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Lost Days  作者: 陽炎煙羅
八章 Firelike Lifelessness~そして遊戯は炎に陰る~
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しかし“少女”は踊り咲く …7

 ベレッタを使えば兆弾の恐れもあるし、こいつらが相手なら銃弾すら避けかねない。

 それなら……。

 看板の陰から身を乗り出し、それに突き刺さっている小太刀を一本引き抜いた。これならなんとか武器にはなりそうだ。

「待ってろよ……」

 柄を握り、戦闘を繰り広げている二人の方を見る。方法は考えていない。とにかく、いったん二人を止めなければ。

 考ええている暇はない。そう考え、足を踏み出した。



「あなたが……響輝さんを惑わす!」

「何言ってるのかな。響輝を惑わしてるのは、むしろあなたの方だよ!」

 大鎌、小太刀二振り、三本の刃がぶつかり合うたびに甲高い音を立て、時折火花を散らす。

 いったん二人が弾かれ、そして再びぶつかりあおうと互いに踏み出した瞬間。

「止まれッ!!」

 俺は二人のぶつかりあうど真ん中に飛び込み、小太刀で“偽”の小太刀を受け止め、もう片方の手で鎌の柄をとらえていた。


「ッ!」

 鈴が逃れようと鎌の柄を握る手に力を込める。だが、放す気はない。

「鈴! おい、話を聞け!」

 そう呼びかけるも、鈴は俺の声には見向きもせず、ひたすら鎌の柄を握っている俺の手を放そうと躍起になっていた。

「おい鈴!」

「無駄だよ」

 なおも呼びかけようとするのを、“偽”のやけに冷静な声が遮る。

「“支配者”に一番弱いところを……心の闇を掴まれたのね。帰ってくるには響輝君がもっと呼んであげないといけないわ」

 ……。

「口調が変わってないか?」

「気のせいよ。響輝、私はあなたを殺すことでこの地獄から解放するつもり。“恐鬼”の制約に乗っ取りつつ救うにはそうするしかないから。響輝、どうして大鎌を助けたいの?」

 何だ? いつもと雰囲気が違う“偽”の言葉に少し困惑する。その質問には何の意味がある?


「……見たくないんだ、壊れるのを」

 ようやく絞り出した答えは、いつか鈴が言ったものとほぼ同じものだった。

「あいつと俺は同じ“逸れ者”であり、境遇も似ている。同じ鏡の裏表みたいなものだ。だから、まるで自分を見ているみたいな錯覚に陥る。それを壊れることを本能的に許さなくなるんだ」

「ふうん、同じ、同位体か……」

 “偽”はそう呟くと、小太刀に込める力を緩めることなくこちらに睨みを効かせる。

「それで? じゃあ響輝は大鎌に対して特別な感情を抱いてないっていうの?」

「……」

質問の意図が読めない。どういうことだ?

「人間は何かを成し遂げる時、必ず何かしらの感情を動かすもの。響輝には無いの? 大鎌を救う為に必要なものは、そんな理だけじゃないはず」

それだけではない……か。ただ漠然とした、救いたい、救わなければならないという感情では足りないと言うのか?

「足りないわけじゃないよ、ただ救うだけならその感情で十分。ただ“私”は、響輝が何のために戦うのかを知りたいだけ」

戦う理由。俺が何のために戦うのか……か。

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