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脱走ゴーレムは働きたくない!  作者: 173号機


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第1話 脱走のゴーレム

 僕は今、封印用の球状結界に閉じ込めていられている。ダンジョンから脱走しようとして失敗したからだ。


「あのご主人様たち(クソ野郎ども)、こんな時だけ本気出しやがって……」


 ああ、愚痴が止まらない。

 親友のリリカ7号に裏切られ、脱走計画をチクられた瞬間に全力で逃げ出したけど、片っ端から出入口を封鎖されてダンジョン中を逃げ回る羽目になった。

 結果、半月に及んだ壮絶な追いかけっこは、ご主人様、つまりこのダンジョンの主たち(・・)が、いつぶりかの本気出して幕を閉じることとなった。

 けど僕は諦めてない。

 今もなおご主人様の片方、自称世界一可愛い草人少年のアドイード様が容赦なく重ねがけしまくる思想を植え付(危険極)ける効果付きの(まりない)封印結界を無効化し続けている。


「外なんて行っても良いことないぞ! 外の世界は過酷なんだ! か弱いお前じゃ耐えれない!」


 近付いたり遠ざかったりする結界の際でもう片方のご主人様、自称世界一イケメンのアルファド様がやいやい騒いでいる。


「そだよ! もっと近くでお話ししよ! わかり合うって大事だよ!」


 アドイード様も(わめ)いてるけど、自分で張った結界に阻まれてるなんてお笑い草だ。「お話し」なんて言ってても、本当は凄惨なお仕置きをするつもりに違いない。

 それにわかり合うだって? 今さら何言ってんだ。

 やがて無意味にもかかわらずアルファド様が結界をバシバシ叩き始めた。ぜ~んぶ無視して、僕は結界の無効化作業に集中する。

 結界の根元たるアドイード様の描く複雑怪奇で理解不能なロジックと世界のバグをついた奇跡の魔法陣も、連結中(・・・)の今なら同じ速度かやや速めに無効化できる。


「お前は世界で二番目にイケメンのルトルにも、世界で二番目に可愛い少年のコルキスにもそっくりなんだ! 中間の姿になれないのに外なんか行ったら厄介事に巻き込まれるに決まってる!」

「そだよ! ルトリュくんってば底意地の悪い大悪党なんだよ? 良いことないよ!」


 何を言われたって僕の決意は変わらないし騙されない。僕の固有スキルがあれば外に行っても上手くやっていけるんだから。

 だいたい、出て行かれて困るなら、普段からもっと僕のお願いを聞いてくれてたらよかったんだよ。ダンジョンの管理はちゃんと自分たちでしてくださいっていうお願いをさ!


「ん? おい、ルトルを悪く言うなよ。アイツはここ数十年誰かさんに変な思想を植え付けられてちょっと情緒不安定な(メンヘラってる)だけだ」

「ふぇ? そかな~? ありぇが性根だと思うよ?」


 お二人の話題が妙な方へ逸れた。あれほど執拗だった結界の重ねがけもプツッと途切れる。

 こういうすぐに気が散るところも好きじゃなかったけど今は助かる。この隙にいっそう作業を速めてやんよ。


「あとはこの文字列をこうして――よし!!」


 最後の魔法陣を無効化した途端、結界がスッと消えた。すかさず飛んできたぶっ飛びポーションを額で受け止め、瓶の破片とごと液体を浴びる。

 ゴーレムの僕に効き目があるか心配だったけど、僕と同じくお二人に不満を溜め込んでいたクインさんが投げてくれた特製のポーションは効果覿面(てきめん)だった。


「はっ、しまった! だ、駄目だ! 行かないでくれイコルアーーーー!!」

「そだよ~、お願いだよぉぉぉ~!!」


 去り際、チラッと見えたお二人の泣き顔にちょっとばかし罪悪感を覚えた。けど、そんなものは今後二度とお二人の代わりをしなくていい喜びの前には些細なことだった。


 ◇


「ふぅ……ひとまず脱走成功、かな」


 植物が疎らに生えた大きな岩山の頂上付近にぶっ飛ばされたらしい僕は、どさっと仰向けに倒れる。

 空を見ながら、ややひんやりとした風を感じながら空気を目一杯吸い込む。何度も何度も。

 ヒト種そっくりとはいえ僕はゴーレム。肺なんて無いし呼吸も必要ない。だけど、無性にそうしたくなったんだ。

 目の前に広がる空はダンジョンのそれと同じに見えるのに、決定的に何かが違っていた。見ているだけで自由が身体中に染み込んでいくような気になる。


「これが外か……」


 体を起こし、改めて景色を見る。

 雲の切れ目から裾野に差し込む無数の陽光が、刻々と変化していく様はとても幻想的だ。

 あぁ、なんて美しいんだろう。


「さて、と」


 ひとしきり自由を噛み締めてから、ここがどこなのか調べるために目視できる範囲を解析して手がかりを探る。

 ふんふん、少し離れた場所に大きめの町があるな。お、下の方には整備された山道もあるじゃん。いくつか馬車も通ってるし、馬で駆けてる人もチラホラいる。案外、近くに人里が多いのかも。

 他に手がかりは……なさそうだね。 

 仕方がないからステータスを確認しよう。現在地はわからなくても、ご主人様たち(アイツら)からどれくらい離れてるかだけは知っておきたいもん。


 ---------

【基礎項目】

〖名前〗イコルア・アトゥロミカ・ロシティヌア

〖種族〗ルトル=コルキス型アルコルトルアゴーレム

〖性別〗男

〖職業〗無し

〖誕生〗フェグナリア歴1571937年

〖コア情報〗秘匿済(以後非表示)

〖通常ドロップ〗消失済(以後再設定されるまで非表示)

〖レアドロップ〗消失済(以後再設定されるまで非表示)

【能力値】

〖レベル〗無し  〖属 性〗無し 〖改造歴〗無し

〖体 力〗1000000〖攻撃力〗190000〖防御力〗900000

〖素早さ〗2200000〖精神力〗300000〖魔 力〗500000 

【魔法一覧】

〖下級〗-〖中級〗-〖上級〗-〖特級〗-〖魔神〗-

【標準装備一覧】

 解析装置:視覚情報をしっかり解析

 自己修復装置:魔力を消費してボディ等を修復

 亡国発生装置:大変なことになる装置

 アイギス機構:究極の嫌がらせ

 魔核彫刻機構:魔核を自由に彫刻

 魔核燃料機構:魔核を燃料にして自己強化

 魔核魔法機構:魔核を魔法陣化してドンッ

 オートバリア機構:適切なタイミングで勝手にバリア

 ルトルとコルキス:2種類のボディフレームを切り換え可

 スピリットデコイズ:便利機能付き囮コア

 廃棄物等こねこね機:廃棄物などをこねこね

 アルコルトルア式孵卵機:無駄に格好良い孵化装置

 不滅のアルコルトルア管理マニュアル:隠し情報満載

【スキル一覧】

〖固有〗

 強制連結:精神力を使い任意のものと強引に連結

 フォグミストヘイズ:魔力を使い任意のものを霧化

〖習得〗

 オッドダンス:風変わりに踊る

 ピキュリアソング:風変わりに歌う

 フレンズマージΩ:使用禁止

〖連結〗

 エッグドリーム:くそアルファドのあれ

 リバイブフォレスト:ぼけアドイードのあれ

 パペットパラダイス:おっかないクインさんのあれ

 グラトニーフィールド:理不尽グルフナのあれ

 リリカいっきま~す!:裏切り者(トレイター)リリカ7号のあれ

 他多数

【連結対象】

 〖アルファド=アドイード〗〖グルフナ〗

 〖クインさん〗〖リリカ7号〗

  他、不滅のアルコルトルアに棲まうもの5体

【状態&履歴】

 ▼オールクリア

 ▼ボディフレーム:ルトル・アトゥール

 ▼不滅のアルコルトルア管理者だったもの

 ▼今はただの野良魔物

 ▼ヒト種にとっては討伐対象

 ----------


 おお! 

 魔力がたったの50万に減ってる。てことはけっこう離れてるな。たぶん大陸3つ分くらい。

 これなら居場所がバレない限り見付かることはなさそう。

 よしよし。それじゃあ離れ具合もわかったし、さっさとご主人様たちとの連結を解除しよう……ほいっと。


「くぅぅぅぅ!!!」


 やった!

 これでもう完全にアルコルトルアとは関係ない自由なゴーレム! 無職のゴーレム!! もう二度と働くもんか!!!


「うぉぉぉぉぉ! なんだかとってもワクワクしてきたぞ~!」

 

 気付けば僕は走り出していた。

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