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第9話 吸血鬼の秘密

 馬車の中で見たその人間じゃない姿が、フィーネの視線に映った。

 彼女──エルゼは一瞬だけその本来の姿を見せると、目を閉じて再び柔らかい表情に戻る。


「ふふ、びっくりしたかしら?」

「は、はい」

「でもオズも吸血鬼なのを知っているでしょう? 私もなの」


 そう言いながらプリンを一口食べると、子供のような無邪気な顔をして喜ぶ。


「リンっ! このプリンさいっこー!!!」

「ありがとうございます、シェフに伝えておきます」


 なんとも異様な空気ではありつつも、怖くはない不思議な感じは彼と彼女がフィーネに敵意を向けていないからだろう。

 フィーネは一つ疑問に思うことがあった。


(吸血鬼ってそんな当たり前の存在じゃないはず。この人たちは……)


 その言葉を悟ったようにオズは手をテーブルの上で組むと、自分たちのこと、そして吸血鬼について語り始める。


「フィーネ、この屋敷で僕と母上だけが吸血鬼だ。そしてそのことを知っているのは僕たちとリン、そして君だけだ」

「四人だけ……」

「ああ」


 フィーネは手を膝に置いておとなしくその言葉に耳を傾ける。


「吸血鬼はね、普段はある森でひっそりと集落をつくって暮らしている。そしてその存在は王族だけが知っているんだ」

「王族だけが」

「ただね、ここにいる自由奔放な母上は少女の頃に森の外に出てね」

「そうなのよ~! うっかりそこで人間と恋に落ちちゃってね~! それがオズのお父様♪」


(なるほど……昔から自由奔放な方だったのね)


 オズは苦笑いを浮かべながら話を続ける。


「まあ、それで僕が生まれたわけだが……」

「吸血鬼はかなり寿命があると思っているのですが、もしかしてオズ様は300歳くらいだったりしますか?」

「いや、実は吸血鬼は人間社会により溶け込めるように20歳まではほぼ人間と変わらない見た目で成長する。だから僕はまだ21歳だよ」

「そうでしたか……では?」


 とフィーネはちらりとエルゼの方を見つめてしまう。

 すると、エルゼはむっとした表情でフィーネに言い返す。


「もうっ! レディの歳を勘ぐるんじゃありません! 私はまだ39歳よ!」

「す、すみませんっ!!」

「フィーネ、冗談だから気にしなくていいよ。それに実際母上も吸血鬼の森に戻る頃なんだ」

「え?」

「吸血鬼はさっきフィーネがいったみたいに人間より寿命が長い。1000歳くらいかな。だから年を取らないのが不自然じゃない40歳くらいで森に戻らないといけないんだ」

「まあ、こっそり住んじゃってもいいけど、掟なのよ」


(そんな決まりが……)


 フィーネはそれともう一つ気になっていたことがあり、質問をした。


「あの、オズのお父様、前公爵様は?」


 その言葉にエルゼは口をつぐみ、その様子を見たオズが代わりに答えた。


「亡くなったんだ、去年」

「え?」

「遠征中の事故でね。だから早いけど僕が跡を継いだ」

「そうでしたか……」

「素敵な旦那様だったわ。本当に素敵な……」


 エルゼの視線は昔を思い出すかのように遠くを見つめており、フィーネも彼女がとても彼のことを愛していたのだと感じた。


「父は偉大な人だから僕で仕事が務まるか正直不安なところはあるけど、父を超えられるように頑張るよ」

「はい、応援しております」


 そんな家族の様子をリンは静かに見守っていた──

【一言コーナー】

かなり吸血鬼の秘密をお話できました。

パパやママも愛されるようなそんなキャラクターになればいいなと。

プリンは固めプリンでした。

あ、作者の好みです(笑)

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