そして偽少女は高らかに嗤う …7
「くくくっ……」
“偽”がどれだけ息が続くのだろうか、延々と含み嗤いをし続けている。
「……嵌めやがったな」
こいつ。嘘じゃない嘘じゃないと言って置きながら、結局嘘だったのか。
「馬鹿だなあ、響輝君。“私”は嘘は言わないっていってるでしょ?」
「盛大に言ってんじゃねえか!」
違うよ違う、と“偽”がこちらを振り向きながら言う。
「“私”はただ、言ってることとやってることが違うってだけで、口ではちゃんと皆に従ってたじゃない。それに、“私”は『あなた達』を騙すことはしないって言ったけど、別に響輝君個人を“私”の個人的な理由で個別に騙すことをしない、とは言ってないでしょ?」
とんだ屁理屈だ。詭弁にも程がある。
「せっかくこの“街”の中なら自由に動けるんだもの。やりたいことはやっておかなくちゃ」
と、意味不明なことを呟きながら、“偽”が軽快な足取りで後ろに下がっていく。
「鈴や浅滅は……、いや、そもそもここはロストランドなんだろう? どうして居るべき“支配者”がいない?」
どこからどう見たって、普通の遊園地だ。間違いなくこの景色は実際のロストランドのものだろう。どうしていまだに何も姿を現さないんだ?
「大鎌と魔弾はちゃんとそこに居るよ?」
そう言って、“偽”は俺の後ろを指さすが、そこには誰もいない。
「でもね、その座標にいるだけで、居る空間が違うんだ」
“偽”が続ける。
「知ってる? 響輝君。“支配者”の力の内の一つは“牢櫃神蔵”。ある一帯を自由に異空間に閉じ込める力なんだよ。それで、これは“牢櫃神蔵”に範囲は劣るけれど、それの“偽物”。ここの空間ぐらいしか閉じ込められないの」
そう、ごめんねとでも言いたげに、十数メートルくらい離れた位置で“偽”が言う。そんな謝りたげな顔をして何の意味があるのか。
「それで、えーっと、どこまで話したっけ。……ああそうそう、夢の話だよね。あと一回で響輝君は“私”に殺されないといけないんだけれど。実はここ、取りようによっては、響輝君の意識内、つまり夢と同じものとしてとらえることも出来るわけなんだけれど」
そうかい。よく解らんが。
「そういうことで、響輝君はここで殺されちゃうわけだよ。いや、殺されないといけないの。だから、今ここでしっかりしっぽり、骨の髄から髪の毛の先っぽまで、私が殺し尽くしてあげる。二度と、“響輝君”が苦しまないように」
楽にしてあげるよ、響輝君。
そう言うと、“偽”は腰の短刀を抜き、刃をこちらに向けた。