そして佳境は訪れる …6
逸れた者同士の輪唱を防ぐ、法則が故の本能。
(――――イラナイ、ドウセ、シヌ)
「死にません……、響輝さんは、死にません!」
こんな法則なんかに、負けたくはない。
私は、私の意志でこの運命に抗ってやる……。
(――――ハグレモノ、タガイヲ、ホロボス)
「法則なんて関係ない! 私は……」
頭を振って無理やり声をかき消し、もう一度響輝さんの身体を抱きしめる。
「……だったら」
失いたくない。
もう、自分がとても儚く脆い存在に思えてきて……。
「あなたは……」
消えてしまいそうで……。
「あなたは誰の為に、戦っているのですか……?」
本当に、自分が生き残るため……?
過去に失った守り切れなかった人のため?
“鍵”である戌海琴音のため?
それとも……?
その先は、いくら響輝さんが寝ていても問いかけることは出来なかった。
ただ、彼がそこに居てくれる。
今の私には、その確かな温もりを感じることが出来るだけで、十分だったのだから……。
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「……だけど、それも盤上の展開の一部。君たちは、楽しませてくれるよね……?」
“街”にはもうほとんど響く音が無い。
つまり、生存者はもうわずか、ということ。
「だけれどオイラは、“黒帽子”。オイラの出る幕があるといいけれどね……」
闇夜に浮かぶシルクハット。
それは再び、暗闇の中に紛れて行った。