そして偽少女は高らかに嗤う …1
「そこの角の向こう、人型の“恐鬼”が三体いるわ」
先を歩いている“偽”が立ち止まった。
「三体程度なら回り道をしなくても大丈夫です、斃しましょう」
鈴が大鎌を構え、道の向こうに飛び出していく。
「浅滅、大丈夫なのか?」
後ろから先ほどの疲労っぷりが嘘のように歩いてくる浅滅に問いかける。
「問題無い。この程度は慣れた」
浅滅がショットガンを取り出して弾丸を詰め直した。
―――――――――――――――――――――――――――――。
「――ちょっと止まって」
しばらく歩き、細い路地を抜けようとしていた時、“偽”が手で俺達を止めた。
「どうした?」
「すぐに引き返して反対側に戻って!」
返答せずに、“偽”が焦ったように叫んだ。
慌てて最後尾の浅滅から順に、元来た道を逆戻りする。
「……まだ駄目だよ。音を立てないで」
切羽詰まったように言う“偽”に、俺達はなすすべもなく従う。
路地の方を盗み見ると、反対の街道を“何か”が横切っているのが見えた。
「……何だ? あれ」
どうやらその“何か”は長いモノらしく、頭部はもう通り過ぎてしまった後らしい。俺の視界に映ったのは、向こう側の街道を通って行く、巨大な長い何かの一部分だった。
“それ”の上半分は鎖帷子のような鱗に覆われており、下半分は“それ”の表皮らしく、見るからに分厚そうな部分が見えていた。
しばらくじっとして“それ”の尾と思わしき部分が完全に通り過ぎ、俺たちは一斉に溜息を吐き出した。
「おい、紛い物。“あれ”は何だ?」
浅滅が“偽”に問いかける。
「あんな大きな……“恐鬼”は見たことがありません。いや、そもそも……あれは“恐鬼”なのですか?」
「そう。あいつも“恐鬼”。この、ロストランドの周りを囲んでいる中央市街の主である、通称、“大蛇”」
“偽”が気を取り直したように語り始めた。