サレド少女ハ朦朧ニ …2
そういえば鈴サイドは初でしたね。
「響輝さん!!」
とっさに破壊された窓際に駆けより、落下した響輝さんの行方を確認しようとする。
が。
「ッ……!」
顔を出そうとした瞬間、頬を一発の銃弾が掠める。
熟練した“逸れ者”なら銃弾など余裕で見切れるものなのだが、この時私は焦っていた。
「嬢ちゃん! 顔を出すな、狙撃されちまうぞ!」
部屋に駆けこんできた五十嵐がなおも行こうとする私を抑える。
「でも……でも、響輝さんが!!」
「無駄だ! ここは四階だぞ! 落ちたら助からない!」
「でも、大丈夫なんですよ! 身体の方はまだ壊れていないはずです! 今行けば助けられるんです!」
「だから落ち付けって言ってるだろ、嬢ちゃん!」
五十嵐が怒鳴った。
「今出て行ったら嬢ちゃんでもただじゃ済まねえ。それに、今は下での戦闘を優先するべきだ」
「……っ、……そう、ですね……」
肩で息をしながら、どうにか冷静さを取り戻す。
大丈夫かどうかは五分五分だ。
自分たち“逸れ者”の身体がどれほどまで頑丈なのか、正確なところはわたしも知りえていない。
ましてやあんな高火力の火器を撃たれたことなど一度も無かった。
響輝さんが無事かどうかは、今は分からない。
でも、今は建物に籠っている人々を助けるべきだ。
階下に行って、“狩り人”を動かさないと……。
「響輝さん……、死なないで下さいね……!」
私は、鎌を持ち、五十嵐と共に部屋を出、階段の方に駆けて行った。
―――――――――――――――――――――――HIBIKI SIDE
来ている。
そう、感じた。
身体の中の、恐怖を感じる部位がこれでもかという具合に蠢いている。
バズーカの着弾音。銃撃戦の音。
ほとんど静まり返っているこの“街”でそんなものを鳴らせば、自然と集まってくる。
恐怖がやってくる。死がやってくる。
その姿は変幻自在。魑魅魍魎すべてを淘汰し人を喰らう。
恐れよ鬼。
……ならば俺は何だ。
今、体中を傷だらけにしてもなお立っている俺は何なんだ。
「……冗談だ。狂言だ」
『不条理とも言うな』
お前の相の手はいつも微妙だよな。まあこの際だからとやかくは言わないが。
ナイフの刃が小刻みに振動する。
かち、かちと金属音を鳴らしながら、俺は月下の下、今だ生きる者を求めて飛来する異形の物達を見上げた。