サレド少女ハ朦朧ニ …6
「なんだよ知ってたのか。まあな。極限状態ってやつ? ほら、よくあるだろ、ホラー映画とかではそういうシーンはつきものじゃねえか」
男が笑う。
「それでも、この人たちを危険な目に遭わせるわけにはいきません」
大鎌を構え、ひょうひょうと構えている男の方を見据える。
「おー、こわ。わかったわかった。とりあえず救命用具だけでもくれんかい?」
「いきなり襲撃してきてよく言えた口ですね。どうせ私達を殺してでも手に入れるつもりなのでしょう?」
そう言った瞬間、それまでにへらと笑っていた男の表情が豹変した。
「いちいちうっせえな!! いいからよこせっつってんだろうが!!」
目は血走り、怒りの表情をあらわにしてこちらを睨みつけてくる。
とんでもない形相だ。
後ろに居る人の内の、一人の女学生がひっ、と声を上ずらせる。
「…………」
この男は危険だ。
直観的にそう感じた。
「そういえば、下に居た女子大生……だったか? なかなかの上玉だったぜ」
「ッ!!」
その言葉に、身体が勝手に動く。
ほとんど条件反射だ。一瞬にして、視界に相手の姿しか入らなくなる。
が。
「ははは、ばーかッ」
男はさっと懐から拳銃を取り出すと、私の後ろを狙って、撃った。
「なッ、しまっ……」
急停止した時にはもう手遅れ。
「ぎゃああっ!!」
後ろに居た中年の男性が腹から血を流して倒れていた。
しまった。やられた。
そう思ったのもつかの間、庇うべき存在を攻撃されたことで、私の眼には既に男しか入っていなかった。
「おいおい嬢ちゃん。焦りは禁物だぜ?」
そう男が言った途端、両脇の通路からそれぞれ一人ずつ男が飛び出してきた。
「ッ!!」
とっさに身をひねろうとするも、大柄の男達の手からは逃れられず、私は一瞬で床に組み敷かれた。
「おーいおい嬢ちゃん。焦り過ぎだろ? おい」
腕を振り上げようとするも、大鎌は手首をひねられた痛みで手放してしまった。
「はい、これで武器は無し、と。活きの良い嬢ちゃんだな。楽しませてくれそうだ」
そう言うと、男はぺろりと舌舐めずりをした。
不味い……。
完全に相手の思うつぼだ。
このままでは……。