また、少女は黒に出逢う …2
「シルクハット……でも何でこんなところに……」
じっと見ていると、シルクハットはふよふよと、蝶のように緩やかに回りながら下降し、自分の入っているゴンドラの窓の前に滞空した。
「…………」
なんとも言えずにその様子を見ていると、
「よい、しょっと」
という声が聞こえ、シルクハットの内側から、にょきっと、仮面をつけた顔が現れた。
「うわっ!?」
急に空中に飛び出してきた仮面に、思わずゴンドラの中で飛び退く。
ぐらぐらと、ゴンドラが揺れる。
続いて、シルクハットの中から、一枚の大きな黒いマントが飛び出し、足も胴体も無い、シルクハットとその下に仮面、その下にマントという、不完全な人型を作り出した。
それらはまるでそこに身につけている“何か”が居るかのように、一糸乱れぬ動きをしている。
マントは何かが中にあるかのように膨らんでなびいている。
その様子を困惑しながら見ていると、
「やあ、お嬢ちゃん」
“それ”が、拡声器を通したかのような声で話しかけてきた。
「……誰?」
「誰って……見なかったのかい? お嬢ちゃん。せっかくコミカルに登場したのに」
いや、はっきり言って恐怖でした。
「オイラはただの黒い帽子さ」
そう言って(仮面のせいで顔は見えないが……むしろ頭すらないように見えるが)、“それ”はけらけらと笑った。
仮面は縦に線が入っており、私から見て左側は真っ黒に塗りつぶされており、右側には、白地に赤く、狐のような切れ目と、にやり笑っているかのような口の線が描かれていた。
「黒い……でも、“恐鬼”何でしょう。私を見張りに来た“支配者”の手下?」
そう言って、強気に出るも、“それ”は、
「あいつの配下……ね。まあ、そんなところかな。オイラはただの“黒帽子”。それだけさぁ」
笑っているのだろう、帽子をゆらゆらさせながらわたしの方を見ている。