からくも彼は漆黒に …2
……しかし、不可解なこともある。“漆黒化”の進行を促進させる方法は二つある。
前の、それこそ“支配者”が幻覚でちょっかいを出したりしなければ、起こらないのだ。
もう一つの方法が、自らが漆黒化を望んだ場合。
だが、彼が進んで闇に堕ちるとは考えにくい。
いや、でも何か理由があれば……。
……理由……。
しばらく考えるが、答えは出ない。
……とにかく、響輝さんを止めなければ。
その姿を視界に入れたとたん、また自分の内に流れ込んでくる負の激情。
その感情が今の彼を形作っている全てだった。
それと同時に、まるで自分が壊れてしまったかのような錯覚が溢れてくる。
……そして、再び思い出す。
この人が自分に酷く似ているということを。
どうしてこんなことに……。
悲しみよりも怒りの方が勝り、私の心を抉り始める。
「……ッて」
“巽野響輝”が再び男の方に歩いてくる。
「……ば、化け物ォォ!! 無理だ!殺されたくねえ!」
腕から血を流しながら男が、足をふらつかせながら横道の方に歩いて行く。
「響輝さん……」
“巽野響輝”が目の前で止まる。
が、私が呼びかけても何のリアクションもなく、“巽野響輝”は横道の方を向いた。