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Lost Days  作者: 陽炎煙羅
七章 Ubiquitous grotesque~そして市街は腐朽する~
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でもだけどそれでも少年は …4

「♪♪♪~~」

 “偽”がこちらを見ながら鼻歌を歌い始めた。シンキングタイムとでも言いたいのか。


「響輝さ……」

「止めろ、鈴」

 なおも立ち上がろうとする鈴を制する。

「でも……」

 今の俺と鈴ではこいつを斃せない。取引に従うしかないだろう。

「……いいだろう。その取引とやら、受けてやる」

「わあ、ありがとう、響輝く……」

 “偽”があからさまな笑顔を顔に浮かべかけた時だった。


「……散れよ」

 と言う声が耳に届き、その声を聞いた鈴がとっさにその場から飛び退く。

 次の瞬間、

「紛い物がぁぁッ!」

 “偽”の後ろの方の角から浅滅が飛び出し、ショットガンの引き金を引いた。

 乾いた銃声と共に、幾多もの鉛玉が“偽”の方に飛んでいく。


「“魔弾”か。姿が見えないと思ったら、そんなとこにいたんだ」

 “偽”がふっと笑うと、足元にあった真っ二つの“アルマジロ”の遺骸を蹴り飛ばした。

 “アルマジロ”だったものの断面に弾丸が突き刺さり、ただでさえ中身の見えてえぐい状態だったそれは、蜂の巣をあけたぐちゃぐちゃの、ただの肉塊になった。


 どちゃり、と地面に落ちたそれが真っ黒な塵になり、空気中に霧散していく。

 角から姿を見せた浅滅は、そのままひざを曲げ、そばにあった電柱にもたれかかった。

「……クソッ」


「……ふふっ。“魔弾”、こんなところで全力は使わない方がいいよ。ただでさえ、あなたは本来の人間の寿命どころか、“狩り人”の寿命をも引きのばしてるんだから。今回までが限界だろうね」

 浅滅が限界……? どういうことだ?

「あれ、知らないの? 響輝君。“狩り人”も“逸れ者”も半永久的(・・・・)な寿命があるだけで、絶対的な不死ではないんだよ。ただ、気力と根性さえあれば、それをちょこっとだけ引き延ばせるんだけどね」

 “偽”がこちらを向く。


 浅滅。“アルマジロ”がビルの上から落ちてきたあたりから姿が見えなくなっていたが、どこにいたんだ?

「……お前ら、あの“恐鬼”がただ一体だけだと思っていたのか?」

 浅滅が息を荒げながら言った。

「あういう潰したり高速で移動する“恐鬼”は大抵集団で行動する。俺はそこの道に隠れていた残党を始末してきただけだ」


「そういうこと。ここからは、ありとあらゆる、魑魅魍魎、奇想天外、怪力乱神、異類異形の“恐鬼”があなた達を襲って来るんだから。私に付いて来るなら、その危険性も減ると思うんだけどな」

 そう言い、“偽”が嗤った。

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