表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Lost Days  作者: 陽炎煙羅
八章 Firelike Lifelessness~そして遊戯は炎に陰る~
199/261

しかし“少女”は踊り咲く …10

 “恐鬼”の本来の性質、それは『そもそも実体がなく、人の気付かない、気付けない世界の陰から人間の膨大な負の感情を喰う』こと。

 そして、その意味は……『人間が負の感情によって暴走するのを止めること』。

 激昂して人を傷つけたり、感情に左右されるあまり選択を間違ったり……それを止めること、つまり“人間が間違わないように感情を喰うことにより制御する”のが本来の“恐鬼”のあるべき姿なのではないか。

 そもそもがおかしかった。

 世界の法則とやらは、要するにこの世を支配している数学的論理や、宇宙科学、もしくは目に見えない絶対運命のようなもののことなのだろう。ならば、その世界を上手く廻してゆくのが法則そのものと言える。

 ならば、どうしてこの世界の一員である人間を喰い過ぎる(・・・)“恐鬼”もそのサイクルの中に含まれているのか。

 それは、“恐鬼”が必要な存在であるからに他ならない。


 言いまわしで言えば分かりづらい話だが、つまるところこうだ。

 ……人間の考えるオカルト的なものすべてに“恐鬼”が関与しているというのなら、守護霊や人を守り導くと言われる神のような存在はどのカテゴリに位置するのか。


 答えは簡単。それも、“恐鬼”の一つの姿なのだ。

「……」

 “偽”が力なく地面に倒れ伏す。その下には赤い水たまりが広がり続けている。

「……」

 俺は、鈴を地面に寝かせると“偽”の伏せて、表情の見えない頭を撫でた。

 “恐鬼”は、人間の記憶の中で最も恐怖する物に変化する。

 逆を言えば、人間にとって有益なモノ達は、人間の中で最も大切な何かの姿を持つことになる。

 暴走したが故に、本来とは真逆の行動をとる。よくあることではないか。


「……何、してるのよ」

 顔を伏したままの“偽”がかすれるような声で呟く。

「因縁の相手が、地面に伏せているの……よ。……斃すチャンスじゃない。……ほら、早く殺しな……さい……」

「……そうやって、また俺は同じことをする、というわけか」

「……」

 記憶の中から現れたものは、その記憶通りの結果しか生まない。いうなれば、化石の復元の様なものだ。

 同じことをくりかえし、同じようにまた消える。


 その人間にとって害をもたらした何かに“恐鬼”がなったなら、その何かと同じように、その人に害をもたらす。

 逆もまた然り。


「……そう、ね」

 “偽”が力なく嗤った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ