そして記憶は儚く燃ゆる …2
―――――――――――――――――――――――――RIN side
「たあッ!」
振り下ろした大鎌が“光球”をはじき返す。
「ふん、単身で私に挑みに来るとは、間抜けな奴だ」
“支配者”がにやりと嗤いながら、その手の平に小さな十字架を浮かべた。
途端に、それが高速で回転を始め、フラッシュグレネードのごとき閃光を放ちはじめる。
「……こんなところでッ」
あの時、響輝さんが急にその場からかと思うと、急に視界が反転し、気が付いたらそこにあったはずの“ロストランド”が消え、ただの広い荒れ地になっていた。
おそらくあの“偽”が結局なんだかんだで本当に私達を騙していたのだ。あそこまでの異常性と人間性を併せ持った“恐鬼”を見たのも初めてだった。
浅滅は「あんなお人よしなのか冷酷なのか分からん奴といたら、いつ騙され死ぬかわからん。求めるものが同じなのだからいずれ遭うだろうよ」と言い、その場から去ってしまった。
途中までは浅滅を追いかけていたが、本物の“ロストランド”を目指す途中の街道で“大蛇”に遭遇してしまい、見失ってしまった。
仕方なく自力で“ロストランド”を目指していたのだが、あと少しというところでこの“支配者”に偶然遭遇してしまったのだ。
いや、もしかすると偶然ではなく、これも“支配者”のシナリオのうちなのかもしれない。
「くっ……」
こちらに向かって飛来した“光球”を往なし、後ろを向いて破壊する。
光球と書いて読みはセラフィム。手のひらに乗せられる程度の大きさの金属を空中で高速回転させ、こちらに飛ばして来る。何故光るのかは、私に“光球”のことを教えくれた人も知らないようだった。
この“光球”を操る能力は、この“支配者”が本来“鍵”として持っていたものらしい。この数百年の間に自分を除く二人の“鍵”をその身に取り込んだ今、“支配者”は計三つのチカラを持っている。
“光球”、“牢櫃神蔵、そして、私の唯一無二の親友、高峰緑を取り込んで得たもので三つだ。
“支配者”は先ほどからその場から一歩も動かずに戦闘を続けている。強者の余裕か。
対して私は、ダメージこそ受けていないものの、空中を縦横無尽に飛び交う“光球”に蹂躙され続けている。
……駄目なのか。これだけ憎んでも、どれだけ時間を重ねても、私の思いは果たすことが出来ないのか。
「……そんなこと、無いです……」
頭を振って思考を振り払い、私は鎌の柄を握り直した。