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年中討伐!古知丸さん  作者: 雨樋 朔
東京郊外戦
8/8

人かモドキか

「どういうことだ。乙原(おつはら)


どれだけ周りに言われようとも、乙原は無言のまま。


「なら俺が言ってやろう」


静寂を破ったのは、突如現れたモドキだった。

なぜお前が口を出すんだ。皆そう思っていただろう。


「そこにいるイサオ、今は乙原かな?そいつは"ほぼ"モドキなんだぜ?元々は俺の部下だったんだよ。お前は人間に戻ったつもりでいるようだが、知らず知らずのうちに対倣社の情報を俺に提供してたんだぜ?ほんとにバカだ。昔からそうだったなぁ、お前は。せっかくモドキの軍から抜けたのになぁ。一番嫌い種族に加担した気分はどうだ?さぞ最高だろう」

「黙れよ」

「あ?」


いつのまにかよく喋るモドキの背後に、古知丸(こちまる)が立っていた。


「お前が古知丸だn...」

「気安く名前を呼ぶな。さっきから無線で聞いてたけどよぉ。意味わかんねぇことぺちゃくちゃぺちゃくちゃ言ってんじゃねぇよ。こいつの事なんも知らねぇけど、大事な後輩なんだよ」

「初めて会ったのにここまで嫌われてしまうとは...。悲しいものだねぇ。そうだ!俺はお前に用事があったんだよ。お前、俺の方に来いよ」

「あ?」

「わかんなかったのか?モドキ側につけって言ってんだよ。さっきも言ったが、お前の強さはモドキを通してたくさん見てきた。俺はお前の戦闘能力に惚れ惚れしたんだ。捨て駒(あいつら)と違って、ちゃんと考えて戦えるからな」

「私はそもそも、テメェら、モドキが嫌いだ。その中でもテメェが一番嫌いだ」

「それはNOということと捉えていいのかな?」

「当たり前だろ、カス。楡俣(にれまた)先輩と違ってお前みたいな、部下を捨て駒というような上司について行きたくないわ」


古知丸の顔は普段よりも、3割増して怖かった。


「フン。あっけなくフラれちまったな。まあいい。どうせそう言うだろうと思ってたわ。今日は古知丸に会いにきただけだからなぁ。まあ帰るわ。あっお前らが探してたオオプラナリアモドキはめんどくさいから、俺が消しといた。そういえばイサオはモドキだから、処刑した方がいいんじゃない?俺の手でも消せるけどな。じゃあな」

「おい待て!」


さっきまでダンマリだった乙原が突然叫んだ。


「お?なんだ?イサオくん?」

「舐めんじゃねぇよ。殺すぞ」

「ぷ...。ハハハハハ...。もう涙が出そうだよ。お前みたいな雑魚が俺を殺せるかな?」


明らかに舐め腐っている。


「テメェ、この野郎!」


古知丸はよく喋るモドキに銃口を向けた。


「待て古知丸!撃つな!」


無線から楡俣先輩の声が聞こえてくる。


「じゃあな古知丸。俺はハニク。いつでも返事待ってるぞ」


そういうと、よく喋るモドキ、ハニクは目に見えない速さでどこかは消えていった。


* * * * *


あの後、偵察班が調査したところ、あいつの言った通り、オオプラナリアモドキはいなくなっていた。


我々討伐班は仮本部に集まった。

救護班のおかげで弍班の人たちは、かなり回復していた。しかし、皆話すことなく、乙原を見つめていた。

我々壱班は現場にいなかった司令部と、情報を共有した。


「なるほど。そんな奴が来たのね」


豊田(とよだ)さんは話を聞いて深く頷く。


「それと...」


豊田さんは言い淀んだ。しかし、目線は本部の端の机に突っ伏した乙原に向けていた。

言いたいことはなんとなくわかる。今まで人間だと思っていた人が、モドキかもしれない。もしかしたらスパイの可能性だってある。しかし、乙原が凹みようをみると、本当にショックだったんだろうなと思えてくる。


「乙原くん。ちょっといいかな?」


豊田さんは乙原を呼んだ。


「はい」


カチャ。


乙原が立ち上がった瞬間、銃を構える音が聞こえた。


(れい)だ。

横から捩が乙原を狙っていた。ちょうどこめかみあたりを狙っているように見えた。


「なんのつもりだ。やめろ、捩」


豊田さんがどすの利いた声で止めに入る。


「司令のババァは黙ってろ。あいつ、モドキなんだろ?さっさと殺した方がいいに決まってんだろ。お前らがそいつを守るせいで、情報抜き取られてるんだよ?」

「やめろ。捩。こいつは人間だ」


豊田さんに続いて、楡俣先輩も止めに入った。


「バカ言え。やっぱりこいつは殺した方がいい」


楡俣先輩と捩は睨み合う。


「乙原の話も聞かずに決めつけるのはどうなんだ?あのハニクとか言うモドキの話を信じるっていうのか?」

「は?」


捩は少し言い淀んだ。

楡俣先輩は続けた。


「もしこいつが本当にモドキだったら、殺しても構わない。しかしそれは話を聞いた後だ」

「殺しても構わないって、正気ですか?」


私は驚いた。


「正気だ。こいつがモドキだったら、ただのスパイだ。情があるかもしれんが、そんなのは通用しない」

「でも...」

「でもじゃない。そういうものだ」


私は反論するのをやめた。


「わかった。もしモドキだったら俺がすぐに銃弾ぶち込んでやる」

「お前には関わってほしくないがな。じゃあ、今までのこととモドキについて知ってること、全部吐け。乙原」

「わかりました」


立ち上がった乙原は豊田さんに導かれ、パイプ椅子に座った。

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