それすら少年は拒絶する …1
―――――――――――――――――――――――――HIBIKI SIDE
「ひゃあああああっほおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
「ぐうっ!」
破裂するような金属音。
「おいおいこの餓鬼、てんで話にならないぜ!」
いかにもなライダージャケットを着ている金髪の男が下劣に笑いを漏らす。
「死亡フラグを立てておいてこのザマかよ!」
チェーンソーから取り出した刃のみを振り回している男が叫ぶ。
「黙……れ……」
体中が痛い。
四方八方から飛び交う刃が、銃弾が、鈍器が、俺の四肢を、心を、全身を破壊していく。
まだだ。まだ、終われない。
こんなところで、俺は死ぬことは出来ない。
「俺は……死ぬわけにはいかない。殺さず、殺せずして、この状況を打破する。ああ、やってやる。やってやるさ。眠れる獅子は、恐ろしい……」
右手にバタフライナイフを。
「ぎゃあっ!」
腕を切りつけられた男が悲鳴を上げる。
左手にベレッタM92Fを。
「ああああああ、足が!?」
血を噴き出しながら、左方で銃を構えていた男がもだえる。
盾は必要無い。
戦う。斃す。殺さない。
俺は……。
――――――数時間前。
「おい! 嬢ちゃん!」
俺と鈴が居る部屋に、五十嵐が飛び込んできた。
「何があったのですか?」
ライフルを持った五十嵐が焦ったように状況を説明する。
「奴らがやってきた! 諦めていなかったんだ、あいつら!」
「鈴、あいつらってのは……」
誰のことだ? “恐鬼”か?
「いえ、人間です」
人間……だと?
「はい。先ほど、ここに立て籠もっている人から聞いたと思いますが、ここの人々が恐れているのはむしろ、恐鬼よりもその人間達なのです。ここら一帯を縄張りにしていた暴走族と、それらの仲間が、救護用具と、その……女を求めて襲いかかってきた、と」
「それは訊いた。そして、もう一度そいつらが来るかもしれないということもな」
なるほど。
しかし、正直、恐れるに足らないと言うべきか。
こちらには、大鎌使いに狩り人のショットガン使いがいる。並みの人間では、歯が立たないだろう。
「おい、俺を巻き込むな。現時点で最重要なのは、“鍵”の奪取だ。そんな連中にかまっている暇はない。さっさと行動を起こすべきだ」
横に居た浅滅が云う。
こいつはどうやらその人間との戦闘にやる気ではないらしい。
「まずい、来たぞ!」
もう独り、若者が報告に駆けこんできた。
戦闘……か。