しかし“少女”は踊り咲く …2
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ロストランド。龍ヶ峰市唯一のテーマパークであり、この街の人々の最大の娯楽施設だった場所だ。
年ごとに一番人気の無いアトラクションを解体し、新たなアトラクションを作るという斬新かつ大仰な経営体制をとっており、市も膨大な金額を費やしていたようだが、市民達の期待を裏切るようなことはなく今まで十分な利益を得ていたらしい。地域だけに対する限定的な奇策だったようだが。
その遊園地も今では生気すら感じない。アトラクションがところどころ錆ついているのは仕様か。悪趣味だ。
周りを警戒しつつ、後ろに梨菜を隠しつつ先に進む。
メリーゴーランドを避けて先に進もうとした時だった。
「巽野さん、あそこに誰かいるよ?」
後ろにくっついている梨菜が右を指さす。
「……」
その指のさす方向に目を凝らすと、確かにティーカップの乗り口前にあるベンチに誰かが座っていた。
遠目だから分かりにくいが、その人物は頭を垂れており、髪の毛は長くはない。一部がまとまって垂れているのを見るに、その人物は後ろで髪を束ねているのだろう。
だが、しばらくして遠目に慣れた瞬間、俺は梨菜の手を引いて走り出していた。
「え!? 何なに? どうしたの?」
梨菜が慌てたようについてくるが、気にしている場合ではない。
目が慣れたところで、俺の眼にはその人物のそばに立てかけてあるものが映った。
長い柄に、巨大な刃。
それは見まごうはずもない、鈴の大鎌だった。
「おい、鈴!」
そばに近づくにつれ、服装も目につくようになってきた。
袖の空いた黒服、動きやすいようにするためか、前が短いスカート。
ポニーテールも合わせて考えれば、間違いなく祗園鈴だ。
ようやくそばにたどり着き、その肩をゆする。
「……どうしたんだ?」
返事はない。頭は相変わらず垂れたままだ。
何かおかしいと感じて黙っていると、鈴が何かを呟いているのが聞こえてきた。
「……な……い……」
「……?」
声が小さすぎていまいち何を言っているのか分からない。
しばらくして、その言葉がはっきりと耳に入った瞬間、
「ッ……!?」
俺はその場から後ずさっていた。
「……私の所為じゃない私の所為じゃない私の所為じゃない私の所為じゃない私の所為じゃ……」
「……鈴」
絞り出すように声を出すと、それまでずっと呟き続けていた鈴が顔を上げた。
「……響輝さん?」
「……」
俺は何も言えずにその場で硬直する。
「……響輝さんなら、わかってくれますよね? あれは私の所為じゃない、全部“恐鬼”が悪いんです。緑は取り込まれたんです。私の所為じゃないんです」
そう言いながら鈴がそばに立てかけてあった大鎌の柄を握る。
……まるで死人のように青ざめた鈴の表情。
その眼には、一寸の光も灯っていなかった。
気づいていた方もいらっしゃったかもしれませんが、自分、『鳩丘梨菜』の名前の変換を所々ミスってますね。『梨菜』が正しい名前です。混乱した方がいたら申し訳ないです。