そして佳境は訪れる …2
しばらく言葉を交わさなかったが、ふと、思い出したことを口にしてみる。
「戦闘は、どうなったんだ?」
まずはその確認だ。俺がどのくらい眠っていたのかも、知らなければならない。
「人間同士の抗争ですか……」
鈴が言葉に詰まったかのようにこちらを見た。
「……何かあったのか?」
「……はい」
間をおいて、鈴が話し始めた。
「響輝さんが眠っていたのは、あれから三時間です。あの後、リーダーを失った連中は尻尾を巻いて逃げ出していきました」
そうか。だが、連中が出て行ったのは良い事のはずだ。そんな詰まる部分があるのか?
「いえ、ここからが要なのです。彼らがバイクに乗っていたのは知っていますよね?」
ああ。最初に確認したしな。
「彼らが逃げて行ったのは中央市街の方です。きっと彼らの根城があったのだと思います」
鈴が一息つく。
「それから五分くらいした後、……市街の方から、妙な音がこだましてきました」
「妙な……音?」
「はい。最初は小さかったのですが、次第に連なるようになってきて、よく聞いたらそれは……」
「……悲鳴と、爆発音、だったんです」
重々しそうに鈴が言った。
ふむ。悲鳴はまあ人が襲われたものだろう。
では、爆発音は……。
……すぐに、脳内で結論が弾き出される。
「……連中か」
「……はい」
成程な。“街”のこんな状況で爆発するものがあるとしたら、それはおそらく炎上した乗り物以外にないだろう。
したがって、それらの音は逃げて行った連中のものである可能性が高い。
それらの音は彼らの出したものなのだろう。
それも、きっと彼らにとって最悪の形で。
「……だが鈴、奴らはけっこう人数が残ってたよな。あいつらが全部逃げ出したとして、それらがほぼ連なるようにして襲われるなんて、ちょっと度が過ぎた感がしないか?」
「……? どういうことですか?」
鈴が俺の包帯を取り替えながら言う。
というかお前は見張りとか行かなくて大丈夫なのか。なにも襲撃を回避しただけで“恐鬼”どもを停められたわけではあるまい。
「それは浅滅が対応しています。あの人の戦闘には基本、味方が必要ありませんから。むしろ浅滅に殺されてしまいます」
そうなのか。いや、よくわからんが。
「度が過ぎた、というと。つまり、それだけの人数が一斉に負けるわけが無い、という意味合いですか?」
「……まあ、そういうことになるな。奴らも武器を持ってるわけだし」
ただ地面を這ってるような恐鬼には負けないだろう。
つまり……。
「中央市街には、奴らの持っていた銃弾や、生半可な武器では太刀打ちできず、バイクのスピードをも凌駕する“恐鬼”がいる……と?」
「……そういうことだ」
俺は天井を見ながら答えた。