そして少年は目的を惑う …1
――――――――――――――――――HIBIKI side
「だ、だから違いますッ!」
目を覚ますと、ベッドのわきで鈴が真っ赤になって怒鳴っていた。
その視線の先には、五十嵐達がにやにやしながら立っている。
「あ、起きましたか、響輝さん」
「ああ」
腕や脚はもう大丈夫らしい。またずいぶんと頑丈になったもんだな、俺の身体も。
「んで、何を話していたんだ?」
「えっ……」
鈴が言い淀む。
「ああ、巽野。お嬢ちゃんがな、俺達が来た時、お前にしがみついガハッ!!」
五十嵐が腹を押さえてうずくまる。
「で、恐鬼はどうなった?」
「ああ。ここに来ていた恐鬼の大半はあの暴走族のバイクにつられて行ってしまったからな」
成程。俺達が片づけるのはそれほど多くなかったのか。
「それで、だ。“鍵”の奪還に関してだが、こいつらには居て貰うことにする」
壁にもたれていた浅滅が言った。
「まあ、確かにこの人たちには“鍵”の奪還にはあまり関係ないが……」
確かに逃げてるだけの人々には関係の無いことだとは思うが……。
銃が三丁しかないっていうのに、ここに人をおいて俺達が出て行っても大丈夫なのか?
「奴らが大挙してこいつらを襲う確率は低い。たまに“恐鬼”が数匹来ることがあるだろうが、やりすごせば問題ないはずだ」
それに、と浅滅が続ける。
「非戦闘員をこれから先につれて行くことは出来ない。俺達三人でこれだけの人数を庇いながら“支配者”に挑むのは無謀だ」
「まあ……そう、か……」
妥当な論ではある。
「そうですね。皆さんにはこの病院にいてもらいましょう」
冷静さを取り戻した鈴が頷いた。
編集して追加いたしました。ついでに誤字も直しました。