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二本のワンド


「ようこそ! お待ちしておりました」


「魔女のおうち」のオーナーミントとの不思議な一期一会から1週間…


はじめはあんなにも違和感を感じた来客への挨拶をなんの抵抗もなく口にしている


それもそのはず


なぜならここは不思議な客人しか訪れない


(えにし)のないひとは来られないわ…」


ミントの言葉通り、店が客人を選ぶので滅多に人間はここを見つけられない


「ママ、すごい♪すっかり慣れたね」


左肩でぽっぽが愛らしく頭をスリスリしてくる


ずっとずっと昔からこの子は私を慕ってくれるぽっぽ


ぼんやりした記憶のなか


森の奥で木から落ちてケガをしていた鳩の雛を拾った私は家に連れ帰り姉に獣医の姉に手当をしてもらい


看病しながらご飯を食べさせすっかり回復したは雛はじいっと私を見上げながら言葉をかけた


『ママ…ママ…助けてくれてありがぽぉ』


「まあ、あなた、言葉が喋れるの!」


『わからない…でもね、ママが毎晩看病してくれて話しかけてくれていたら覚えたの。ママ、私はここにいてもいいの?』


不安そうに黒い瞳で見つめるこの子を拒む理由など微塵もなかった私はそっと彼女の頭を撫でて即答した



「もちろんよ! お名前をつけなくちゃね、う~ん…鳩さんだから…ぽっぽ、ぽっぽちゃんってどう?」



『私はぽっぽちゃん♪嬉しい、嬉しい、素敵なお名前、ありがぽぉ。ママ、大好き!』


『ぽっぽちゃん、ママを守っていくよ、ずっとずっと』


それがぽっぽの口癖だった


そのあと何があったのかは思い出せない


けれど彼女は私を待って待って、おそらくは気の遠くなるほどの時を耐えて待ち続けてくれていた



そうしてようやっと「魔女のおうち」で再会できたのだ



1人暮らしの私は家族に誰に気疲れすることもなくぽっぽと楽しく暮らしている


まるで離れていた時間を埋めるように私たちは四六時中寄り添っている




「モモちゃん、モモちゃん…」


「モモちゃん!」


常連さんの魔女マリーさんの声で我に返る


「す、すみません、ぼぉーっとしてて…マリーさん、どうされました?」



「これとこれ、どちらのワンドが合ってるかしら?」


腰まである艶やかな黒髪を後ろに束ねた魔女マリーさんは離れ気味の猫のような瞳で悩んでいる


「困ったことにどちらもしっくりくるのよね…このモルガナイト…なかなか決められなくて困ったわ」



「ママ…瞳を閉じてみて」


ぽっぽの羽根がふんわりと閉じた瞼に優しく触れる


「いいよ、目を開けてみて」



不思議なことに


マリーさんの手に持っているワンドが双方ともに強く彼女のもとに行きたがっているのを感じる


『私たちは同じ原石から作られた姉妹です』


『お願いです、姉さまと離さないでください』


姉妹の原石…


困った…聞こえてしまったからには離れ離れにできないな



考えあぐねている私の耳元にミントの声が囁いた



「二本差し上げて…」


振り返るとミントはレジにいてウインクしている



気のせいじゃない…今のは…テレパス?


「そうよ…あなたの感じたままに…一本はサービスして」



「マリーさん、このローズクオーツは元々同じ原石の姉妹でとても仲がいいんです。


サービス致しますので両方迎えてあげてくださいませんか?」



マリーは瞳を輝かせて満面の笑顔を見せる


「そういえば、モルガナイトは姉妹愛の石だったわね! いいわ、でも料金は二本分お払いするわ。仲のいい姉妹ならばなおのこと…」



「その必要はありません…その子たちはふたりでひとつなので…」


ミントのひと言にマリーさんはコクリと頷くと


「わかったわ、あなたがそう言うのなら…ではこちらのマグカップを頂くわ」


「ありがとうございます」


とびきり優しい微笑みでミントはハーブティーをサービスしてマリーを送り出す


『妹と迎えてくださって嬉しい、ありがとうございます』


『ありがとう、姉さまと一緒にいられる』


マリーさんの手に持たれた二本のワンドはやわらかなピンク色のオーラで嬉しそうに彼女を包み込んで守っているのが見えた


姉妹の絆…


離れ離れになることがどれほどの苦しみか


そう、誰よりもわかっている


よかったね、ローズクオーツさん…


「ママ? ママ、大丈夫?」


気付くと瞳から涙が溢れて頬を伝っていた


一人っ子の私に姉妹はいないはずなのになんだか胸が締め付けられる


「ぽっぽちゃんがいるよ、ママ、ママ…」


心配そうにやわらかな羽根で涙を拭ってくれる優しいぽっぽに愛しさを感じハッと我に返った


「不思議なことばかり…でしょ? そのうち慣れるわ…」


「すみません、なんか情緒不安定みたいになって…」


「この石を並べておいて…」


私の言葉を聞いていない、という風にミントは入荷したパワーストーンの段ボールをすんなりと華奢な人差し指で指すと店の奥へと入って行った


無口だけれど何処か暖かく秘めやかな声に背を押されて私は棚にパワーストーンを並べていった























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