メカアクションゲーム以外能無しのいじめられっ子陰キャの俺、異世界へ送られ無事終了
「チャージアタック!」
背後から突き飛ばすような蹴りを学生鞄越しに受け、篠川祐介は…傍から見る分には滑稽なほど綺麗なフォームで前のめりに吹き飛ばされた。
「カウンターセイバー!」
前方で待ち構えていた同級生が傘をバッターのように構え、タイミングよく祐介の胴を真一文字に叩いた。 死ぬほどの痛みではないが、決して軽いスキンシップで済まされる程度の痛みでもない。
その場に膝をつく祐介の前に、大柄な人影が立った。澤田…
「大丈夫かっ、篠川くんっ!?」
この上ない恐怖とストレスに苛まれつつ、そのふざけ半分の心配顔を見上げた。…勿論、自分の心配など微塵もしていないのは明らかだ。 …次に起こるであろうことを知っているであろうお仲間の中嶋、山岸らが遠巻きにニヤニヤと笑みを浮かべながら自分達を見ている。
朝の通学路。…また今日も自分はこいつらに捕まっていた。同じ高校の制服を着た同年代の男女が知らぬ顔で通り過ぎ、或いは野次馬となってその様子を眺めたり、スマホを向けたりしている。
「…遊びとは言えやり過ぎだったよ、ごめんな」
澤田は殊勝に謝りつつ、殊更しおらしい顔を見せた。
「い、いいんだ」
とにかく離れたい一心で頭を下げ、その脇を通り抜けようとすると、軽く肩を掴まれた。
「待ってくれ。お詫びに一発、俺を殴ってくれ。本気で良いから。…それでおあいこにしよう」
—そんな事ができる訳はないし、したくもない。とにかく自分はこいつらに関わりたくないだけだ—
「いや、本当にいいから…」
そう言って再び脇を通り抜けようとすると、今度は力強く肩を掴まれた。
「いいからじゃねーんだよ、さっさとやれっつってんの」
何が面白いのか、その変貌ぶりに周りのお仲間達がゲラゲラと愉快げに笑う。
「ほら、顔でもボディでもいいから早く」
さっきまでのしおらしい態度はどこへやら、豹変した澤田は舌なめずりするように祐介の前に立ちはだかった。
「男を見せろー、篠川くーん、ママも応援してるぞー♪」
中嶋が母親のつもりか、自分に向けてくねくねと気色悪い動きをしてお仲間と笑い合っている。
逃げられない状況に追い込まれ…仕方なく、力のないパンチの真似事をした。
…正直、人を殴った事など無いので、本気のパンチだとしてもたかが知れていた。
「うわっ、予想以上のへなちょこパンチ…」
澤田は引き気味に苦笑していたが、そのパンチとも言えないパンチを取ると、祐介を手繰り寄せ、豪快な一本背負いを決めた。 背負っていた学生鞄がクッションとなり、軽く頭を打っただけで済んだ。
よく言えば命拾いしていた。…悪く言えば、これで大事にならないが故に何度も繰り返されてきた。
いや、例え自分が死んだとしても、こいつらは他の誰か…新しい標的に狙いを切り替えて同じ繰り返しをするのかもしれないが。
「決まったァ!ジャストカウンター!」
無言で起き上がり、そそくさと学校への通学路を進む。勿論謝罪の言葉など無かったが、それで良かった。
自分がこの仲良しトリオと愉快な仲間達の標的になったのは二年のクラス再編直後から。最初はちょっとからかわれる程度で、こちらも苦笑しながら笑っていたのだが、三ヶ月かけてエスカレートして、今ではこんな過激な暴行を受けていた。
教師たちに相談すると「社会に出たら先生は助けてくれないんだよ?それを自分で解決して仲直りするのが社会人なんだから」という旨のお達し。
家では相談するより前に両親から進路や成績についてのお小言があり、言う気も削がれた。
二言目にはゲームのし過ぎだ、スマホのやり過ぎだ、と決まっていた。
自分が密かに計画している行動を実行に移したら、この人たちは互いに責任を擦り付け合うんだろうな、と漠然と想像できた。
…もっとも、まだそれを実行に移す度胸と決心はつかなかったが。一度、学校屋上のフェンスを乗り越えようとしたが、余りの高さに足が竦み、登り切らないまま後戻りしてしまった。
退屈ならまだしも、苦痛とも言える学校と家族団らんの時間とやらから解放され、ようやく自分の世界に逃げ込んだ。
「ハート・オブ・ギア」…通称HOG。流行りのTPSロボットアクションゲームを起動させた。
…この中でのみ、自分の存在意義を見出せた。
フリースタイルなゲームで、大抵は親しい友人やオンライン上で知り合ったプレイヤーを誘ってチームを結成し、それぞれが大小の勢力となって資源…このゲーム内で使える通貨や領土、国力・インフラを巡って破壊したり奪い合ったり、同盟を組んだり裏切ったり… 極めて自由度の高いゲームで、国内外で大展開している話題のゲームだった。
当然、資金を集めて機体を強化したりもできるのだが…このゲームの特筆すべき特徴は二つあった。それは他のゲームタイトルやメーカーが当然の如くしている 課金=強化 という高利益システムを敢えて選ばなかったことだ。 自機やキャラクターのドレスアップや拠点、自国の見栄えといった、勝敗に関わらないやり込み要素の為に課金要素があり、ゲームプレイだけにこだわる人間なら無課金でも、戦略と実力さえあれば実力を思う存分発揮できるのだ。
しかしながらこのシステムでこのゲームは爆発的な売り上げを記録し、国内外で大成功し続けている。…現に今日も、あの三人組が仕掛けてきたのはこのゲームのネタだ。実際、三機で一機を狩る連携技と、相手の攻撃をカウンターで倍返しにする技の再現だった。
もう一つの特徴は、ロボットゲーとしては珍しく歩兵の分担がある事だ。
ロボットゲーにおいては踏み潰されるゴブリン的な扱いだが、歩兵も立派な戦力であり、歩兵が居なければ敵拠点や物資を奪う事は出来ないし、侵入してきた敵歩兵から物資や拠点を守るのに効率が良いのも歩兵だった。 そして、拠点が奪われれば幾ら強力な機体を持っていようと帰る場所、補給する場所が無くなり、事実上の敗北となる。
ゲームの世界へと入っていった。
南米のギアナ高地を想起させるような台地が幾つも連なり、その間を縫うように流れる川と鬱蒼とした森林地帯。
ハッキリ言って戦略的価値は殆ど無い場所。埋蔵資源も無ければ国力相性も悪く、地価でいえば限りなく0円に近いだろう。
だから、自分達盗賊団のアジトには打ってつけの場所だった。
台地とジャングルの影に隠した拠点に入った。梯子を上って居住区を兼ねた事務所に入ると、淡いブロンド髪の少女が近未来的な戦闘服とアーマーを身に着けてソファに座っていた。
「おつかれ、ジャックス」
ブロンド髪の少女に微笑まれ、祐介…ジャックスは微笑んで挨拶を返した。…課金して手に入れた挨拶モーションだった。
「お疲れ、エマ」
女性キャラに扮する男性プレイヤーなど当たり前に存在する。祐介もそれを理解した上でエマと接していた。そんな事がどうでも良くなる程にエマは優秀な歩兵だった。
「やっちゃう?」
「やっちゃおう。今日はスレーゲンにあるロストヘヴンを」
「本気で?物凄い強さで領土広げて、国力ランキングも上位保持チームじゃん」
「だから、相手にとって不足は無いだろ?あまり弱い所からは奪いたくないからね」
「はいはい。行きますか」
エマと共に隣接するガレージにポールを伝って降り、エマはこれまた近未来チックなバイクに乗り込んだ。
そして自分は…目の前に佇んで光無い目で自分を見下ろす愛機…武尊を見上げた。
ダークブルーと白、アクセントに赤のカラーリングを施された全高5メートル程の…無骨な人型のシルエット。連装ミサイル系では最弱クラスである三連装多目的ミサイルを肩に積んでいる以外はオーソドックスなソードとマシンライフルだけの武装。
燃料は…満タン。耐久ゲージもフル。 機体内でマップを開いて座標を入力した。見上げると既にエマの姿は消えていた。
自分の視界も今見えている風景が消え…全く違う風景が目の前に現れた。
『うぉ!?なんか来たぞ!?』
『ファントムだ!ファントムきやがったわ』
自分達はこの世界では悪い子で有名だった。強力な集団を好んで襲い、物資・資源などを強奪する、たった二人の強盗団として。
「じゃ、がんばってね~」
「そっちもよろしく」
エマと別れ、ジャックスは機体をホバー移動させながら相手拠点を見た。 立派な王国を築き上げ、八機の”ゴーレム”が自分を迎撃すべく出撃してきた。
『大丈夫、大丈夫、一機だけだ!いつも通りやれれば楽勝!』
相手の通信は聞こえない。敵味方に別れて戦闘フェイズに入ったら作戦保護と暴言等の防止のため、互いの通信は封鎖される。
ジャックスの駆る武尊は相手の敷地内にある倉庫を盾にライフルを数連射した。攻撃に逸った一機が頭部カメラを吹き飛ばされ、事実上の戦闘不能に陥った。
僚機を墜とされながらも敵部隊は倉庫を回り込むようにして自分を包囲しようとしてくる。
『ファントムを倒して、パーツ頂きだ!』
撃たれる、という瞬間に倉庫を破壊して突っ切り、建物の中に期待を潜り込ませた。
自分を見失った敵に向かい、予め見当を付けていた方角へ向けライフルを連射。またも一機が六発被弾して爆発した。
倉庫内に入り込んで来た相手が自分を発見し、一瞬だけフリーズした。恐らく、目算を誤ったのだろう。或いは仲間とのやり取りに集中し過ぎていたせいか。
すかさずソードを抜き、ライフルを構えたばかりの相手のコックピットに突き刺す。これも大破。
『クソッ、ホントにチートしてねーのかよ!?動きが違い過ぎる…ッ』
建物の物陰から物陰へと移動しては相手の視界を切る。残った五機が隊形を組み、二手に分かれて進んでくる。
応援要請に応じたか、もう二機の新手が敵拠点からゴーレムがリスポーンした。
自分を包囲する二機一組の方へ狙いを定めると、その背後に着地した。一機をそのまま串刺しにしつつ盾にして、もう一機が発砲するライフルを受け止めた。そのまま突進し、もう片方も撃破。
『調子に乗りやがって!』
痺れを切らしたか、ビルをブーストジャンプで飛び越えてきた三機。最高の標的だった。三機に向けて三連装ミサイル発射。
『ち、畜生…!』
空中で三つの爆発。 戦果に浸る間も無く身を翻すと、地面に超高熱による大穴が開いた。
新手の二機。 ビーム系の特殊武器を装備している。アレに当たれば、たとえ弱点攻撃でなくとも高確率で一発アウトだ。
ビル陰を移動して二機の周りを巧みに動き回った。最初は死角をカバーし合っていたスナイパー達だが、仕留められそうで仕留められない絶妙な位置でウロウロと顔を見せ隠れするジャックスの立ち回りに知らず痺れを切らし、ビームを撃ちながら二機で迫って来た。ライフルを後方射撃しながら背中を見せるジャックスを見て逡巡した挙句、追撃という最悪の選択をしてしまった。
ビル陰で待ち伏せていたジャックスのソードでまたも一機が串刺しにされ、もう一機はすかさずソードを抜いてジャックスと対峙した。
ソードを二度、切り結んだが、三度目でジャックスの巧みな間合いと剣捌きに敗れ、最後の一機が崩れ落ちた。
『マジかよ、クソッ!』
「敵ゴーレム部隊はやっつけた。そっちは?」
言いながらも敵拠点…ロストヘヴンに向けて武尊を移動させた。
「うーん、もうちょっと」
敵拠点内で、歩兵同士による激しいもう一つの戦いが行われていた。
「オッケー、勝った勝った!制圧したよ!敵の新手が来る前に運び出しちゃおう!」
「よし、今行く」
エマと共に物資、資源を運び出して行く。 武士の情けとして、激レアアイテム等は見逃しておく。こうした粋な行いもあって、ファントム盗賊団のファンだという者も少なからず存在した。
今日も大量の戦利品を拠点に持ち込み、エマと共に勝利を祝った。
…現実でもこんな友が一人くらいいてくれてもいいのに…
充実した仮想世界と現実との落差を比べて溜息が出た。ゲーム世界のジャックスも、勝利の余韻も早々に醒め、ぼんやりとしていた。
「どうしたの?何かあった?」
「いや、なんでもないよ」
暫くの沈黙の後、耐え切れずに胸の内を吐露した。
「…現実もこんな上手く行けばな、って思っただけ」
「世の中ってそういうものだから」
「…それに、ここには俺にちょっかい出してくる嫌な奴もいないし」
「…嫌だけど、どこにでもいるよね、そういう奴ら」
「…うん。 でも聞いてくれてありがとう。…結構楽になるもんだね、聞いてもらうって」
「全然いいよ!また明日遊ぼう?」
「うん!…正確にはまた今日も、だけどね」
「確かに(笑)」
顔も知らぬゲーム相手は、間違いなく自分の唯一の親友らしい親友だった。
そんな毎日が続き、遂に修学旅行の日がやって来た。
自分には灰色にくすんで見える、ライトブルーの筈の海。
隣に誰も居ない空疎な旅行を終え、代わりに鬱々とした平和レポートをかき上げた。
教師や学校、親への当てつけも兼ねて、「けど力を持つ物には誰も逆らえない。過去の戦争の勝者達のように。仲裁し、助けてくれる者も絵空事にしか存在しない。今も、これからも」という論調にした。
帰りのバスの中で、よりによって隣にクラスのお姫様をお迎えすることになった。自分など目を合わせる事も許されない、いわゆる一軍女子のトップだ。彼女は美形女子の中心だった。そんな彼女が一体どんな男子を選ぶのか、それとも他校か年上か…と言った話題で男子も女子も飽かずに沸いていた。
関わっていないのは自分や、自分と同じ属性の者達だけだ。
「うわー…小山可哀そう」「ドンマイ、愛ちゃん」
などと言われながら自分の隣に座る美少女。お互いに目も合わせず、会釈だけしあった。
苦痛なのはこちらも同じだ、と思いながら窓の外に目をやった
「小山、良ければ代わってやるよ?俺、篠川とは親友だからさ」
澤田が身を乗り出して来た。…大したお友達だ。
しかし小山は曖昧にありがと、と言ったきりだった。
バスが動きだす。
何人かの運命を狂わせ、それを決定づけながら。
バスの中が和気あいあいとした空気も束の間、三日間の旅行で疲れ切った生徒たちは殆どが眠りについていた。
疲労感こそあるが、とても疲れる様な充足した経験をしていない自分は、ただただ早く帰ってHOGに接続したい思いだけだった。
溜息交じりに視線を落とすと、隣に座った小山愛のスカートから覗く張りのある艶やかな脚が見えた。視線を逸らそうとして、その膝の上に置かれた手に握るハンカチに気付いた。
心臓が止まるかと思った。
ハンカチは沖縄の伝統的な技法を学ぶ体験学習コースで制作したもので、その技法を用いて模様を描いたものだった。
問題は、その中心に書かれている模様だった。
それはファントム盗賊団のエンブレムとして、エマと共に制作したチームエンブレムに極めて酷似していた。
チームエンブレムは他チームも参照できるため、誰かが知っていたとしてもそれほど驚く事ではない。…だが、その下に書かれた、プライベートエンブレム…デフォルメチックに描かれた、頬被りをしたおばけのかわいらしい絵は、拠点内にエマが描いたものだった。
そして、未だ自分達の拠点は誰からの侵攻も受けて居ないので、それを知る者は居ない。
…エマを操作しているリアルのプレイヤーがそれを外部…SNSなどに掲載していない限り、誰も知らない筈だ。
まさか… そうなのか?
乾く唇を動かし、枯れかけた喉から声を絞り出した。
本来なら声を掛けていい類の人物ではない。…だが、確かめずにはいられなかった。
「エ…エマ…?」
それまで退屈そうにしていた小山が、びくりと身じろぎしながらこちらを見た。
「えっ…なんで…?」
「…それ、拠点の事務所…ホワイトボードに描いてた…」
キャラクター自体はシンプルなので誰でも描けるかもしれないが、全く同じポーズ、同じタッチのキャラクターだった。
「もしかして…ジャックス…?」
小刻みに何度も頷いた。
互いに何か言葉を発そうとして…それは永遠に叶わなかった。
けたたましいクラクションに振り返ると、自分達の視界一杯に迫った大型トラック。
轟音。
悲鳴。
…
…やがて世界が反転すると、真っ白い部屋の中にいた。空気椅子のような姿勢から崩れ落ち、床一面に敷き詰められた白く柔らかなクッションに尻餅をついた。
自分だけだった。…いや、一人だけ、誰かいた。
スカジャンにスゥェット姿の、チャラそうな茶髪のイケメン。…見るからに陽キャ。火のついた煙草を置いた灰皿と缶ビールをミニちゃぶ台に乗せ、HOGをプレイしている。
「いやぁー、ムズイねこれ。まーたカモられたわ」
ゲーム画面では大破したほぼ無改造の自機とdefeatの文字が大写しにされている。そりゃムズイ。
いくら何でもノーカスタムソロで渡り歩くのは、世界プレイヤーレベルでも至難の業だ。
「でもよくできてる。ソロでやっていくのはほぼ不可能だな。つか、これがリアルだったらどんな社畜自慢でも体が耐えられねーな」
そう言いながらコントローラーを置き、代わりに煙草をひとしきり吸い込んで紫煙を吐いた。
考えてみれば、リアルで機体の整備、補給、それに戦闘までこなせたら超人だ。…というか物理的に不可能だろう。
その茶髪のイケメンが朗らかな笑顔でこちらを振り返った。
「さて、篠川祐介くん。17年の短すぎる人生お疲れ様。天国と地獄、どっちが良い…って聞きたい所だけど、君みたいにあんまり短い人生だと天国にも地獄にも行けなくてね。 で、そのままにもしておけないからとりあえずちゃっちゃと転生してもらうよ」
「は、はぁ…」
「選択肢は二つに一つ。…記憶も真っ新の赤さんになってもう一度現代のどこかのお母さんの元に生まれ変わるか。親ガチャに関しては責任持てないけどね。…それか、その年齢のまま、別の肉体になって別の世界でコンティニューするか。この場合だと君の持っている知識と経験はそのまま引き継がれる」
生まれた先がろくでもない親だったら…ニュース記事に載るような事例を思い出して、前者は選択肢から消えた。
「異世界転生…赤さんになる訳じゃ無いから転移になるのかね?…で、ここで本来なら君にスキルをあげるべきなんだけど…スキルってどれだけ社会に貢献したかとか、友達が多いかとか、どれだけ強い人間かとかでポイントが加算されて決まるんだけど…君の場合はあんまり陰キャ過ぎて、チープスキルすら取得できないね。 ドンマイッ!」
グッ、と精悍な顔で親指を立てられた。
ドンマイッ!じゃねーよ…何だったんだ、俺の人生って…
「ちなみに、君をいじめてたアイツらも死んじゃって同じく転移だけど、アイツらはそこそこなスキル手に入れてたね。あんな糞みたいな連中でも人並に溶け込んでオラオラしてればまぁまぁポイント貯まるんだわ。良くも悪くも制度ってやつだな」
ますます何なんだ…じゃあ、やりたいこと、悪い事したモン勝ちって事かよ…
「…オイオイ、勘違いすんなよ?あいつらの場合は年齢的に地獄にも行けなかっただけだぞ。この異世界で悪行改めてよっぽどの徳を積まないまま死んだら、今度こそ地獄行きの可能性大だね。…記憶や経験もリセットされないって言ったけど、やらかした罪も消えねーからな。 …じゃあ赤さん選んだらどうなるかって?そもそもあいつらには赤さんになる権利すら無かったからな。 未遂とはいえ、人を自殺にまで追い込んだんだからなぁ。ちょっとやそっとのスキル貰ったって、お慰み程度のモンなんだよ。徳積まないまま死んだら地獄行き確定の懲役みたいなもんだし」
…こ、怖ぇ…リアルでは良い子にしてて良かった…
「うん、お前はよっぽどの悪さでもしない限り即死しても大丈夫。天国にも行けるから」
いや、大丈夫では無いが…というか思考読めるのか…そう言えばこの人ってまさか…
「うん、所謂神様?的な。苦しゅうない、良きに計らえってな。 俺、堅苦しいの嫌いなんでね。 あー、脱線し過ぎたな。とにかく、お前はノースキルだから体は町人Aと同レベルだ。一瞬頭に描いたようなスーパー勇者無双はできないけど…お前の知識と経験が活かせる世界に送ってやるよ」
手をかざされ、篠川祐介の意識と生命はそこで無に還った。
「ちなみに俺はさ、お前みたいなウジウジした善人がちょこちょこ頑張るのが大好きなんだよね…ってもう聞こえないか」




