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悪堕ち勇者達で滅亡寸前な世界の神官事情  作者: イマノキ・スギロウ
7/7

第7話「ストーップ!」

 ずっと放置になってしまい申し訳ありません。

 現在『ダンジョン経営勉強中!』を優先しているのでこちらはこれからも不定期が続きますが、ちゃんと続きは書いておりますので、ご興味があって気長に待っていただける方の期待は裏切らないように精進します。

 リコエラが外壁をぶち破るのをからくも防いだルアスは外壁を壊さずに通り抜けるというリコエラの言葉に従ってなぜかリコエラと一緒に外壁から少しずつ遠ざかっていた。


「もしかしてこの先に公国内に入れる抜け道があるの?」


「んん? そんなの私が知るわけないだろ?」


「え? じゃあどうやって公国内に入るの?」


「……これくらい距離があればいいか、」


 外壁から50mほどの距離に来たリコエラはルアスの質問に答える代わりにルアスを担ぎ上げて走り出した。


「え? なに? なに?」


「口閉じてないと舌噛むよ」


「ええ~~!?」


 ルアスを抱えた状態でもリコエラの走るスピードは全く変化せず、あっという間に外壁の前までくると、そのまま壁に足をかけて駆け上がるように登り始めた。


「お、降ろして~~!」


「静かにしろ、気づかれるだろ」


「そんなこと言ったって~」


 外壁の上に到達したところでリコエラは手近な建物の屋根に飛び移ると、中心部に見える貴族街に向かって屋根伝いに進みだした。


「うう~、生きた心地がしない」


「そんなことよりマサシがどこにいるか検討はつくか?」


「え? ん~、ひとまず例の馬車を見つけるのが先決じゃないかな?」


「よし、なら馬車を片っぱしから調べよう」


「……出来るだけ静かに行こうね」


 こうして公国に入り込んだ二人のマサシ探しが始まった。



 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■



「ここに名前を書けばいいのか?」


「そうだ、言っておくが偽名を書くとお前自身と認識されず、契約は無効になるから注意しろよ?」


「わかったよ」


 グラハとの契約内容が決まり、マサシが『契約の魔紙』にサインをしたところでマサシの前に半透明で緑の肌をした草の冠を付けた男が現れた。


「契約を確認する。汝グラハはここに居るマサシとの契約を了承するか?」


「ああ、了承する」 


「では、汝マサシはここに居るグラハとの契約を了承するか?」


「……了承する」


「契約は結ばれた。互いに約定を違える事が無いようにゆめゆめ気を付けよ」


 緑の草冠男がそう宣言すると『契約の魔紙』がふわっと宙に舞いあがり、見えない手があるかのようにくるくると丸まって草冠男とともにすうっと消えていった。



「これで契約は完了した。お前の安全も晴れて保証されたところで話してもらおうか? お前がやったことの秘密を」


「先に言っとくけど、この方法を教えたとしてもそっちの問題はそっちで何とかしてくれよ?」


「どう判断するにしてもまずは話を聞いてからだ」


「……わかった、俺がやったのは…、」


 マサシは自分がリコエラを元に戻した方法について説明し、グラハはその話を聞いて、少し考えてから背後に控えていたネアの方を見た。


「どうだ? 今の話、嘘はあったか?」


「いいえ、ずっと見ていましたが虚偽を申している反応はありませんでした」


「そうか」


 ―――虚偽を言っている反応? 勇者ってそんなこともわかるのか? それともあのネアとかいう金髪ショートだけが分かる能力なのか? 


「どうやら話を聞く限り、その方法はお前しか出来ないものの様だな。少なくとも我が国でお前と同じような能力やスキルを持った者は聞いたことがない」


「そうですか」


「ならば仕方がない、我らにお前の力を貸してもらうしかない様だな」


「なんでそうなる!?」


「お前しか使えんのならお前を使うしかなかろう? 簡単な道理だ」


「そうだけど!」


「安心しろ、お前の事はこのネアがきっちり守る。お前は敵に寝返ってしまった勇者をどうにかしてくれればいい」


「くれればいいって、簡単に言うけど」


「グラハ様! 私は公国とグラハ様の為にあるのです。このような平民に」


「ではお前には今この者以外でクリスティナ様をどうにかできる方法があると言うのか?」


「そ、それは……、」


「クリスティナ?」


「ああ、我が国にはもう一人勇者が居てな、勇者であり同時にこの公国の公女でもあらせられるクリスティナ・ウィズ・マルピース様があろうことか敵側についてしまったのだ、おまけにこの国に今攻め込んでいる敵の指揮官がそのクリスティナ様自身だという馬鹿げた自体になっている始末だ」


「うわぁ、そりゃご愁傷様」


「退けるにしても公女様を傷つけるわけにもいかず、四日に一度の攻防で毎回多くの負傷者を出し、もはやこの国でまともに戦えるのはネアを除けば一握りの兵士しかおらん」


「ほぼ詰んでるなそれ」


「だからお前が必要なのだ。クリスティナ様さえ正気に戻ればこの国はすぐに立て直せる」


「で、俺にその正気に戻す作業をしろと?」


「そうだ、ちゃんと成功したら報酬も上乗せしてやる」


「ん~、じゃついでに事が済んだら俺が居たもとの街に送り届けてくれるってんならいいぞ」


「貴様どこまでずうずうしいのだ!」


「待てネア、その程度でクリスティナ様が戻るのなら安い物だ。お前はすぐに次の防衛のための準備をしろ。この小僧、いや、彼をクリステイナ様の元まで連れて行かねばならんのだからな」


「……は! 畏まりました」


 ドンドンッ!


 ネアが返事をした直後、扉を強くたたく音が響いた。

 

「誰だ!」


「執事のモートです! 大変でございます! 戦士の恰好をした女性二人が屋敷内で暴れております!」



 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■



 ルアスとリコエラは黒塗りに豪華な装飾を付けた馬車が止まっている屋敷を見つけたことでその屋敷に飛び込んで手当たり次第に部屋を確認していた。


「マサシー! どこだー!」

「マサシさ~ん」


 途中、軽鎧を着た男たちが立ち塞がり、「ここはグラハ様のお屋敷なるぞ、そうそうに立ち去れ!」とわめいていたが、リコエラが大剣を振り回し、その剣圧で突風を起こすとあっという間に吹っ飛んで行った。


「あちこち探したけど、いないねぇ、いっそ屋敷ごと吹っ飛ばして見つけるか?」


「だめだよ! ヘタしたらマサシさんが生き埋めになっちゃう!」


「そうか、そりゃまずい」


 ―――リコエラさんて、マサシさんが絡んだ時だけはしゃんとブレーキが効くなぁ、


 内心でそんな事をルアスが考えていると、突き当りの扉が開いて何かがすごい速さで飛びだして来た。


「おっと!」


 リコエラが大剣を構えて攻撃を受け止めると、その人物はすぐに離れて、連続で追撃を加えた。しかし、リコエラも勇者として実力からその攻撃に対応し、ことごとく相手の剣撃を受け切って見せた。


「ストーップ! 両方ともストーップ!! 戦闘止めー!!!」

「ネア! やめんか! ワシは戦えなどと命令しとらんぞ!!」


「あ! マサシー!」

「マサシさん!」

「も、申し訳ありませんグラハ様!」


 執事のモートからの報告を受けて一番に飛び出してしまったネアと屋敷に入り込んで暴れまくっていたリコエラの戦いは二人の男の一声で終了した。



 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■



「なるほど、あの公女さんまであいつらにやられてたのか」


「そもそも我が国は討伐隊には参加せず、勇者は全て防衛に回していたのだが、いつの間にかクリスティナ様は城から姿を消し、次にお姿を見つけた時にはすでに敵の指揮官になっていたという有様だったのだ」


「城の守護をしていた公国騎士団も形無しだねぇ」


「うるさい、敵に寝返っていた勇者は黙っていろ」


「へぇ、さっきの続きがしたいならいつでもやってやるよ? ええ? このひまわり頭」


「無駄に付きすぎたその肉を削ぎ落としてやろうか? スリムになれば少しは嫁の貰い手が出来るだろうさ」


「お生憎! あたしにはマサシっていう人生の伴侶がもういるからねぇ、あんたも行き遅れないように頑張んな?」(笑い)


 チャキッ、 ガチャッ、


 軍隊なみの戦力と評される勇者二人の一触即発状態に空気が重苦しいを通り越して押しつぶされそうなものへと変わり、マサシとグラハは同時に口を開いた。


「やめろリコエラ!」

「やめろネア!」



「けどよ!」

「ですが!」


「喧嘩をするなら先帰れ!」

「喧嘩をするなら出て行け!」


「「……はい」」


 それぞれに叱られた勇者二人はしゅーんとして静かになった。






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