そして偽少女は高らかに嗤う …6
再び、“偽”の先導のもと“中央市街”を進む。
「もうすぐロストランドだよ」
しばらく歩いた後、“偽”がそう言った。
薄く霧が立ち込める市街は、どこもかしこも争った跡や血痕が目立ち、もはやこの世のものとは思えないほどに腐朽していた。
「戌海は、あそこに居るのか?」
浅滅に訊いてみる。
「確かにいる。だが、若干次元がずれているな。“支配者”の仕業だろう。そう簡単に渡すとは思えない」
そう言いながら、霧の中にうっすらと輪郭が見える、ロストランドの観覧車の方を見ながら浅滅が答えた。
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「さあ、着いたよ。ここが、ロストランド。あなた達の目指す、最終決戦の地」
そう言いながら“偽”が目の前にある遊園地の入口を指さした。
「ようやくか。それで、お前はどうするんだ?」
お前の出した条件はここまで俺達を誘導することだろう? ならば、ここでお前とは決裂するわけなんだが。
「とんでもない。別にここまで来たらあなた達と戦うなんて言ってないでしょ?」
振り返りながら“偽”が言う。
「まあ、そうだが……」
先に入口にある門をくぐった“偽”に、俺達も続く。
ロストランドの中は、かなり広かった。
メリーゴーランドに、ジェットコースター、見えていた観覧車や、他にもメジャーなアトラクションが並んでいるのが見える。なんだ、都会から遠い割には充実しているな。まあ、そんなことを考えている場合ではないか。
そんなことを思案しながら、“偽”の背中を追って歩く。
しかし、本当に人一人いやしないな。ここに着くまでにさらに生き残っている人に会うかもしれない、と思っていたが、このロストランドに入って十分以上経っているのに、いまだに“恐鬼”にすら遭っていない。
……『“恐鬼”にすら遭っていない』?
ちょっと待て。何かおかしくないか?
ここは奴らの根城だぞ。なのに入っても何も襲ってこないだなんて、おかしいじゃないか。
「おい、鈴!」
自分の後ろをついて来ているはずの鈴に異常を伝えようと振り返った。
……が、そこには鈴はおろか、浅滅すら影も形もなかった。
「ッ!?」
慌てて前に振り向くと、
「くくく、くくくくくくく……」
こちらに背を向けたまま、“偽”が肩を震わせて、嗤っていた。