パソコン部員の合宿 〈4〉
合宿編は終了です…が…?
夜、眠たくなってくる時間だというのに、全員元気だった。
当然こんな時間に出る話題は、ガールズトーク特有の緩い話の連続。
いつも以上に話題になりそうにない話が何時間も続き、気が付いた時にはもう3時だった。
「はぁぁ。もう寝ようか」
「そうね…。さすがに眠いわ」
しかし、我が家の布団は6人分もなく、数人は布団すらないまま床に転がるように寝るはめになった。
さすがにそれはかわいそうだったため、何か羽織れるようなものをかぶせておいてあげたが、風邪など引かれてはかわいそうだ。
「ん、ぅぅ」
そして、最初に起きたのは、優華だった。
しかし、起きた時刻は12時。
もう正午になってからという、かなりだらしない結果になっていた。
そして、着替えを済ませると、そろそろ帰らなくてはと全員帰って行ったのだった。
「はぁあ。まだ眠たいなぁ~。もうちょっと寝るか……」
私は再びベットに戻り、二度寝を開始したのだった。
ちなみに起きたのは、夕方の7時というこれまたおそろしいことになった。
ちなみに起きた理由が空腹だったというのも、また私のだらしなさを象徴することだった。
「ただいまぁ……」
「あ、お姉ちゃん。おかえり…」
「あれー?今日は練習じゃないのー?」
「うん。今日は休みなんだ…」
岡崎夕貴は、春香の家での合宿を終え、無事に家に帰宅した。
変な時間に寝たせいかあまり眠気はとれていなくて、布団が恋しい。
「そういやー、昨日は勝手に留守にして悪かったねー。一応お母さんには言っておいたんだけどさー」
「ううん。別に気にしてないから大丈夫…」
「そう…?だったらいいんだけど」
夕貴が、沙夜の顔をじっと確認する。
「ま、なんだったら、今日また話聞いてあげるから。私ちょっと眠いんだよ。寝るね?」
「うん。いいよ。おやすみ…」
夕貴が自分の部屋に入るのを見送ると、沙夜も自分の部屋に入っていった。
カチッ…………カチッ…………
爪を噛む。
この癖は、沙夜が10歳になるくらいからいつも行っている、たちの悪い癖だ。
彼女の爪はよくぼろぼろになる
こうやって、部屋で一人っきりになると、よくかじっているからだ。
「…………お姉ちゃん…………」
隣の部屋で、姉、夕貴が寝ている。
それだけで、とても安心できた。
「私を守ってくれるのは、お姉ちゃんだけだよ……」
カチッ…………カチッ…………
部屋に響く、爪を噛む音が、彼女の心に穴をあけていくのだった。
「二人とも―!朝だよー」
「んっ、おはよう。お母さん」
「あ、沙夜起こしてきて、夕貴」
「…………また?もう、お母さん。いくら沙夜が心を開かないからって、お母さんまで心を開かなかったら、一生あのままだよ、沙夜は!」
「…わかってはいるんだけど……なかなかね……」
実は、沙夜と夕貴は、同学年なのだ。
どちらも奈楼西高校の1年生である。
しかし、双子ではない。
彼女たちには、DNAのうえでは全くをもって他人なのだ。
夕貴は、もともと岡崎家の少女として生まれていて、何一つ、悲しいことなど経験せず、幸せな暮らしを送っていた。
しかし……問題はもう一人、沙夜。
沙夜は、元の氏名は、高山沙夜。
なんと彼女、両親を早くに亡くしているのだ。
母親が、5歳のころに病気で亡くなった。
急性の重病であり、医者も対処ができなかったのだ。
敏感なお年頃の、突然の別れ、だったが、父親の存在のおかげで、彼女は何事にもくじけることなく、すくすくと育っていった。
父親と二人ながらも、元気に暮らしていき、ついに9歳。
事件が起きた―――――
―――――父親が会社の同僚に殺された―――――
再び彼女に襲った悲劇……。
そして、再び彼女は、大切な存在を失った。
母親が亡くなった時、彼女の壊れた心の受け皿となったのは、彼女の父親だった。
しかし、今度は受け皿などない…………。
彼女の心を直す前に、彼女の周辺はめまぐるしく動いていた。
沙夜の父親には、親友と呼ぶに等しい男がいた。
かつてから家族ぐるみの付き合いもしており、母親の葬式にも出席していた。
「今日から君も、家族として迎え入れよう」
実は彼女の父親が遺言を残していたのだ。
『もしも私が、沙夜の面倒を見きる前に死んだら、そのときは、遠くの親戚ではなく、親友の岡崎順次に、すべてを託そう
そう、この岡崎順次というのが、夕貴の父親なのである。
やがて養子縁組によって、沙夜は岡崎家の一員となった。
しかし……。
家族であるはずの、「父親」と「母親」に、沙夜は心を開かなかったのだった。
「沙夜?もう朝食にするよー!起きて!」
「ん…。お姉ちゃん、おはよう…」
しかし、夕貴には心を開いていた。
同世代ということが、感情を共有しやすかったからだろうか。
岡崎家の一日は、こうして始まるのだった。
「もうお前が死んで、7年か……」
お墓に花を添え、語りかけるように話す男が一人。
お墓には、高山家之墓と記されており、「高山優斗」が眠っている場所だ。
「お前の娘は、元気にやってるよ。立派な娘になってきたよ。ただ……俺たちに心を開いてくれないのが残念だけどな」
少しさみしそうな表情を浮かべる男。
「たぶん、俺たちと心を通わしたら、またお前みたいに手の届かない場所に行っちまうんじゃねーかって、彼女なりに思ってるんだろうな。彼女は彼女なりに、トラウマだって抱えてるんだろーしな」
彼女が抱えるトラウマ……。
想像するだけでも、それは深そうなものだ。
「まぁ。少しずつだけど、心を開いてみせるさ。応援しといてくれよ」
次は来年だな。
そう思いながら、彼は墓を後にする。
毎月の恒例行事、「親友の墓参り」を終えた、夕貴、沙夜の父親、岡崎順次の姿だった。
新キャラにとんでもない闇がありました…!




