表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Lost Days  作者: 陽炎煙羅
七章 Ubiquitous grotesque~そして市街は腐朽する~
146/261

そして佳境は訪れる …2

 しばらく言葉を交わさなかったが、ふと、思い出したことを口にしてみる。


「戦闘は、どうなったんだ?」

 まずはその確認だ。俺がどのくらい眠っていたのかも、知らなければならない。


「人間同士の抗争ですか……」

 鈴が言葉に詰まったかのようにこちらを見た。

「……何かあったのか?」


「……はい」

 間をおいて、鈴が話し始めた。

「響輝さんが眠っていたのは、あれから三時間です。あの後、リーダーを失った連中は尻尾を巻いて逃げ出していきました」

 そうか。だが、連中が出て行ったのは良い事のはずだ。そんな詰まる部分があるのか?


「いえ、ここからが要なのです。彼らがバイクに乗っていたのは知っていますよね?」

 ああ。最初に確認したしな。

「彼らが逃げて行ったのは中央市街の方です。きっと彼らの根城があったのだと思います」

 鈴が一息つく。


「それから五分くらいした後、……市街の方から、妙な音がこだましてきました」

「妙な……音?」

「はい。最初は小さかったのですが、次第に連なるようになってきて、よく聞いたらそれは……」


「……悲鳴と、爆発音、だったんです」

 重々しそうに鈴が言った。


 ふむ。悲鳴はまあ人が襲われたものだろう。

 では、爆発音は……。


 ……すぐに、脳内で結論が弾き出される。


「……連中か」

「……はい」


 成程な。“街”のこんな状況で爆発するものがあるとしたら、それはおそらく炎上した乗り物以外にないだろう。

 したがって、それらの音は逃げて行った連中のものである可能性が高い。

 それらの音は彼らの出したものなのだろう。

 それも、きっと彼らにとって最悪の形で。


「……だが鈴、奴らはけっこう人数が残ってたよな。あいつらが全部逃げ出したとして、それらがほぼ連なるようにして襲われるなんて、ちょっと度が過ぎた感がしないか?」


「……? どういうことですか?」

 鈴が俺の包帯を取り替えながら言う。


 というかお前は見張りとか行かなくて大丈夫なのか。なにも襲撃を回避しただけで“恐鬼”どもを停められたわけではあるまい。

「それは浅滅が対応しています。あの人の戦闘には基本、味方が必要ありませんから。むしろ浅滅に殺されてしまいます」

 そうなのか。いや、よくわからんが。


「度が過ぎた、というと。つまり、それだけの人数が一斉に負けるわけが無い、という意味合いですか?」

「……まあ、そういうことになるな。奴らも武器を持ってるわけだし」

 ただ地面を這ってるような恐鬼には負けないだろう。


 つまり……。

「中央市街には、奴らの持っていた銃弾や、生半可な武器では太刀打ちできず、バイクのスピードをも凌駕する“恐鬼”がいる……と?」


「……そういうことだ」

 俺は天井を見ながら答えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ