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第303話 拠点のみんなで夕食会


 「おめでとー!!」

 「お、おめでとうございます……」


 舞っている。

 ただただ舞っている。

 ひらひらと揺らめく……紙吹雪が。


 「あ、ありがとう……」


 ルナとゼオが紙吹雪を掴んでは投げ、掴んでは投げている。

 その様子を、俺は玄関先で苦笑いを浮かべながらただ眺めていた。

 レティナとの仲直りを祝して、わざわざ用紙してくれたのだ。

 もちろん嬉しくないわけではない。

 だが、これもすでに三週目ともなると、さすがにどう反応すればいいのか分からなくなってくる。


 「ゼオ、次の持ってきて!」

 「ま、まだあるの!?」

 「うん! あと二つもあるよ!」


 空になった大きなバケツが三つ。

 紙吹雪が積もりに積もって、もう俺の足場は無いに等しい。

 『もうよくない……? お姉ちゃん……』 そんな表情をしているゼオ。

 俺もそうは思うが、スイッチの入ったルナは止められないと悟っているのだろう。

 いつもよりも増して小さく見えるゼオの背中に、俺はただただ尊敬の眼差しで見送る。

 すると、


 「おい、ルナ。もう食っちまっていいか?」


 まるで助け舟を出すように、カルロスがダイニングから顔を出した。


 「なんで! もう少しで終わるんだから、それまで待っててよ」

 「もう三十分はやってんだろ。腹減った、待てん」

 「うぅ~……じゃあ、レオン。これでおしまいでいい?」

 「いい! 全然いい! すごく感動した!」

 「ふふ~ん」


 ルナは満足そうに胸を張る。

 対するゼオはカルロスの手を取り、感謝を伝えるようにぶんぶん振っていた。


 今、ルナが背後を振り向けば……


 誰も傷つかない世界を作るために、俺は少し大きめな声を出して、ルナの手を取る。


 「ありがとう、二人とも。じゃあ、行こうか」


 声に反応したゼオは、少し慌てながらダイニングの中へと入って行った。


 危ない危ない、これでこの世界は守られたな。


 ご機嫌なルナと共に、そのままダイニングへと足を運ぶ。

 すると、とてもいい香りが鼻腔を掠めて、つい腹の虫がなった。


 「えへへ、ちょっと待っててね」


 そう言って、キッチンに向かうルナ。

 料理が冷めないように配慮してくれたのだろう。

 まだテーブルの上には一品の料理も置かれていない。


 「ルナ、俺も手伝うよ」

 「レオンは座ってて! 今日の主役なんだから! クロエちゃん、料理持って行って」

 「あいあい」


 軽く返事をしたクロエは立ち上がり、ルナの元に向かう。

 主役と言われたからには、黙って席についておくか。

 慣れ親しんだ固定席にゆっくりと腰かける。

 そして、見慣れたメンツに視線を移した。


 「なんだか懐かしいな、この光景」

 「出て行ってまだ半年も経っちゃいねぇだろ」

 「まぁ、そうなんだけどさ」


 この拠点はもはや実家のようなものだ。

 たかが数か月と言っても、少し離れればこんな感覚になるのも仕方のない話である。


 「ごしゅじん、今日はレティナねーねいない?」

 「うん、ギルドの依頼で数日は帰ってこないって」

 「シャルも?」

 「シャルは明日には帰ってくるかな」

 「じゃあ、今日は泊まり?」

 「あ~」


 たしかに家に帰っても、ひとりぼっちで暇だ。

 明日は予定もないし、それもありか。


 「じゃあ、泊まろうかな。夜通し語り明かそうって約束したもんね」

 「~~~っ。把握した!」


 そこまで話が盛り上がるかは別として、こんな嬉しそうな顔してくれるのは素直に嬉しいな。


 「ミリカ、ちゃんと節度を持った行動をするのよ?」

 「……善処する」

 「ミリカ~?」

 「ミ、ミリカも手伝ってくる!」


 マリーから逃れるように席を立つミリカ。

 何か企んでいるのだろうか?

 一応気を付けておくか。


 そんなこんなでルナが作ってくれた料理が全てテーブルの上に並んだ。

 今夜のメインはシチューにチキングリルだ。

 もう見た目だけで、よだれが垂れてきそうになってしまう。


 「いただきます」


 丹精込めて作ってくれた料理を堪能しながら、他愛のない話に花を咲かせる。

 最近あった出来事や休日の過ごし方など、気軽な日常会話だ。


 「ねぇねぇ、ずっと気になってたことがあるんだけど、聞いてもいい?」


 そんな会話の中、ルナは何気ない様子でマリーに視線を向けた。


 「ん? 何かしら?」

 「マリーちゃんってレオンのこと好きだよね?」

 「っ!?」


 唐突すぎる質問に、マリーではなく俺の方が思わずむせてしまう。


 い、いきなり何を言い出すんだ!?


 ルナの顔を見るが、本当に何を考えているのか分からない。

 もはや何も考えてなさそうな表情である。


 「えぇ、好きよ?」

 「ごほっごほっ」

 「レオンちゃん、大丈夫?」

 「だ、大丈夫……」


 大切な仲間という意味での好きなのだろう。

 だが、あまりにも平常心ではっきりした返答に、二度目の咳がこみ上げてしまった。


 「その好きってどんな好きなの? レティナちゃんと同じ?」

 「ん~、ちょっと違うわね。仲間として、恩人として、男の子として、全部がぎゅっと詰まった好きよ」

 「男の子としても好きなの?」

 「もちろん、私の世界を変えてくれた人だから。レオンちゃんみたいな人になりたいって、あの時からずっと思ってるわ」


 すっっっっっごい恥ずかしいんだが?

 こういう照れる話は、俺のいない場所で話してくれ。

 いや、まぁ、聞けて嬉しいけども。


 「へ~、独り占めしたいっていう好きとちょっと違うんだ?」

 「そうね。私は昔からレオンちゃんとレティナっ……二人の幸せを応援してるから」


 ……?

 なんか今、一瞬暗い表情を見せなかったか?


 「つまりだ、レオンに頭を撫でられたいのも男として──「殺すわよ、カルロス」」


 うん、完全に気のせいだな、これ。


 マリーはカルロスをものすごい形相で睨んでいる。

 頭をなでられる、それは多くの人が子供のころに、一度は経験するごくありふれた行為だ。

 だが、一部例外がある。

 その例外とは、愛情のない親の元で育った子供の場合だ。

 彼女はまさにその例外の元で生まれ育った。

 だからこそ、時々無性に褒めてほしいと感じる瞬間があるのだろう。


 それにしても、俺みたいな人になりたいか……なんかくすぐったいな。


 「じゃあ、マリーちゃん。カルロスは?」

 「はっ?」

 「はっ?」


 二人同時にルナの言葉に反応する。

 もはやここまでくると、逆に最高のパートナーなのではないだろうか?


 「カルロスは好き?」

 「は、はぁ? こんなデリカシーのかけらもない奴、好きなわけないじゃない」

 「はっ、てめぇに好かれるとか反吐が出るっつーの」

 「死ね」

 「てめぇがな?」


 あっ、これ喧嘩になるやつだ……


 そう感じた刹那、


 「カルロスはいい男だと私は思うぞ?」


 食事に夢中だったクロエがふとそう言葉にした。


 「はぁ? どこが?」

 「口は悪いが、頼りになれる奴だし、話してて気疲れしない。それに意外と面倒見がいい」

 「関係値が浅いからそう言えるのよね」

 「浅くても深くてもこいつの態度は変わらないだろ」


 嘘だろ……クロエがまともなこと言ってる!?

 で、でも、これは……


 「……クロエは男を見る目がないわ」

 「そうか? それなりに人気だと思うけどな。告白されてる姿も見たことがあるし」

 「えっ!? カルロスそれ本当!?」


 ルナがキラキラと瞳を輝かせ、テーブルから身を乗り出す。


 「……うっせぇ」

 「ゼオは見たことがあるの?」

 「ま、まぁ……」

 「すごーい! モテるんだね、カルロスって!」

 「ちょっ、その辺で……」


 話せば話すほどマリーの機嫌が悪くなっている。

 そう思い、話を止めようとしたが、


 「……うっざ」


 割って入るのが遅かった。

 苛立ちの表情を見せたマリーは席を立ち、ダイニングから出て行ってしまう。

 普段ならば、俺が仲裁に入り、二人の喧嘩が収まる。それで終わりだ。

 だが、今回はクロエが間に入ってしまった。

 それも正論という刃をかざして。

 初めてと呼べるほどのこの状況に、カルロスは小さく舌打ちし、ルナはぼーっとマリーが出て行った扉を見つめていた。

 横やりを入れたクロエはというと、


 「なんで怒ってんだ?」


 あっけらかんとした表情で言葉にし、一人食事を再開するのだった。

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