天音涼華
俺は自分の席から窓の外を眺めていた・・・というよりも昨日伝説のシュークリームを食べた後のことを思い出していた。
あの後俺は自分の部屋で小学生になる前の写真を探した。だが、自称俺との幼馴染みの初瀬奈月と写る写真どころか、その頃の写真は一枚もなかった。
「ちょっと、翼君!」
三郷の呼び声で我に返る。俺の周りには三郷の他、蓮と梓がいた。
「ご、こめん。修学旅行の沖縄が楽しみって話だろ?」
「ちゃんと聞いてなさいよ。修学旅行は三年だからその前に私たちでどこか行こうって話をしてるのよ」
呆れた口調の梓に俺はもう一度「ご、こめん」と苦笑いで返すことしか出来なかった。
「まあ行くって言っても隣町の遊園地だけどな」
蓮の言葉で俺以外の二人は大きく頷いた。
「え?何でゆう・・・」
何故遊園地なのかを聞こうとした時、ふと自分が地雷を踏もうとしていたことに気付いた。
まてよ・・・ここでそんなことを聞いたらどうなる?三人とも当然という感じだし完全にKYになるよな。よし、ここは俺も知ってると装うしかないな。
「やっぱそうだよなー」
その言葉に三人はポカンとしは様子になる。
「へー意外だね。そういうの疎いかと思ってたよ」
「ま、まあね」
三人にはニコニコと返したが、頭の中は混乱していた。
「いや、翼が知ってるとはなぁ」
「そうね、絶対”何で遊園地なの?”とか聞いてくるかと思った」
なんなんだ!何が意外なんだ!それに梓は俺が言おうとしていた言葉を完全に予測しやがって。アトラクションとかは他の遊園地と変わらないし・・・くそー!そこまで言われたら何の話かすごい気になるじゃないかー!ても今更「俺実は分かってないんだよねー」とか言えるわけないよ。言ったら俺は嘘つきというレッテルを貼られるだけだ。ここは耐えろ!耐えるんだ!
「何だあれ?」
蓮は窓から顔を出して下を見ていた。俺も蓮が見る方へ目をやるとそこには正門に白いリムジンが止まっている。中からウチの制服を着た少女が降りてきた。しかし、どこかで見たことある顔だ。遠くてはっきりとは見えないが少女は手に持っている何かを口元に近づけた。
「アルテミア学園の皆さーん!こーんにーちわー!」
何かというのがマイクだったことが分かり、少女の声は校内放送の様に学校中にスピーカーから聞こえた。
「ん?何だ?」
「あれ?あの子ってもしかして」
少女の声が外からだと分かり、蓮や俺と同じ様に顔を出す生徒増えてきた。
「すうちゃーん!」
蓮はこれ以上にない程の笑顔で叫びながら大きく手を振っている。
俺は蓮の言葉で彼女の正体が分かった。だが俺は今までの蓮から考えられないその様子を見てしまった以上、彼女が誰かなどどうでもいい。
気づいたら蓮の他にも三郷や梓、ほぼ生徒全員が外を見て同じように騒いでいた。ここまで騒がれると一応彼女のことを整理しておこう。
以前見たテレビによると彼女、天音涼華ことすうちゃんは突如流星の如くアイドル界に現れた七色のルーキー。天音の歌声は甘いポップ系の声以外にもクール系やメタル系、演歌などと様々な歌声を使いこなせることからその名前がついたらしい。
俺はまだ天音の歌声を聞いたことないが、同じ歳なのに毎日ご苦労さんと言いたいものだ。
「天音涼華です。明日から私もこの学校に入学するので今日これからよろしくライブを急遽開きました。このライブを機に私のことを知ってもらえたら嬉しいデース」
「もうみんな知ってるよー」とどこからか根拠のない言葉が聞こえると次は「そうだー」とあちこちに声がする。もちろん俺の隣にいる蓮もその一人だ。
「みんなありがとー!じゃあ早速1曲目を歌いたいと思いマース」
天音は音楽が流れ出すと、歌いながらリズムに合わせ踊りだした。




