それすら少年は拒絶する …3
…………体中が、痛い。
何だこれ。ウェストブリッジから落ちた時のデジャヴじゃないのか。
ゆっくり目を開ける。
「…………」
視界に入るのは、横向きになった地面。
目の前に雑草が生えているのがうっすら見える。
しだいに記憶が戻ってくる。
確か、あの時暴走族の内の一人が構えていたのは、種類までは分からないが、バスーカの類。
視界が真っ赤になったのは、おそらくあの部屋の窓に弾が着弾したから。
では、何故俺は地面に伏しているのか……。
考えるまでも無い。
落ちたのだ。確か、見張りをしていたあの部屋は三階……いや、四階だったか。
窓際に居たのが不味かったのか、はたまたバスーカを視認した瞬間に飛び退かなかったのが原因か。
なんにせよ、今の俺の身体はぼろぼろだろう。骨も何本か折れているかもしれない。
「ッあ……」
ゆっくりと腕に力を入れ(折れていなかった)、半身を起こす。
「全く……、何の冗……くあッ……」
駄目か。まだ、身体がきついか。
『大丈夫か?』
「お前……壊れてなかったのか」
『当然だ。そう作られているからな』
「そう、かよ……」
全く、死にかけた。
しかし、何で俺はバズーカと認識した時にその場から逃げなかったのか。
『覚えていないのか?』
ハーテッドがいぶかしげに言った。
「……何をだ」
『まあ、隠すことでもない。貴様、このバカ者は、あの時とっさに庇ったのだ』
かばった? ……誰をだ。いや、何をだ?
『あの大鎌の少女だ。お前は自分の身体が壊れる可能性も厭わずに、バズーカの弾丸からあの娘を守ったのだ』
「……な……に……?」
俺が? ……この俺が?
「人を庇った? 馬鹿な!?」
『事実だ。我も見ていたからな』
そんなことが……。
我ながら、馬鹿なことをしたものだ。
「……鈴は?」
『襲撃者の対応に追われている。ここには誰も救援に来れないだろうな』
「……そうかい」