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Lost Days  作者: 陽炎煙羅
八章 Firelike Lifelessness~そして遊戯は炎に陰る~
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そして記憶は儚く燃ゆる …3

「このッ……!」

 幾度となく強襲してくる“光球(セラフィム)”を大鎌で弾き、破壊する。

 刃と光がぶつかるたびに、周囲に閃光が(ほとばし)った。

「ただの“逸れ者”の分際でよくやる。人間の感情は底が知れないからな」

 “支配者(ルラー)”がそう言いながらも、新たな“光球”をこちらに飛ばしてくる。

「あなただって! 元は人間でしょうにッ」

 それを切り裂き、跳ね飛ばし、じわりじわりと“支配者”の方へ近づいて行く。

「貴様の恨みがそこまでさせているわけか。……ふはは、最初にお前に遭った時にはただの小娘だったというのに。何とも恐ろしい」

「お前がッ、言うなぁぁ!」

 瞬時に距離を詰め、横なぎに大鎌を振るう。だが、切り裂いた先に支配者はいなかった。

 速い。刃を避けられるのか。

「……ッ!」

 気配を頼りに、後ろに向かって再び大鎌を振るう。


「だが、まだ甘い。“それ”は強さだが、ただの(・・・)強さに過ぎん」

 ……が、大鎌の刃は背後に居た“支配者”の片手に受け止められていた。

「な、何……」

 急いで鎌を引き離そうとするが、“支配者”は片手の握力で刃を受け止めたまま放さない。

 そのまま、“支配者”がもう片方の手に十字架を浮かべた。

「お前はただの憎悪の塊でしかない。それを闇に堕とすことなど、赤子の手をひねるよりも……」

 その十字架が私の目の前で回転を始め、“光球”となる。

「簡単だ」


 その光を見てしまった瞬間、心に何かが入り込んでくるのを感じた。

「くッ……」

 自分の内で何かが蠢いているのを感じる。このままでは……。

 そう考え、鎌から手を放し、腰から隠し持っていた短剣を取り出し、素早く突き出した。

 だが、その刃が“支配者”の眉間に届こうかという瞬間。

『……止めて、鈴ちゃん!!』

「ッ!?……みど……」

 その場で停止した短剣を眺めながら、“支配者”がにやりと嗤う。

「……り……」

 急に視界が歪み、心の内から浸食する“何か”を感じながら、


……私の意識は闇に閉ざされた。



――――――――――――――――――――HIBIKI side


「ああ畜生!!」

 今俺こと巽野響輝は街道を抜け、裏路地を抜け、全力で走り続けていた。

 理由は後ろを振り向けば分かるのだが、正直振り向く余裕すらない。


「……はあっ……はあっ……」

 路地を抜け、壁に手をつく。

 が、その休憩も次の瞬間に止めざるを得なくなった。

「ッ……!」

 突然大きな音が聞こえ、顔をしかめる。

 少し向こうの廃ビルが轟音を立てながら崩れて行くのが見えた。

 そして、土煙りの中から顔を出す、逆三角形の巨大な頭部。

 時折覗く巨大な双牙、紅色の舌。


 ……そう。俺は今、あの“大蛇”に追われているのだ。

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