表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
79/79

第8話「君が教えてくれた、愛のかたち」


九月。


夏の暑さも少しずつ和らぎ始め、朝晩には秋の気配を感じるようになってきた頃。


神谷家の朝は、今日も賑やかだった。


「パパー! 靴下が片方ないー!」


「僕の帽子どこー?」


リビングから聞こえてくる双子の声に、悠真は苦笑しながら立ち上がる。


「はいはい、靴下はソファの下。帽子は昨日、遥香が絵本の棚に置いてただろ?」


「ほんとだ!」


「パパすごい!」


「毎日探してるからな」


その様子をキッチンから見ていた美紅は、思わず笑みを浮かべた。


「悠真くん、本当に子どもたちのことよく見てるよね」


「毎日一緒にいるからな」


「私より詳しいかも」


「それはないだろ」


「あるよ」


瑞稀もコーヒーを飲みながら頷く。


「悠真は完全にスーパーイクメンだね」


「姉貴まで」


「事実でしょ」


朝食を終えた後、双子を保育園へ送り出した悠真は会社へ、美紅は芸能事務所へ向かった。


今日、美紅には大切な仕事が入っていた。


それは――。


テレビ局制作のドキュメンタリー番組への出演だった。


番組タイトルは、


『仕事と家族――私が歩んだ人生』


芸能活動、結婚、出産、育児、そして復帰。


そのすべてを振り返る特集だった。


◇◇◇


都内のテレビ局。


楽屋でメイクを受けながら、美紅は少し緊張した表情を浮かべていた。


「珍しいね」


隣でスケジュールを確認していた瑞稀が言う。


「うん。なんか、インタビューって演技より緊張する」


「今日は全部本音で話せばいいんじゃない?」


「そうだね」


スタッフが楽屋を訪れる。


「篠原さん、そろそろスタジオへお願いします」


「はい」


収録スタジオ。


照明が落ち、収録が始まる。


司会を務めるベテランアナウンサーが穏やかに語りかけた。


「今日は、女優・モデルとして第一線で活躍し続ける篠原美紅さんにお越しいただきました」


拍手。


「よろしくお願いします」


「よろしくお願いいたします」


最初の話題はデビュー当時。


若くしてモデルとして活躍し始めた頃の話。


次に、人気絶頂期の仕事について。


そして――。


話題は結婚へと移った。


「篠原さんといえば、『交際0日婚』が大きな話題になりました」


「はい」


「率直にお聞きします。本当に迷いはなかったんですか?」


美紅は少しだけ考えた。


そして静かに答える。


「迷いはありました」


スタジオが静まり返る。


「正直、不安もたくさんありました」


「ですが、それ以上に――」


美紅は優しく微笑んだ。


「この人となら、一緒に人生を歩いていけると思えたんです」


「ご主人のどんなところに惹かれたのでしょうか?」


「全部です」


スタジオから笑いが起こる。


「本当に?」


「はい」


「優しいところも、真面目なところも、不器用なところも」


「そして」


「家族を何より大切にするところです」


モニターには、家族写真が映し出される。


悠真と美紅。


大翔と遥香。


そして瑞稀。


笑顔あふれる写真だった。


◇◇◇


一方、その頃。


会社の休憩室。


悠真は同僚たちと昼食を取っていた。


「神谷くん」


後輩社員がスマートフォンを見せる。


「奥さん、テレビ出てますよ」


「本当だ」


そこには収録の告知映像が映っていた。


「神谷さん、絶対見るんでしょ?」


「当然」


「愛妻家ですね」


「まあな」


周囲は笑った。


その後。


会社の会議を終えた悠真は、急いで帰宅した。


どうしても放送をリアルタイムで見たかったからだ。


◇◇◇


夜。


神谷家のリビング。


大翔と遥香もソファに座っている。


「ママ、テレビ出るの?」


「出るよ」


「すごーい!」


「ママ頑張って!」


そして、放送が始まった。


番組では、仕事現場だけでなく、神谷家の日常風景も紹介された。


休日に公園で遊ぶ家族。


一緒に料理をする姿。


子どもたちと笑い合う様子。


そして。


インタビュー映像。


「家族とは?」


という質問に、美紅はこう答えた。


「帰る場所です」


「仕事で辛いことがあっても、家に帰ればみんながいる」


「それだけで、また頑張ろうって思えるんです」


「そして、夫は――」


美紅は少し照れながら笑った。


「人生で一番大切な人です」


リビングは静まり返った。


「ママ、パパのこと大好きなんだね!」


遥香が無邪気に言う。


「そうだよ」


美紅は笑った。


「僕もパパとママ大好き」


大翔も嬉しそうだった。


放送終了後。


スマートフォンには大量の反響が届いていた。


SNSでは、


『理想の夫婦』


『素敵な家族』


『見ていて泣いた』


『応援したくなる』


そんなコメントで溢れていた。


「すごい反響だね」


瑞稀が驚く。


「うん」


美紅は頷いた。


「でも、一番嬉しかったのは――」


「ん?」


「家族と一緒に見られたことかな」


悠真は優しく笑う。


「俺も」


その夜。


子どもたちが寝静まった後。


ベランダで夜風に当たりながら、美紅は呟いた。


「ねぇ、悠真くん」


「ん?」


「私ね、あなたと結婚して本当に良かった」


「急だな」


「テレビで昔を振り返ってたら、改めてそう思ったの」


悠真は少し照れながら笑った。


「俺もだよ」


「うん」


「美紅さんがいてくれて良かった」


二人は静かに寄り添う。


出会った頃。


結婚した頃。


子どもが生まれた頃。


たくさんの時間を一緒に歩いてきた。


そのすべてが今の幸せへ繋がっている。


君が教えてくれた、愛のかたち。


それは――。


家族と共に歩み、支え合い、笑い合うことだった。


夜空には、優しい月が静かに輝いていた。   



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

もしこの物語に少しでも「面白い!」と感じていただけたなら——


ブックマーク & 評価★5 をぜひお願いします!


その一つひとつが、次の章を書き進める力になります。

読者の皆さまの応援が、物語の未来を動かします。


「続きが気になる!」と思った方は、ぜひ、見逃さないようブックマークを!

皆さまの応援がある限り、次の物語はまだまだ紡がれていきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ