出会い
霧が出ると現れる住宅街にひっそり佇む小さなお店
ミステリアスな魅力の美女、ミントが経営するそのお店はどこか現実離れした雑貨屋だった
21歳のモモはショーウインドウにいた小さな鳩のぬいぐるみに魅せられお店に入ってしまうが
作者が気まぐれに思いついた長編ですので結末はまったくの未定です
霧が出ると現れる 住宅街に紛れて佇む小さなお店
瞳に優しいアクアマリンの屋根と可憐なローズクオーツ色の壁に呼び鈴がついた小さなドアの前に立てかけられた「welcome」の看板
ショーウインドウにはドライハーブのリースやクリスタルのワンド
ふわふわしてそうな愛らしいベイビーピンクの鳩のぬいぐるみが「見つけてくれてありがとう」と言っているように 訪れた客人を見つめている
招き猫ならぬ招き鳩のように
どこか懐かしいような…まるで自分だけの秘密基地を見つけてしまったような…子供の頃のドキドキワクワクする好奇心に駆られて ついついドアを押してしまう
雑貨やパワーストーン スピリチュアルに興味があれば見逃さない外観なのに
SNSにも上がらず 何故か人に知られていない
それもそのはず この店は
訪れる客人を店主が選んでいるのだから
カランカラン♪
耳心地いいベルの音が選ばれし来訪者を告げるとカウンターで上品に微笑むアメシスト色の瞳の女性が声をかけてくる
ふんわりウェーブがかったブロンドの長い髪が彼女が歩くたびに花の香を漂わせた
「ようこそ! お待ちしておりました」
え…
初めて来たのに なに…言ってるんだろう このひと
不思議な挨拶に瞳をパチクリさせながらキョトンするモモに「魔女のおうち」のオーナー、ミントはくすりと笑う
「どうして?って不思議顔ね…驚かせてごめんなさい でもね…あなたがここに来たのは運命だから」
「はぁ? あの、私、たまたま通りかかって…その…ショーウインドウの鳩が可愛かったから…その、気になって…」
ちょ、何言い訳してるのよ、私…
そーゆー問題じゃないでしょ。いやいや、いきなり来たひと捕まえてわけわかんないこと言ってる時点でヤバいって…
綺麗なひとだけど…瞳が紫がかってるし…日本人じゃないよね?
160くらい…かな… 手足もすんなりして…華奢な指先が動くたびに優雅なメロディが聞こえてきそうな…
襟元にレースをあしらった黒いワンピースがドレスみたい…なんてよく似合うんだろう
まるで魔法の国から来た異空間のひとみたい…
無意識にミントをガン見しているのに気づかないモモはつぎにミントが発した言葉に我に返った
「イギリス人がそんなに珍しい? 」
「あ、ご、ごめんなさいっ、あんまり綺麗でつい…」
ばかばかばか!
またまた何言ってんのよ…
と、とにかく帰らなくっちゃ…
汗って謝るモモにミントは温かいショコラを出してくれた
「どうぞ」
甘いカカオの香りにほっとする
「ありがとう…いただきます」
コク…
あ… なんだろう…この味 どこか懐かしいような
それでいて心に染み入る
あれ…
気付かないうちに涙がつぅーと頬を伝っている
「大丈夫?」
ふんわりと優しい肌触りのハンカチでミントが涙を拭ってくれる
桜模様のレースが愛らしい
「ごめんなさい…私…」
「よろしければ差し上げるわ…」
にっこり微笑む彼女をまじまじと見つめてしまう
「大丈夫?」
左肩から聞こえる可憐な声にふと目線をやると
ショーウインドウでこちらを見つめていたふわふわの鳩のぬいぐるみがいつの間にか肩にチョコンととまって黒曜石のように美しい瞳で心配そうに見上げている
え…え…ええ~!!!
ぬ、ぬ、ぬいぐるみが喋ってる???
「驚かせてはダメよ…ぽっぽ」
「ごめんなさい…」
申し訳なさそうに謝りながら羽根を広げて飛び立とうとする鳩のぽっぽを慌てて呼び止めた
「いいのよ、ちょっと驚いただけ…ここにいて。あなた、優しいのね…」
ぽっぽは私の言葉ににっこり微笑えむとまぁるいふわふわした頭をすりすりしてくる
き…気持ちいい…!! なんて、なんてふわふわなんだろう
「この子はあなたを待っていたのよ」
「私を?」
「そう…もうずっと永いこと…だから目が合ったでしょう?」
ミントの言葉に何故か胸がズキリと痛み私はそっと甘えているぽっぽを撫ぜた
ああ…そうだわ…私はこの子を知っているんだ
もうずっと昔から
次の瞬間 自分でも信じられない言葉が口をついて出ていた
「あの…ミントさん…」
「なぁに?」
「お願いです、私をここで働かせてください!」
※
「いいわ」
ミントは数秒ほどモモを見つめて即答した
「よかった、ありがとうございます!」
ふふふ
「お礼は不要…あなた、ここに来るべきして来ただけだから」
え…?
バサバサバサ
ぬいぐるみのぽっぽは嬉しそうに両翼を羽ばたかせて私の頬にぐりぐりと頭をこすりつけてきた
可愛い…
なんだろう この暖かいような懐かしいような なんとも言えない不思議な感覚って
だけどこの子と離れたくない
『そうだよ、きみは待っていたんだからね…』
えっ
い、今の声はいったい…
キョロキョロあたりを見渡す私をミントは不気味がらずに優しい眼差しを向けて微笑んだ
「いろいろ不思議な体験をすることになるわよ…まあ慣れると思うけど」
妖艶に微笑むミントは同性の私が我を忘れて食い入るように見つめてしまうほど美しかった
綺麗…ううんうん、この人の美しさは神秘的で 綺麗、のひと言じゃ表現しきれない
「ありがとう…明日の朝、9時にいらっしゃい」
そうだった、開店と閉店時間を聞かなくちゃ
「お店を閉めるのはその日によってお昼に閉めることもあれば夜の10時に閉めることもあるから…
そうね…」
ミントは長い睫毛を伏せ言葉を発する
「とりあえず…初日は9時から夕方の16時ってところかしら」
5時間勤務か…
「曜日はあなたの好きなように…きっと毎日、ここに来たくなるでしょうけれど…まずはふたを開けてみないとね…」
そう…私がミントさんに惹かれるのは妖艶な容姿は勿論のこと優雅な立ち居振る舞いとあまりにも耳心地のいいハスキーヴォイスだ
かすれているのではなく上品でクールでどこか艶っぽい声は彼女のミステリアスな雰囲気とマッチしている
「ママ、ママ、よかった。一緒に帰ろう」
え…ママ?
可憐に小首を傾げるぽっぽの頭を撫でながらミントを見ると
「その子はあなたの子よ…大丈夫、特別な餌は不要なの、あなたと同じモノを美味しく感じるし、何より一番のご馳走は愛情よ」
愛…情?
「え、え、それって…あの、でもお水とか寝るところとか…その、鳥かごとか用意しないと?」
ミントはブンブンとゆっくり首を横に振る
「一緒のベットで寝て平気よ…大丈夫、寝相が悪くてもつぶれたりはしないから」
「ママ、安心して、ぽっぽちゃん、ママが眠りながらのっかってもつぶされないの♪くるるるる」
「それって…その…ぬいちゃんの身体…だからなの?」
次の瞬間、私は自分で出した言葉にひどく戸惑った
ふんわりとやわらかなベイビーピンクの羽根は…いつの間にか本物の鳩の羽根に…いや、まるで絵本に出てくる精霊のように美しい姿のぽっぽが私の左肩でじいっと見つめている
この子は…
「その子はあなた以外には見えないわ…そうだ、忘れるところだった…」
ミントは金色のベルベットのジュエリーボックスからキラキラと煌めく小さなダイヤがアーム一面に散りばめられた華奢な金のリングを取り出すと私の右手の中指にするりとはめて微笑んだ
「返さなくちゃね…あなたのモノだから」
ええっ!
「で、でで、でもっ、こんな高価な指輪が?? ダイヤ…と金の…返すって??」
「しつこいひとね…私のモノじゃないから持ち主に返しただけよ…じゃあ、明日からよろしく…」
だって、何言ってるの、このひと、どう見たってこの輝き、上質なダイヤモンドって宝石に詳しくない私にもわかるのに…
次の言葉を出そうとした瞬間
私は店の外に立っていた
えっ
キョロキョロ
つい、さっきまで店内にいたはず…なのに…なに、これ~!! 嘘、夢でもみてる?
「くるる、ママ、おうちに帰ろう」
肩にいるぽっぽのあたたかなぬくもりと可憐な声に夢ではなく現実なのだと自覚するしかなく
私はぼんやりした頭で自宅へと帰って行った
EP1を読んでくださりありがとうございます
思いついた刹那にキィと戯れますのでEP2で再びお目にかかれますように




