それすら少年は拒絶する …4
ゆっくりと身体を起こしていく。
しかし、俺の身体もずいぶんと頑丈になったものだ。鈴は嘘を言っていたわけではないらしい。
耳をすますと、うっすらと人の喧騒の様な音と、銃声が数発聞こえた。
戦闘は始まっている。
速く。
早く行かなければ。
少しずつ歩みを進めるが、俺の脚は三歩歩いたところで停止した。
否、せざるを得なかった。
なぜなら。
「おい、ここにガキがいるぜ」
「いつの間に降りてきてたんだこいつ、とにかくリーダーに連絡だ」
連絡……。
現れた二人の男の内、一人が懐に手を入れる。おそらくレシーバーか何かを持っているのだろう。
「なあ、ハーテッド」
『……何だ?』
おそらく俺が言いだすであろうことを分かって、ハーテッドは返す。
「二度。してしまったことって、何度やっても同じことだと思うか?」
『どうだろうな。それは人に訊くことでもないと思うが』
「それもそうか」
そう思いながら、目の前を見据える。
「リーダー、ガキが一人下にいます、どうしますか? ……え? 今忙しいから後にしろ? 何でですか」
どうやらそのリーダー格ともめているらしい。
まあ、とにかく連絡を終える前に闘い始めようと思ったのだが。
次の台詞を聞いた瞬間。
「ははあ。さては女子大生でも捕まえたんですね? ほらやっぱり。お楽しみもいいですけれど、他にすることもあ……」
身体が、動いた。
自分でも驚くくらいだった。
恐らく折れていた左腕をポーチに突っ込み、筋肉がきしむのを感じながら瞬時にバタフライナイフを展開し、レシーバーに投擲する。
「うおっ!?」
ナイフがレシーバーに突き刺さり、驚いた男がそれを地面に落とす。
「こんのクソ餓鬼! 舐めんじゃ……」
ざくり。
「ね……え……?」
一歩で距離をつめ、レシーバーに刺さっているナイフを抜き、男の腹を掻っ切る。
「あ……腹が……痛……ぐふっ」
柄に持ち替え、顎にアッパーをかける。
一人。
「あ、……え……何だ、こいつ……」
すぐに振り向き、もう一人の頬に蹴りを入れ、
「ぐはっ!」
吹っ飛ぼうとした先に回り込み、わき腹にバタフライナイフを垂直に刺す。
「あ゛あ゛ああああ!? 痛い、痛い痛い痛い!」
「痛……ごふっ……」
ナイフをねじりながら、片方の手で脳天に拳を叩きこんだ。
男が気絶し、動かなくなる。
『響輝。お前止めたわりには腕が上がって無いか?』
「気のせい……だろ」
俺は進む。
筋肉が悲鳴を上げる。
骨がこすれる音が耳に響く。
それでも俺は歩く。