☆ 世界が広がる日
「グッ………………!!」
ギリギリであの太刀を受けれたが、体力の限界だ。流石、次期王都の専属騎士だ。
「かわしてばかりでは、負けますよ?」
ミスティアは、領土が近い幼馴染み、いや身分は彼方の方が上だからそういう馴れ馴れしい関係ではないが幼少期はまだ仲が良かった。だが、いつからかコイツは俺を敵視するようになった。ソレがどうしてなのかはいまだに分からないが、台頭する時は必ず今の様な憎悪に似た目をする。
ギンッ
剣はもう使いもんにならねぇ。
やっぱり俺は狩人らしく弓が一番しっかり来る。だが、弓は遠距離での攻撃で使うもの。今の様な場面では使えない。そんな俺に残された武器は炎、一つ。
此処で食い止めねぇと、アイツらが………。
「試合中に考え事とは、またあの愚か者どもの事でも考えたんですか?」
ギンッ
「………………………っ⁈」
剣を避けきれず頬にかすり傷が出来てしまった。そして、その瞬間、アイツらとの出会いを思い出した。
****
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」
ギンッ
「勝者、アレン。」
その日は入学したばかりの初夏だった。
何時もの如くツマラナイのと打ち合いの授業があった。
その頃の俺は、騎士道クラスの学年1位を誇っておりながらも毎日毎日同じことを繰り返す学校というものに飽きて毎日が辛かった。さらに、俺は小爵家といえど次男坊。いつかは家から追い出される身だからか、家族やメイドは俺が学校で何をしても興味がないらしい。けれど、入学時に久々にあった家族から、こう言われた
『お前は穀潰しだ。だから、この家には帰ってくるな。』
そうして俺は実質、家から追い出された。
そんな環境に育ったせいか、俺は人に感情を出すのが辛くなった。だから、外では猫を被り従順なフリをする。ソレが、俺だった。
そんななか、
「貴方が、アレンくん?私、魔術師クラスのヴィオラなんだけど、一回だけ手合わせしてみない?」
同じ、ジュスティツア国の第六皇女であるヴィオラ・フィルジーン・ジュスティツア。
世にも珍しい“錬金術”の使い手で風変わりな卑しい姫で有名だった。
なぜ、卑しい姫なのか。
ソレは彼女の母親が元踊り子、つまり庶妃の子供だからだ。
そんな彼女が俺みたいな辺境貴族に手合わせをしたいとは、一体どういう意図なんだ?
「まさか、僕が断る訳がありませんよ。此方こそ是非よろしくお願い致しますね、ヴィオラ皇女様」
撃ち合いは裏山で行われた。
見物客もおらず、静寂に包まれた聖地の様な場所だった。
「結界を張っているから存分に打ち合えるから安心してね。」
ソレで、静かなのか。
「では、始めようか。」
俺は剣を構える。
「手加減は無しでお願い、じゃいくよ。」
「よろしくお願いしますね。」
間合いを詰めて一気に畳み掛け、決着がつく……………はずだった。
「………………っな⁈」
彼女は一瞬にして消えたのだ。
「何処見てるの?私はココだよ。」
声は上からした。
まさか、と思い上を見る。
そこには鋼で宙に浮いていた彼女が。
「錬金術ってさぁ、こんな風に戦闘にも使えるんだよ。ホラっ!」
「グッ、なんだコレ⁈」
いつのまにか、鎖で縛られていた。
そして俺の下には魔法陣が。
「初めと同時にトラップを作ったの。どう?私のトラップ、完璧だったでしょう?」
生まれて初めて、試合に負けた。いや、完敗だった。
けれど、その事が悔しいとは思わなかった。むしろ、
「っぷ、あははっ!」
久しぶりに声を上げて笑えた。
「ちょ、どうしたのよ!」
初めて、面白い人に出会えた瞬間だった。
兄上やティアなんかよりもずっとずっと新しい発想を求める同士にようやく逢えた日だ。
そうだよ、俺らはこんな古臭い考えの奴らを驚かせる為に此処までやってきたんだよ。
こんな所で負けりゃ、あいつらから鼻で笑われちまうなッ!
「ッ!」
剣に力を込める。
指が火傷しそうなくらいに炎の威力を上げる。
さぁて、此処からが本番だぜ、ミスティア!
ストックがきれそう、、、
もしかしたら週1投稿になる日が近くなるかも、デス




