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Lost Days  作者: 陽炎煙羅
七章 Ubiquitous grotesque~そして市街は腐朽する~
160/261

でもだけどそれでも少年は …2

 目の前で“アルマジロ”だったものが真っ赤な血を断面から吹き出している。

「……」

 続いて目の前に、見覚えのある制服を着た、“戌海琴音”が降ってきた。


 ……否、“戌海琴音の姿をした恐鬼”が降ってきた。

 片手に短刀を持った“偽琴音”が身軽そうに地面に着地する。


「……またお前か」

 さんざん会ってきたからさすがに分かる。

 また出やがったな、偽魔女め。

「……久しぶり、響輝君。元気そうでなによりだよ」

 “偽”が微笑みながら片手に持った短刀を腰の鞘におさめた。


「何の用だ? ようやくお前が俺を殺すシーンになったのか?」

「……ふふふ、それも面白いんだけどね。そうもいかなくなったんだよ」

 戌海と同じ顔で全く違う雰囲気の笑みを浮かべる“偽”。


「響輝さん、そいつは何ですか? 何で“鍵”と同じ姿を……」

 鈴が近寄るに近寄れない、といったふうに遠巻きにこちらを見る。

「……こいつは偽物の戌海琴音だ。俺の恐怖から生み出された“恐鬼”なんだとよ」

 そう。こいつは最初に学校で戦った、戌海琴音の“偽物”。

 そういえばこいつ、何度か夢にも出てきたな。あの現実感からして、あれがただの夢だとは思えない。こいつは他人の夢に入る能力でも持っているのか。


「……ふふ、やっぱり焦らないね。自分の命を狙っているかもしれない相手が目の前に現れたのに、響輝君は全然恐怖してくれない」

 “偽”がつまらなそうに口をとがらせた。


「響輝さんを狙って……?」

「そうだ。こいつは俺を殺すためにここにやっ――」

 俺が最後まで台詞を言い終わる前に、鈴は動いていた。

 瞬時に距離をつめ、その手にもった大鎌を“偽”に向かって振り下ろす。

 が。


「……ふふ、考えなしに行動しない方がいいよ、大鎌の少女」

 こちらを向いたまま、抜き身の短刀で後ろからの大鎌を受け止めた“偽”は、そんなことはどうでもいいとでも言いたげに、呟いた。 



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