サレド少女ハ朦朧ニ …5
――――――――――――――――――――RIN SIDE
「くっ!」
相手の弾丸を鎌の刃で防ぎ、私は後ろを振り向いた。
「浅滅さん! 状況は!」
しばらくして声が返ってくる。
「屋上に“恐鬼”どもが来ている! のんびりするな!」
非常階段の上の方から浅滅の怒号にも似た叫び声が聞こえてきた。
「こんの小娘があああ!!」
階段の下から銃を構えていた男がナイフを引き抜く。
銃の方は弾切れらしい。
落ち着いて、相手の隙を見つけ……一閃ッ。
「ぎゃあっ!」
男が胴体に鎌の峰を喰らい、床に叩きつけられる。
「……」
これまで戦闘した賊は五人。
いずれも無力化したが、それにしては人数が多い。
「……でもそれがどうしたっていうんです」
自問を即座に否定し、階段を飛び降りる。
後ろからはここに籠っていた人々の中でも、戦闘力が全くない者がついてきている。
中には学生の姿もあった。
その数、十人。
「殺させません。絶対に……」
浅滅は上で恐鬼の相手をしている。
別に人間の救出に興味などない、というのが彼の主張だった。
それはいささか私には理解のしがたい考え方だが、黙って彼のやりたいようにさせている。
その方が、下手に仲間割れするよりははるかにマシだ。
……響輝さんは大丈夫だろうか……。
ただ、私はその心配だけはぬぐうことは出来なかった。
――――その男が現れたのは、それから数分後のことだった。
「よお、お嬢ちゃん。ちょっと待ってはくれねえかい?」
私達が歩いていた通路の後ろから、急に声がかかり、振り返る。
見ると、自分たちからそう離れていないところに、一人の男が立っていた。
まだ若い顔立ち。二十代前半か、後半か。
「お嬢ちゃん、少し殺気出し過ぎだぜ? 俺達は救命用具が欲しいだけなんだ」
「それと、女……でしょう?」
そう問うと、男は少し驚いた顔をし、すぐに笑い始めた。
「ふふふ、あーっはっはっはっは!!」
しばらく男は腹をかかえて笑い続ける。
私や人々は、怪訝そうにそれを見ているだけだった。