「蒼い華」番外編③
今回のリクエストはМanaryさんから頂きました。
初の正世編です。
多くの方に楽しんでいただければ幸いです。
めっちゃ長いです(笑)
ご了承ください。
申し訳ございません。
…前書きも長いけどね(笑)
番外編 蒼い華
「今回のリクエストはМanaryさんから頂きました。」by作者
『私が貴方の傍にいる。』Dear正世
「…ただいま、朝六時三十分です。本日のニュースをお伝えいたします。」
付けっ放しにしているテレビから、無感動なアナウンサーの声が聞こえる。
今日は…水曜日だったかな?
曜日の感覚が解らなくなってくる。
「正世~!早く朝ご飯食べちゃいなさいよ~!」
頭上から母の愛に溢れた応援メッセージが聞こえてくる。
…解っています、母よ。
ただ、今はもう少し寝かせて下さい。昨日の貴女との大喧嘩で俺は寝不足なのです。きっと貴女は忘れていますが。
「正世~!」
おっと早くもレベル2に突入しましたか。多少、刺々しさが含まれていますよ。
「起きなさい!」
これは…レベル4という感じですね。もはや名前も呼んで貰えません。
「……………………………………………………………。」
台所から邪気を感じます。そろそろ起きないと…。
身の危険を感じます。
「ただ…」
「起きます。今、起きようとしていました。」
俺は慌てて起き上がる。さらば、カーペット。
椅子に座り、トーストをパクつく。
…美味い。
ふと、視線をおかずの方へとむける…なんだ、これ?
「…なにこれ。」
俺は率直な感想を、コーヒーを飲む母へと伝える。
「…目玉焼きよ。」
「…あ、そうですか~、目玉焼きでしたか~あはは。」
…このとき、俺は今日のおかずについての意見は申し上げないことに決めた。
窓からは朝日が差し込んでいて、フローリングの床や丸い木のテーブルを照らしている。
「そういえば、最近綺流社くんと一緒に行っていないわね。どうしたの?喧嘩でもした?」
母さんが水道の水を止めて言う。
「…別に。」
綺流社の幸せを壊すのは辛いし、アイツといたほうが綺流社は幸せだと思う。
朝も一緒に行ってるみたいだし…
「…っ」
俺の心臓がズキズキしだす。
…いや、正確には「ズキズキ」なんて簡単な言葉じゃ表せられない。
言葉なんかじゃ表せられないくらい、苦しい。
もしも、俺が先に綺流社に気持ちを伝えていたら。
もしも、綺流社がアイツと出会わなければ。
少しは、この未来が変わったのかもしれない。
…でも、もう遅い。
俺は永遠に綺流社と付き合えないし、ずっとこの気持ちをひた隠しにして気付かれないようにしなきゃいけない。
―「もしも」は空想の言葉。
―「もしも」で語られる言葉は、大体が絵空事。
不意にそんな言葉を思い出した。
「行ってきます。」
母さんに伝えて、家を出る。
見上げた空は苦しいほどに青く澄んでいて、綺麗だ。
テクニックも何もない小さな子が一生懸命、青い絵の具を塗りたくったみたいなそんなどこまでも綺麗でどこまでも清々しい空。
「…綺流社。」
不意に綺流社の名前を呼んでしまったことに驚く。
綺流社はもう、俺の隣にはいないのにさ。
綺流社の隣に居るのはアイツなのにさ。
近所の家の花壇に咲いているのは、綺流社が前に好きだって言ってた花で。
心臓がぎゅうっ、と苦しくなって、走ってその花から逃げた。
弱虫なのは、俺だ。
逃げたり、悩んだりすることしかできないのは俺が弱いから。
まるでそういう気持ちや綺流社から逃げるみたいに、俺は学校に向かって走った。
ガラッ!
教室のドアを開けると、綺流社が俺に気付いて微笑みながら挨拶をしてくれた。
「おはよう。正世。」
いつもと変わらない笑顔に、心臓がドキドキと鳴り始める。
「…おはよう。綺流社。」
俺はいつも通り綺流社の頭を撫でる。
…俺は上手く笑えているだろうか?
「あ、そうだ!今日はね、鏡夜と一緒にお昼食べる約束したんだよ!」
俺の頭から、血の気が引いた。
すうっ、と体が冷たくなっていく。
俺は、ぎゅっと片方の手で拳を作った。
…そうでもしないと、崩れ落ちてしまいそうだったから。
「そ、っか…。よかったな、綺流社。」
「うん!」
現実は、苦い。
そんなの、とっくの昔に知っている。
その日は、教師の授業なんて一切耳に入ってこなかった。
―昼は、屋上で食べよう。
俺は窓から青空を見つめてそう思った。
キーンコーンカーンコーン…
チャイムが鳴ると同時に、俺は弁当の包みを持って屋上へと向かう。
少し汚れた、クリーム色の階段を駆けあがって、屋上の真ん中で青空を見上げた。
「綺麗だ…。」
思わず呟くと、不意に後ろから「くすくす」と笑う声が聞こえた。
驚いて振り返ると、綺流社によく似た女の子がドアに凭れてこちらを眺めていた。
「…っ!」
俺は、驚いてまじまじと彼女を眺めてしまう。
「…あ、ごめんね。驚かせたよね。」
彼女はそう言って俺の隣に並ぶ。
「私は、綺莉香っていうの。…貴方は?」
澄んだ、淡いブルーがかった瞳に見つめられて戸惑う。
「え…と…正世…です。」
彼女は微笑んで
「そっか。正世くんも、空が好きなの?」
唐突に聞かれた。
俺は少しの間考えてから頷く。
「はい。」
「敬語じゃなくていいよ。あ、私は綺莉香って呼んで?正世くん。」
「はい…じゃなかった。うん。」
綺莉香はにこにこして
「私と同じだね。よければ、お昼一緒に食べない?無理強いはしないけれど。」
「…うん。」
綺莉香はすとん、と腰を下ろす。
俺も、隣に座ってお互いなんとなく食べ始めた。
「…正世くんはさ」
不意に綺莉香が話す。
「一体何に悩んでいるの?」
俺は驚いて
「…なんで解るの?」
綺莉香は「うーん」と考えて
「屋上に来る子はね、大体が悩んでいるの。みんな悩んでて、この青い空を眺めに来るんだ。
…自分で答えを見つけて、それで帰るの。もといた場所に。」
綺莉香は寂しそうに笑って
「…でもね?何故だか私だけ答えが見つからないんだ。
私の時は、止まったままだから。」
綺莉香はぽつりと話しだす。
「…私、大好きな彼を一度だけ付き離しちゃったことがあってね?彼、傷ついて笑えなくなっちゃったんだ。
…大好きだったのに。信じてあげられなかった。」
綺莉香の綺麗な瞳から、透明な涙が溢れる。
「『ごめんね。』って言ったけど、彼には届かなかった。
…当然だよね。彼の心はボロボロだったのに、私は彼の心をさらに傷つけちゃったんだもん。
それから、彼は笑えなくなっちゃった。
…私のせいだね。」
綺莉香が自嘲気味に笑う。
「信じることだけが、正しい訳じゃないだろ。」
気付いたら、俺は綺莉香を抱きしめながら言っていた。
「…信じることだけが、愛じゃない。肯定するだけが、正しい訳じゃない。
本当に正しい事なんて、本当はないと思うし。
…だから」
俺は綺莉香を抱きしめる力を強くする。
「綺莉香は何も、間違ってない。」
綺莉香は子供みたいに声をあげて泣いた。
ごめんね、ごめんね。って、何度も何度も言いながら。
綺莉香の泣き声が、澄んでいる青空に吸い込まれて消えていく。
綺莉香を抱きしめながら、俺の中で何かが変わる音がした―
綺莉香と一緒にお弁当を食べて、くだらない話をして、約束をした。
『また明日も来る』っていう約束。
俺たちは二人で手を繋いで屋上の階段を降りる。
―もう二度と、綺流社が俺の事を見てくれなくても。振り向いて貰えなくても。
俺は左手に優しい温もりを感じながら思う。
俺は、彼女を、彼女の心を守りたいから。
「…正世。」
綺莉香が恥ずかしそうに、俺の名前を呼ぶ。
「…なに?」
綺莉香は微笑んで言った。
「…この先、もしも貴方が傷ついた時や悲しいときは」
綺莉香が俺の手をぎゅっ、と握る。
「その時は、私が貴方の傍に居る。」
涙でくしゃくしゃの綺莉香の顔をみて、愛おしいと思った。
「…俺も」
俺は綺莉香を見て、思い切り笑った。
「「絶対に、守ってみせる。」」
…綺流社。俺はようやく、前に進めそうだよ。
綺流社。
俺は、これからも君が幸せであり続けることを、心から願おう。
君も、綺莉香も、幸せでありますように。
クソ長くてごめんね。Мanaryちゃん。
しかも、駄文でごめんー(涙)
…なぜ後書きは短いのだ?
最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました!
というか、展開強引過ぎだよ…
いつか消して、また書きなおす可能性大です。
ご理解とご協力、お願いいたします。




