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Lost Days  作者: 陽炎煙羅
八章 Firelike Lifelessness~そして遊戯は炎に陰る~
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そして記憶は儚く燃ゆる …1

 歪み、歪み、歪みに歪む。

 踊り、惑い、数多の駒よ。

 盤上狂いの支配者は、下した圍を振るいにかける。

 氷の騎士は、常夜に響き。

 復讐鎌姫は、鈴音に淡く。

 魔弾の狩人、永久に滅し。

 全ての鍵は、琴音を白す。

 転がる遊戯に群がる恐鬼よ、廻りに廻って罪を喰らう。

 記憶に乱され隠蔽された、巽の野に立ち尽くす。

 後ろの正面、煌めく刃、壊れた記憶は誰のもの?


―――――――――――――――HIBIKI side


 きーよしー、こーのよーるー、ほーしーがー、ひーかるー……


 唄が聞こえた。酷く懐かしい歌。

 ああ、確か幼稚園の卒園式で歌ったんだっけか。何で三月にクリスマスの歌なんか歌ったんだろう。

 思い出せない。


 ……でも確か、あの歌を歌ったあの日。六歳のころ、とても仲のいい子がいたんだっけな。

 名前は忘れてしまったが、とても笑顔の可愛い女の子だったような気がする。



 ――“狭間”の中の感触を一言で表すなら、『息の出来る水中』と言うのが一番妥当なように思う。

 だが、不思議と気持ち悪いとは感じなかった。

 ゆっくりと、空間の中の流れに乗って移動していく。


 しばらくすると、アーチ形に区切られた、入口と同じ形の物が見えた。

 どうやらあれが出口らしい。ずいぶんと凝った空間だ。どこぞの22世紀の秘密道具みたいにさっと抜けられればよいものを。

 そんなことをを考えていると、流されていた身体がその出口を通り、視界が歪んだ。


――――――――――――――――――――。


「……っと」

 急に地面が現れたため焦ったが、問題無く着地する。

 辺りを見回すと、成程、真っ暗な空に赤黒い雲。辺りには薄っすらと霧がかかっている。間違いなく、龍ヶ峰市だ。忌々しい。

“偽”は、『座標は同じだけど、空間が違う』と言っていた。つまり、俺の現在位置はさほど変わっていないということ。

思えば、随分と長居をしていた。戦況に変化がなければいいが。

俺が“偽”の空間に拉致されるまで一緒にいたはずの、鈴と浅滅の姿も見えない。二人して戦いに出向いているわけか。歪みねえな。


しかし、“偽”の奴は一体何がしたかったのだろうか。確かに依然と同じで俺を殺そうとしているのだろう、と俺は考えていた。きっとそれは間違いじゃないはずだ。……だが、やっぱり気になる。“偽”との最後の会話に端々見えていた、本能としての捕食とはまた違う“何か”他の感情。

……まあ、今考えても仕方ないか。

再び独りになってしまったわけだ。慣れっこだが、やはりこの状況での単独行動は好ましくない。

ましてや、街道に出ればいつ“大蛇”に出くわすか分からない地域だ。

早く誰かと合流しなければ……。


俺は足早に、その場から街の中心に向けて歩き出した。

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