟すれば、天を突く勢いで一気に表舞台へ躍り出る。」
塩酸カッター「それが・・オレ・・」
後輩「俺もまだ雌伏の時だ。」
後輩「時が来るまでがんばろうぜ。」
後輩「バイトが続かなくてもいいじゃないか。」
後輩「俺たちには大いなる役目が待っているのだから。」
塩酸カッター「おお・・なんか真実を知った気がする!」
塩酸カッター「もう少し・・がんばってみようかな。」
後輩「ああ。そうだ、なら塩酸は使わないよな?処分方法わかるか?」
塩酸カッター「・・庭にまく?」
後輩「ちょっと面倒な手順が必要なんだ。」
後輩「つまんないことで捕まったらまずいだろ?よければ俺が処分しようか?」
塩酸カッター「あ、じゃあ頼んます。」
塩酸カッターさんから、試験管を5本預かった。
・・1本じゃなかった。結構やばかった?
・・
・・・・
塩酸カッター「じゃあ、運命の日にまた会いましょう!」
朝食を終え、塩酸カッターさんと別れた。
運命の日ってなんだ?
というかこれでよかったのだろうか。
問題自体は・・解決していないよな。
まぁ俺の説得のおかげで凶行は諦めてくれたけど!やったね俺!
革命起きたらとかいつになるんだよ!って言われなくてよかった。
さぁ塩酸を手に入れた俺は塩酸後輩にクラスアップだ!
・・ダウンかな?
・・・・・・・・徹夜決定。泣いてもいい?
―――――
ミッション結果!
1.意思の確認(凶行なら諦めさせる)
→◎たぶん諦めてくれたと思う。
2.カッターと液体を回収する
→△液体だけ回収できた・・
総評:〇もう少しがんばりましょう
―――――
・・
・・・・
ホテルに戻るも塩酸をここで片付けるのも迷惑かな。
とりあえず携帯の電源を入れる。
呼び出しとか来ていませんように・・
来ていたのは、先輩からの連絡・・・・不幸な人は他人を殺すブログが更新された・・と。
時間は・・俺が高速バスに乗っていた頃か。
・・
・・・・
”不幸な人による行動が目立つようになった”
”しかしそれは、昔からあったこと”
”過去から現在まで、常に見捨てられた不幸な国民はいた”
”昔と今で違うのは・・国家が人権をうたっていることだ”
―――――
誰にでも人権はある。
誰だって幸福になっていい。
みんなが人間らしく生きる権利がある。
生まれながらの権利。
―――――
”ではなぜ見捨てられた不幸な国民がいるのか”
”幸福な人がいて、不幸な人がいる”
”それは、幸福を奪い合う社会になっているから”
”不幸な人を生み出す社会になっているから”
”全員が幸せになれない社会にしている以上、国家は嘘を言っているのと同じだ”
”明日、革命の話をする”
”不幸な人を救う方法はある”
”運命の日に会おう”
・・
・・・・
あの塩酸カッターさんが言っていた運命の日ってこのこと?
明日革命の話をする・・・・だから俺の説得?をすぐ受け入れたられたのかも。
・・って革命!?
もし革命を宣言なんかしたら、日本はさらに大変なことになるぞ・・
・・
・・・・